きゃりーぱみゅぱみゅTwitter


「検察庁法改正案」が強引に審議入りになったことに、国民が一斉に反発している。ネットでは「#検察庁法改正案に抗議します」の署名呼びかけに337万件もの署名が集まり、信じられないほど多くの芸能人や文化人が抗議の声を上げ始めた。

 しかも、ふだん政治的な問題にコミットしている人たちだけではない。俳優の井浦新や俳優・モデルの水原希子、ミュージシャンのコムアイ、オカモトズのオカモトレイジ、Licaxxにくわえ、きゃりーぱみゅぱみゅ、いきものがかり・水野良樹、お笑い芸人では大久保佳代子、さらには政権批判つぶしに熱心だったはずのあの糸井重里までが、この検察庁法改正案に抗議している。

 しかし、それも当然だろう。この検察庁法改正は、安倍政権が “自分たちの番犬”である黒川弘務・東京高検検事長を強引に検事総長に据えるために、違法定年延長を後付けで合法化しようとこれまでの法律を変えてしまおうというめちゃくちゃなものだからだ。

 本サイトが繰り返し報じてきたように、黒川検事長はこれまで安倍政権の不正をめぐる捜査をことごとく潰してきた。小渕優子経産相(当時)の公職選挙法違反疑惑で秘書のみが在宅起訴で終わったのも、贈賄側の実名証言まであった甘利明経済再生相(当時)の口利きワイロ事件で甘利本人はおろか秘書すら立件されなかったのも、森友学園への国有地不正売却や公文書改ざんで政権や財務省への捜査が潰されたのも、黒川氏が現場に圧力を加えた結果だといわれている。法務大臣官房長だった黒川氏は、その間、事務次官、東京高検検事長と出世してきた。

 ところが、その黒川氏が今年2月に定年を迎えることになったため、安倍政権は、検事長の定年63歳というそれまで一度も例外がなかった規定をくつがえし、黒川検事長の定年を半年間延長することを閣議決定。そのまま検事総長に就任させるシナリオを推し進めた。

 これには一斉に反発の声が上がり、辻褄合わせのための森まさこ法相らのインチキ答弁などが大問題になったが、安倍政権はそれでも方針を変えず、今度は、この人事を正当化するため、国家公務員の定年延長に乗じて、内閣の判断で検察官の「役職定年」を延長できるようにする検察庁法改正案を強引に審議入りさせたのだ。

 安倍首相は新型コロナをめぐってはまったく指導力を発揮せず、平気で後手後手対応を続けてきた。ところが、この問題では行政手続きや法律をねじ曲げてまで、黒川検事長を検事総長にしようとしているのだ。

しかも、コロナのどさくさにまぎれて、である。一体どういう神経をしているのか。

 しかし、安倍首相としてはどうしても黒川氏に検事総長になってもらわなければいけない理由があるのだという。

「実は検察内部でも黒川氏を使った安倍政権の捜査現場への圧力については相当な不満がくすぶっているため、安倍政権には、もし黒川氏がいなくなったら、反動で様々な政権の不正が事件化しかねないという恐怖がある。とくに、安倍首相が気にしているのがマルチ商法のジャパンライフだ。『桜を見る会』では、同社の山口隆祥会長が総理枠で招待されていたことが明らかになったが、さらに、消費者庁の調査が圧力で潰されたことも明らかになっている。もし、黒川氏がいなくなったら、検察がこれらの問題で一気に捜査を始める可能性がある。だから、安倍首相はどんなに批判を受けても、この法案を通そうとするだろう。今週半ばには強行採決するはず」(全国紙政治部記者)

 だが、今回ばかりはさすがにそんなやり口も通じないのではないか。というのも、国民の怒りが前代未聞の広がりを見せているからだ。

 それを象徴するのが、冒頭で紹介した有名人や芸能人、文化人の動きだ。俳優、ミュージシャン、お笑い芸人、作家、漫画家、声優、映画監督、様々なジャンルでものすごい数の人たちが「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグをツイートして、声を上げている。

 一部を紹介しよう。

井浦新
〈もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい。#検察庁法改正案に抗議します〉

城田優
〈大事なことは、ちゃんと国民に説明してから、順序に則って時間をかけて決めませんか? そんなに急ぐ必要があるんですかね。#検察庁法改正案に抗議します〉、

古舘寛治
〈独裁国家よりも民主主義の方がずっとマシなので、どうあっても #検察庁法改正案に抗議します〉

西郷輝彦
〈これはダメですよ。#検察庁法改正案に抗議します〉

オカモトズ オカモトレイジ
〈身近な信頼できる人達がみんな抗議してるから、どういうことだろう?と思って調べてみたらマジで半端ねぇ事が起きてた。みんなもちょっと調べてみて。ゲームの攻略サイト見るくらいの感じで理解できたよ。 #検察庁法改正案に抗議します〉

いきものがかり 水野良樹
〈どのような政党を支持するのか、どのような政策に賛同するのかという以前の問題で、根本のルールを揺るがしかねないアクションだと感じています。#検察庁法改正案に抗議します〉

コムアイ(東京高検・検事長の黒川弘務の違法な定年延長に抗議し黒川氏の辞職を求める「Change.org」での署名の呼びかけをリツイートして)
〈サインしました! 現政権を支持したことはないですが、選挙だけで全てが決まるわけではありません。政治を諦めない。ことあるごとに、賛成か反対の立場であるか、わたしは判断して見ていますよ、という市民の存在感はすでに力を持っています。

#検察庁法改正案に抗議します〉

AAAの末吉秀太
〈自分達の未来を守る為に。#検察庁法改正案に抗議します〉

LOVE PSYCHEDELICOのギタリストNAOKI
〈コロナで大変なこの今、黒川検事長定年延長のため不要不急の「検察庁法改正」が強行されます。法改正してまで、退任後の逮捕を逃れようと我が国の総理大臣は実は必死なのです。そんな他に全く理由のない法改正がこの国ではどさくさに紛れて通ってしまう。
一言言っていいですか? この火事場泥棒!〉

MONGOL800 キヨサク
〈#検察庁法改正案に抗議します 200万リツイート突破〉

ホフディラン 小宮山雄飛
〈おはよう世界!今日も明日も明後日もPOPに行きましょう。そのために、 #検察庁法改正案に抗議します〉

Licaxx
NHKのWEB記事「揺らぐ“検察への信頼”~検事長定年延長が問うもの~」をリツイートして)
〈この記事で大まかな流れと何が問題なのかがわかる。#検察庁法改正案に抗議します
歴代検事総長などの検察OBや現職の幹部たちに徹底取材。危惧していたのは「検察の独立性」に対する信頼です。〉

ウーマンラッシュアワー 村本大輔
〈#検察庁法改正案に抗議します なんでこのハッシュタグがバズってるか、わからない人、このニュースがわかりやすいよ。もしおかしいと思ったら声あげよう。検察という番犬を飼い慣らして、自分達を逮捕できないような仕組みを作ろうとしてるとしか思えない。〉
〈しかもコロナで国民が生活という目の前のことに盲目になってるドサクサにまぎれてコソっと通そうとしてるところに姑息さを感じる。

ハマカーン 神田伸一郎
〈#検察庁法改正案に抗議します 人それぞれの信念だから政治と宗教についてはツイートしないのだけど、これはさすがにルール違反だからね。〉

 また水原希子は、ジャーナリストの青木理が『サンデーモーニング』で検察庁改正法案の問題点を解説する動画などをリツイートし、さらに〈内閣総理大臣: 【要請】東京高検・検事長黒川弘務氏の違法な定年延長に抗議し、辞職を求めます〉と署名を呼びかけた。

 ほかにも、俳優では浅野忠信鈴木砂羽、ミュージシャンの岸田繁、高野寛、SKY-HIことAAAの日高光啓野宮真貴、元AKBの秋元才加、お笑い芸人では大久保佳代子までが〈#検察庁法改正案に抗議します〉とツイートしていた。

 作家やクリエイターたちからも、続々安倍政権のゴリ押し検察庁法改正に批判の声があがっている。

宮本亜門(演出家)
〈このコロナ禍の混乱の中、集中すべきは人の命。どうみても民主主義とはかけ離れた法案を強引に決めることは、日本にとって悲劇です。
#検察庁法改正案に抗議します〉

島田雅彦(作家)
〈見逃してくれよ、といわれて、いちいち見逃す検察を見過ごすな。 #検察庁法改正案に抗議します〉

村山由佳(作家)
〈猫と美味しいもののことだけ呟いていたかったけど、これは駄目だ。これだけは駄目だ。
日本の最高権力者が、自分を守ってくれる人間を検察のトップに据えようとしてる。国民をナメとんのんか、ワレ。ハッシュタグで声をあげよう。

数で動かせるものがまだあると信じて。
#検察庁法改正案に抗議します〉

俵万智(歌人)
〈#今日のアテ そんなんばっかりつぶやいていたかったけどこれはあかんわ  #検察庁法改正案に抗議します〉

大友良英(作曲家)
〈こんなものを通したら民主主義の根幹が崩れかねないとわたしは考えています。政党超えて、この法案を止める力のある国会議員には反対してほしいし、新聞を含むメディアもことの深刻さを伝えてほしいと思います。
#検察庁法改正案に抗議します〉

松本隆(作詞家)
〈#検察庁法改正案に抗議します〉

金子修介(映画監督)
〈#検察庁法改正案に抗議します 法務大臣の答弁は、審議出来る以前の不可解な答弁。〉

入江悠(映画監督)
〈うそついて退学させられそうなので担任の先生を買収する、みたいな。
#検察庁法改正案に抗議します〉
〈いまだに俳優やタレントが政治について語るなという変な抑圧がありますが、勇気もって発信された方には心より連帯を表明します。日本にはもっとロバート・デニーロやクリス・エヴァンスがいていい。#検察庁法改正案に抗議します〉

 普段は“声をあげるな”圧力のオピニオンリーダーである糸井重里も、今回ばかりはこんな抗議ツイートをした。

〈三権分立の復習と、プーチンの例がわかりやすかった。
#検察庁法改正案に抗議します〉

 作家に比べると普段は政治的発言をする人の少ないマンガ家からも多くの人が声をあげている。

南Q太
〈国を壊してはいけないよ #検察庁法改正案に抗議します〉

田亀源五郎
〈主権者として、こんなの黙っていられません。 #検察庁法改正案に抗議します〉

吉田戦車
〈得意技の「ある組織の人事を自分の都合のいいものにする」を、いつまでも使わせてちゃいかん。

#検察庁法改正案に抗議します〉

羽生生純
〈国家公務員の定年延長の是非に紛れ込ませて検事長の定年も延長させるつう手口みたいだけど理由が薄いし問題をゴッチャにして意を通そうとするのはコスい。#検察庁法改正案に抗議します〉

島崎譲
〈まさかそこまでやるわけない!をやるのが現政権の恐ろしさです。#検察庁法改正案に抗議します〉
〈漫画家の先生方はたくさん掲げています。心強いです #検察庁法改正案に抗議します〉

 マンガ界からはほかにも、二ノ宮知子、けらえいこ、榎本俊二、江口寿史、伊藤潤二、松田洋子、羽海野チカ、ヤマシタトモコ、ねむようこ、小玉ユキ、しりあがり寿、さそうあきら……とジャンル問わず多くの人が声をあげているし、アニメ界からも『エヴァンゲリオン』の碇シンジ役などで知られる声優の緒方恵美が〈#検察庁法改正案に抗議します〉とツイートした。

 変わったところでは、筋トレ自己啓発で知られるTestosterone(テストステロン)がこんな辛辣な批判をしている。
〈俺がハッシュタグを使うなんて、滅多にないんだからね!
独裁国家って突然誕生するのではなく、こうして音を立てずにしれっと進んでいく内に取り返しのつかないところまで行くんだろうなぁ。
今はこうしてTwitterで国民が一丸となって声を上げられるので素敵ですね。
#検察庁法改正案に抗議します〉

 メンタリストDaiGoも安倍首相の姿勢をこう批判した。
〈意味があるかはさておきの布マスクは届かないにもかかわらず、権力闘争は抜かりない総理。#検察庁法改正案に抗議します〉

 ほかにも、美術家の会田誠や奈良美智、作家の綾辻行人に平野啓一郎、『この世界の片隅に』の片渕須直監督、元格闘家でタレントの高田延彦、バレーボールの大山加奈選手などなど、ジャンルも世代も普段の政治的立場も超えて数多くの人たちが声をあげているのだ。

 しかも、彼らのツイートを見ていると、たんにムーブメントに乗っかっているのでなく、問題の重大性を認識し、本気で危険性を感じとっていることがよくわかる。

 たとえば、小泉今日子は大友良英や村山由佳の改正案批判ツイートをリツイートした上で、繰り返しこの問題をツイートし続けた。

〈もう一度言っておきます! #検察庁法改正案に抗議します〉
〈1.000.000超えました。この目に焼き付けました。おやすみなさい #検察庁法改正案に抗議します〉
〈おはようございます。#検察庁法改正案に抗議します〉

 小泉以外にも多くの著名人がこの問題に関して何度も繰り返しツイートしている。

 また、きゃりーぱみゅぱみゅは〈#検察庁法改正案に抗議します〉とツイートした際、「桜を見る会と検察庁法改正案の相関図」と題された恋愛ドラマの相関図を模したパロディ画像を紹介したのだが、そこには安倍首相や黒川検事長の写真の入った解説チャートとともに「ここまでのあらすじ」として、「森友学園に国の土地を安く売ったり、国のお金を勝手に使って桜を見る会を開いたりしているんじゃないかと疑われていた安倍晋三は、ずっと黒川検事長に守ってもらっていた。これからも逮捕されたくない晋三だったが、黒川の検事長としての定年が近づいていた…」などとも書かれている。きゃりーは完全に問題の本質を理解した上で、このハッシュタグをツイートしていたのだ。

 しかも、きゃりーがすごいのはネトウヨ安倍応援団からの攻撃にも屈しなかったことだ。

 実はいま、声を上げた芸能人や有名人に対して、安倍応援団で右派系オピニオン誌の常連執筆者である政治評論家・加藤清隆氏が批判リプを飛ばしまくっている。俳優の浅野忠信に対して、〈浅野君、こういうデタラメな陰謀論に与せず、役者として全うして下さい。期待してます。〉、きゃりーぱみゅぱみゅには〈歌手やってて、知らないかも知れないけど、検察庁法改正案は国家公務員の定年を65歳で揃えるため。安倍政権の言いなりになるみたいな陰謀論が幅をきかせているけど、内閣が検察庁を直接指揮することなどできません。デタラメな噂に騙されないようにね。歌、頑張って下さい。〉と上から目線の説教ツイートを行なった。

 ところが、きゃりーぱみゅぱみゅはこの典型的なマンスプレイニング的ツイートをこう一蹴したのだ。

〈歌手やってて知らないかもしれないけどって相当失礼ですよ、、、、〉

 この広がりと本気を見ていると、2015年の安保法制のとき以来か、それ以上かという勢いだ。きゃりーぱみゅぱみゅの反撃に象徴されるように、いつものような安倍応援団やネトウヨ・ネトサポの攻撃や嫌がらせでも止まらないほど、このムーブメントは大きなものになっている。

 この無数の声を、安倍政権はこれまでと同じように無視し、強行するのだろうか。明日からの国会でこの問題がどうなるのか。要注目である。

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