◆プロボクシング ▽世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)4団体統一タイトルマッチ12回戦 〇統一王者・井上尚弥(判定)WBA&WBC&WBO同級1位・中谷潤人●(5月2日、東京ドーム)

 世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(33)=大橋=が、WBA&WBC&WBO世界同級1位の中谷潤人(28)=M・T=を判定で下し、ともに32戦全勝同士の無敗対決を制した。リング上での勝利インタビューでは冒頭で「中谷選手、ありがとうございました!」と感謝を伝えた。

出血のないきれいな顔で「戦う前から言っていた、勝ちに徹する、勝つのは僕です、という戦いを実行しました」と自身の戦いを振り返った。「僕が見ている景色は独り占めですけど、今日こうして5万5000人集まってくれたこその景色だと思う。またこの景色を見せてください」と話し、東京ドームのリングに再び立つことを希望した。

 今後については「未定ですけど、少し、ゆっくり休ませてください」とした。「1年間、この日を待ち望んでくれて、ありがとうございました。1年間疲れました。少し休んで、次戦の発表ができればと思います。次はKOする試合を見せたいと思います」と約束した。

 尚弥は2年ぶりの東京ドーム興行で前回と同じく布袋寅泰のギター生演奏で入場。試合開始直前、2人が顔を合わせて立つとバッチバチににらみあった。序盤は互いに距離を測るような戦いで、ラウンド終わりには両者に笑顔も。4回になると尚弥にクリーンヒットが増え、主導権を握った。

場内ビジョンでは尚弥が抜群の反射神経で中谷のパンチをよけているリプレー映像が流れると、場内からはどよめきが上がった。10回残り1分を切って偶然のバッティングで中谷の眉間左側から出血。しばしの中断を挟んだが試合は続行された。どちらも倒れることなく試合を終えると、笑顔で抱き合い、健闘をたたえあった。

 尚弥は自身の歴代最多記録を更新する7度目の4団体統一王座防衛に成功し、世界戦28連勝も自身の歴代最多記録を更新、世界戦28勝は単独歴代2位となった。またデビューから無傷の33連勝は、日本人単独歴代1位となった。これまでは尚弥と中谷が32連勝で並んでいた。

 ボクシング界で最も権威がある米専門誌「ザ・リング」のパウンド・フォー・パウンド(PFP、全階級を通じての最強ランキング)で、2位の尚弥が6位の中谷を下した。前回34年ぶりに東京ドーム興行で尚弥はルイス・ネリ(メキシコ)に6回TKO勝ちし、1年9か月ぶりに1位に返り咲いた。今回PFP対決を制したことで、現在1位のWBA・WBC・IBF世界ヘビー級統一王者オレクサンドル・ウシク(39)=ウクライナ=を上回り「世界最強ボクサー」に返り咲く可能性もありそうだ。

 中谷戦へ向け、スパーリングの相手も「仮想・中谷」にこだわった。身長178センチのドミニク・クラウダー(32)=米国=ら米国、メキシコから5人を招聘(しょうへい)。

アレクシス・エスピノサ(24)=メキシコ=は、昨年12月に中谷を苦しめたセバスチャン・エルナンデス(メキシコ)が「仮想・中谷」として呼んでいたパートナー。長身サウスポーを体感し「ガードの位置」「打ち終わり」のイメージを染み込ませた。

 この勝利は「通過点」に過ぎない。当初は中谷戦をスーパーバンタム級の「集大成」と話していた。しかし先月のTikTokライブ配信で「フェザー級が最終チャレンジかなと思います。中谷戦と、ひとつやりたいなと思っている試合、それが終われば、ラストの挑戦でフェザー級」とコメントした。名前こそ挙げなかったが、PFP4位のWBA・WBC・WBO世界スーパーフライ級王者ジェシー“バム”ロドリゲス(26)=米国、帝拳=とのスーパーファイトへの機運も高まっている。

 世界5階級制覇の偉業か、PFP1位の座を懸けたバムとの最強決定戦か。「通過点」の先に、まだ誰も踏み入れたことのない「最強」へのモンスターロードが続いている。

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