総事業費倍増見通しの「なぜ」とメリットは

 2031年に開業予定の「なにわ筋線」。大阪のうめきたからJR難波駅と南海本線の新今宮駅までを結び、関西空港からJR大阪駅を直通で結ぶ新たなルートとなります。大阪市によると、従来の計画では約3300億円だった総事業費は、ほぼ2倍の約6500億円にのぼる見通しだということです。

 開業すれば街はどう変わるのか。鉄道ジャーナリスト・伊原薫氏への取材を踏まえて、大阪の行政取材を担当する梅田新平記者が解説します。

◎梅田新平:大阪府・市の行政担当 大阪の都市整備計画などを取材

大阪駅から関空までのアクセスが向上

【なにわ筋線】総事業費「3300億円→6500億円」倍増見通...の画像はこちら >>

 「なにわ筋線」は2031年に開業予定の全長約7.2kmの新路線です。最大の特徴は、JR西日本と南海電気鉄道の2社が共同で営業・運行を行う点にあります。

 鉄道ジャーナリスト・伊原薫氏は「この新しい路線の開業で今よりもアクセスが向上する」と話します。 恩恵が最も大きいのは関西空港との接続です。

【なにわ筋線】総事業費「3300億円→6500億円」倍増見通し…新たに税金投入も? 大阪の南北を結ぶ“新路線”アクセス向上や御堂筋線の混雑緩和に期待(2026年4月30日)
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 現在、JRは大阪(梅田)から関空までは最速で47分を要しますが、なにわ筋線が完成すれば、環状線で“ぐるっとまわる”必要がなく「最短ルート」で結ばれるため、平均44分に短縮されます。

 南海電鉄も現在は関空から難波で乗り換え、平均54分かけて大阪駅へ向かっていますが、これが直通で45分。乗り換えなしで9分もの短縮が実現します。これにより、大阪南部や和歌山方面から「キタ」へ向かうユーザーの利便性は一気に高まることになります。

朝は「パンパン」となっている御堂筋線 混雑緩和なるか

【なにわ筋線】総事業費「3300億円→6500億円」倍増見通し…新たに税金投入も? 大阪の南北を結ぶ“新路線”アクセス向上や御堂筋線の混雑緩和に期待(2026年4月30日)
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 なにわ筋線のメリットは、「大阪メトロ」、特に「御堂筋線」の混雑緩和という大きな役割を担っています。

 現在、梅田-なんば間は御堂筋線と四つ橋線が支えていますが、朝の御堂筋線はまさに「パンパン」。 何本か見送らなければ乗れないほどの混雑が常態化しています。ここに並行してなにわ筋線が走ることで、この混雑が3つの路線に分散されることになります。

 大阪市の資料によると、なにわ筋線の開業により梅田・淀屋橋間の混雑は17%ほど緩和される見込みです。旅行客の大きなスーツケースが通勤ラッシュと重なる光景も、うまく誘導できれば緩和されるかもしれません。

 さらに、既存の大阪環状線の負荷も少なくなるため、余裕が生まれた運転士や車両を、USJなどに向かう「ゆめ咲線」へ回すことができるほか、IR(統合型リゾート)が開業し、延伸した場合にそちらに回すことも考えられます。

なぜ?総事業費3300億円→6500億円に

【なにわ筋線】総事業費「3300億円→6500億円」倍増見通し…新たに税金投入も? 大阪の南北を結ぶ“新路線”アクセス向上や御堂筋線の混雑緩和に期待(2026年4月30日)
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 なにわ筋線の事業費は、従来の計画(2017年大阪市資料)では計約3300億円とされていましたが、計約6500億円に膨らむ見通しとなっています。その要因として、円安による資材高騰人件費の上昇地価の高騰は想像に難くありません。

 それに加え、工事を進める中で見つかった「地下の埋設物」を撤去したことが費用を押し上げたといいます。なにわ筋線が通るエリアは、高度経済成長期に多くのビルが立ち並んでいた場所です。当時の解体作業で地中に残された建物の基礎の一部や、ゴミなどが今回の掘削で見つかり、その撤去に多額の費用が必要になったのです。 

 これほどの巨額投資で、交通インフラの面もあるため、民間だけでは難しいという判断があり、追加で税金が投入される可能性はありますが、大阪府・市も含めて検討している段階です

「投資した補助金は戻ってこない」

【なにわ筋線】総事業費「3300億円→6500億円」倍増見通し…新たに税金投入も? 大阪の南北を結ぶ“新路線”アクセス向上や御堂筋線の混雑緩和に期待(2026年4月30日)
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 ここで考えなければならないのは、税金を投じた分だけ、府民・市民に還元されるのかという点です。鉄道事業への補助金として投じられた税金は、直接的な収益として行政に返ってくることはありません。 

 関西経済全体が、このインフラ整備も含めてIRとも繋がり、税収が上がったときに街全体に恩恵があるという考え方ができるかもしれません。2017年度の試算では、利用者への経済効果としては時間短縮や利便性の向上で年間371億円、沿道地域では、建設投資による波及効果が3416億円、そして雇用拡大での生産額増加が年1067億円とされています。

専門家「議論は必要だが、迅速に進めるべき」

【なにわ筋線】総事業費「3300億円→6500億円」倍増見通し…新たに税金投入も? 大阪の南北を結ぶ“新路線”アクセス向上や御堂筋線の混雑緩和に期待(2026年4月30日)
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 伊原氏によると、なにわ筋沿いは御堂筋や四つ橋筋に比べるとまだ地価が安く、開発の余地が多分に残されているということです。

鉄道が通り、利便性が向上することで、新たなオフィスや商業施設が誘致できれば、ビジネス客や観光客が増え、税収も増えることで住民に恩恵がある可能性を指摘します。

 一方で、事業費の上振れ分については、運賃に上乗せされる可能性もあると言及。

 伊原氏は「立ち止まって検討していても費用はかさむ。開業させて経済を回すことを優先すべき」と、迅速な推進を訴えています。

 具体的なダイヤなど、示されていないことも多いなにわ筋線のこれからに注目です。

(2026年4月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『記者プレゼン』より)

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