クルーズ船で集団感染の疑い「ハンタウイルス」

 ハンタウイルスの集団感染が疑われているクルーズ船「MVホンディウス号」。

 先月、日本人1人を含む乗客・乗員約150人を乗せてアルゼンチンから大西洋縦断へと出航し、35日間かけてアフリカ西部のカーボベルデに向かう行程でした。その約1か月の航海で、少なくとも8人が感染確認または感染疑いで、うち3人が死亡しています。

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る...の画像はこちら >>

 呼吸器疾患の症状があらわれた場合には致死率40%にも…ハンタウイルスとは一体何なのか?感染の脅威はあるのか?関西福祉大学・勝田吉彰教授に聞きました。

感染・感染疑い8人 うち3人が死亡

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る?専門家「医療体制次第で治療可能」一方で「ウイルス変異によって感染力が強くなる可能性」指摘 ヒト→ヒト感染の『アンデス株』クルーズ船乗客から検出
MBS

 ハンタウイルス集団感染の疑いがあるクルーズ船「MVホンディウス号」。4月1日に乗客・乗員計約150人(うち日本人1人)を乗せてアルゼンチンを出航し、5月3日にカーボベルデ沖に到着しました。

 異変が発生したのは、出発から10日後。4月11日のことです。

 <MVホンディウス号 船内の異変>
 ▼4月11日 オランダ人   死亡
 ▼4月24日 オランダ人の妻 体調不良で下船
 ▼4月27日 オランダ人の妻 死亡
        イギリス人   重篤で南アフリカの病院へ搬送
 ▼5月2日  ドイツ人    死亡
 ▼その後   イギリス人・オランダ人・その他乗客1人
        呼吸器疾患の症状など

 さらにスイス政府によると4月末、下船した男性の感染が判明。スイスに帰国して治療中だということです(同乗していた妻は無症状。隔離のうえ調査中)。

 5月7日現在、感染・感染疑いが8人。うち3人が死亡しています。

致死率40~50%の型も…ハンタウイルスとは?

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る?専門家「医療体制次第で治療可能」一方で「ウイルス変異によって感染力が強くなる可能性」指摘 ヒト→ヒト感染の『アンデス株』クルーズ船乗客から検出
MBS

 ハンタウイルスとは、38種あるウイルスの総称。大きく分けて「北米・南米型」「アジア・欧州型」の2種類があります。

 <北米・南米型>
  ▼ハンタウイルス肺症候群
  ▼致死率40~50%
  ▼日本では患者発生の報告なし

 <アジア・欧州型>
  ▼腎症候性出血熱
  ▼重症型だと致死率3~15%
  ▼日本国内では1970~80年代に実験用ラットから感染

 いずれも、げっ歯類(ネズミなど)のフン・尿への接触で感染するということですが、呼吸器疾患の症状があらわれた場合には、致死率は40%にもなるといいます。

1960年代 大阪・梅田で流行していた?

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る?専門家「医療体制次第で治療可能」一方で「ウイルス変異によって感染力が強くなる可能性」指摘 ヒト→ヒト感染の『アンデス株』クルーズ船乗客から検出
MBS

 実は、ハンタウイルスは1970年代以降の流行よりも前に関西でも流行しました。それが、1960年代の大阪・梅田です(119例のうち2例死亡)。

 関西福祉大学の勝田吉彰教授によると、「腎臓に症状が出た人が多かったとされ、アジア・欧州型と考えられる」と指摘。「梅田に限らず当時の衛生環境だと街中にネズミがいてもおかしくない」と言います。

「感染力はそれほど高くないとみられる」一方で…

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る?専門家「医療体制次第で治療可能」一方で「ウイルス変異によって感染力が強くなる可能性」指摘 ヒト→ヒト感染の『アンデス株』クルーズ船乗客から検出
MBS

 今回、死亡した1人と治療中の1人からは、ハンタウイルス38種の中で唯一ヒト・ヒト感染が起こるとされる「アンデス株」が検出されました。

 この「アンデス株」は、主にアルゼンチンとチリで確認されていて、症状は発熱・せき・嘔吐・下痢など急速に悪化すると呼吸不全を起こし、死亡することもあるそうです。

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る?専門家「医療体制次第で治療可能」一方で「ウイルス変異によって感染力が強くなる可能性」指摘 ヒト→ヒト感染の『アンデス株』クルーズ船乗客から検出
MBS

 勝田教授は「今回のツアー内容を見ると、説明会やボートなど、“密”になる機会が多そうだった」と指摘。

 一方で「しかし、あの規模の船でコロナなら30人くらい感染してもおかしくない。感染力はそれほど高くないとみられる」と言います。

小さいボート・講習会・食堂…ツアーでは“密”な環境多い?

 今回のクルーズ船と同じ出発地点であるウシュアイアから南極大陸へのツアーに参加したMBS山中真解説委員も船内の“密”な環境を経験したと言います。

 (MBS山中真解説委員)
 「南極大陸に着いて島に渡ったりする際、何人かで小さいボートに乗り分けていくときには『密』になりますし、講習会の時間にはラウンジのような場所に集まります。また、食事のときも基本的には食堂スペースで一緒になります」
 「ウシュアイアから南極に渡るドレイク海峡は“世界一荒れる海”と言われる場所で、非常に揺れる。船内の廊下には何mおきにビニールがあって、いつでも嘔吐できるようにしていました」

「ウイルス変異によって感染力など強くなる可能性も」

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る?専門家「医療体制次第で治療可能」一方で「ウイルス変異によって感染力が強くなる可能性」指摘 ヒト→ヒト感染の『アンデス株』クルーズ船乗客から検出
MBS

 このハンタウイルス、感染の脅威はあるのでしょうか?

 勝田教授は、「医療体制次第で治療可能」とする一方で、「感染力などが強くなる可能性」も指摘します。

 <感染の脅威は?>関西福祉大学・勝田吉彰教授
 ▼今回感染したとみられる北米・南米型の致死率40%~50%はとても高いように思えるが、衛生環境・医療体制が不十分な地域も含まれる
 ▼医療体制が整っていれば治療は可能
 ▼空港などでの水際対策はこれまで通りのものを続けていれば問題ない
 ▼ただしコロナと同様、ウイルス変異によって感染力などが強くなる可能性もあるので注視するべき

船内に取り残された乗客「私たちが望むのは安心感と見通し、家に帰ること」

【ハンタウイルス】致死率40%の型も…パンデミックはあり得る?専門家「医療体制次第で治療可能」一方で「ウイルス変異によって感染力が強くなる可能性」指摘 ヒト→ヒト感染の『アンデス株』クルーズ船乗客から検出
MBS

 ロイター通信によると、3日からカーボベルデ沖で足止めされていたクルーズ船は、スペインのカナリア諸島に向けて出発。3日以内に到着する予定だと言います。

 しかしカナリア諸島の自治州は「感染リスクがないのならカナリア諸島まで来る必要は全くない。誰も私たちに理由を説明していない」として受け入れに反対しています。

 クルーズ船から降りることができずにいる乗客は…

 (乗客)「いまは先行きが不透明で、それが何よりも一番つらい。私たちが望んでいるのは安心感と見通し、家に帰ること、ただそれだけです

 (2026年5月7日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

編集部おすすめ