高橋維新[弁護士]

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2015年11月19日放映のテレビ朝日アメトーーク」のテーマは「だから嫌いなんだ発表会」。出演する芸人6人が各々の嫌いなものとその理由を発表するという内容である。


基本的には、その「嫌いなもの」をバカにすることになるので、ファニー(こっけいさ)が志向されている。礼二(中川家)の「スムージー」、バカリズムの「サッカー」、ケンドーコバヤシの「浅倉南」は、みなそのような形での笑いだった。

ただ、的確にバカにするには、きちんと相手の情報を綿密に得ておく必要がある。その意味では、3人とも自分の嫌いな対象に無関心なわけではなく、よく見ているのである。

バカリズムは、本来はサッカーが好きなのに、PK戦で最終的な勝敗を決めることやエスコートキッズのなどの疑問点にツッコミを入れるというスタンスだったし、ケンドーコバヤシも「タッチ」という漫画自体は大好きだからこそ浅倉南についてたくさん情報を持っているのである。

「好き」と「嫌い」は紙一重だとか、「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」だと言われるような話である。筆者も毎週「アメトーーク」批評として文句(?)をつけているのは、「アメトーーク」を毎週見ているからなのである。

さて、この3人とは毛色の違う形で笑いをとっていた芸人もいた。博多大吉博多華丸・大吉)、土屋伸之(ナイツ)、吉田敬ブラックマヨネーズ)の3人だが、3人は自分の嫌いなものをバカにするのではなくて、「それが嫌いな自分」を卑下する形で笑いをとっていた。バカにしていたのは、あくまで自分自身だった。

大吉はバイキングにうまく順応できない自分を、土屋はファッションに翻弄される自分を、吉田は男前にひどい怨恨を抱いている自分をどうぞ笑って下さいとプレゼンをしていた。3人とも、うまいことハマっていた。


宮迫も、司会進行役として、うまいことフリができていた。プレゼン側の芸人の言うことは基本的に世間とはズレていることである。彼らが本来「普通の人」であれば嫌いにならないようなものを嫌いだと言うことでズレが生まれ、それがボケになる。

宮迫は、「そんな嫌いになるようなものやないやろ」とか「みんな好きじゃないですか」などと言って、この「普通の人であれば嫌いになるようなものではない」という基準状態を設定あるいは説明する。すると、これとの対比で、芸人たちの発言のズレが際立つ。これが、フリの役割である。

これは、テレビで生き残っているようなタレントであれば誰でもできる技術なので、これだけで宮迫に及第点をつけられるわけではない。筆者のようにテレビを見過ぎている天邪鬼は、宮迫レベルの芸人がこんな凡庸なフリに徹しているのを見るとやきもきしてしまう。

この手のフリは、「普通の人」の代表である横の女性タレントに任せておけばいいので、宮迫にはもっと宮迫にしかできないことをやってほしいというのが正直なところである。

全体的には、ファニーが志向されていたので十分おもしろかった。この前のラグビーW杯を受けて新パターンが出てきた礼二のラグビー審判のモノマネも堂に入っている。

毎回このようなファニーだけで固めてほしいというのが筆者の一貫した意見である。


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