【科目】介護✕認知症  【テーマ】認知症疾患医療センターの役割

【目次】
  • 認知症は専門的な医療機関を受診しよう
  • 認知症疾患医療センターがしてくれること
  • 認知症疾患医療センターへの受診方法

特別養護老人ホーム裕和園の髙橋秀明です。

今回は、地域の包括支援を支える「認知症疾患医療センター」について解説します。

認知症は専門的な医療機関を受診しよう

認知症の主な発症リスクは加齢だとされるため、超高齢化社会の日本は、世界に類を見ない認知症先進国だといえるでしょう。

認知症は早期発見・早期治療により、進行を緩やかにすることや、場合によっては完治が期待できる可能性もあります(※完治が期待できるのは「正常圧水頭症」や「慢性硬膜下血腫」が原因疾患の場合)。

「認知症かもしれない…」と家族が感じたとき、医療機関ならどこでも相談して良いかと言えば、そうではありません。やはり専門的な知識を持つ医療機関をおすすめします。

そのひとつが「認知症疾患医療センター」です。認知症疾患医療センターは、都道府県や政令指定都市が指定する認知症専門の医療機関です。

認知症の状態にある本人とその家族が安心して地域生活を営むサポートをするために、2008年から厚生労働省が「認知症疾患医療センター」の創設を進めました。

認知症疾患医療センターは、専門職員の配置状況や体制等により、以下の表のように3つに分類されます。

  基幹型 地域型 連携型 設置医療機関 病院(総合病院) 病院(精神科病院など) 診療所・病院 基本的活動圏域 都道府県圏域 二次医療圏域 専門的医療機能 鑑別診断等 認知症の鑑別診断及び専門医療相談   人員配置 ・専門医又は鑑別診断等の専門医療を主たる業務とした5年以上の臨床経験を有する医師(1名以上)
・専任の臨床心理技術者(1名)
・専任の精神保健福祉士又は保健師等(2名以上) ・専門医又は鑑別診断等の専門医療を主たる業務とした5年以上の臨床経験を有する医師(1名以上)
・専任の臨床心理技術者(1名)
・専任の精神保健福祉士又は保健師等(2名以上) ・専門医又は鑑別診断等の専門医療を主たる業務とした5年以上の臨床経験を有する医師(1名以上)
・看護師、保健師、精神保健福祉士、 臨床心理技術者等 (1名以上)   検査体制(※他の医療機関との連携確保対応で可) ・CT
・MRI
・SPECT ・CT
・MRI
・SPECT ・CT
・MRI
・SPECT   身体合併症、行動・心理症状対応 空床を確保 急性期入院治療を行える医療機関との連携体制を確保   医療相談室の設置 必須 なし

(出典:認知症施策推進大綱)

上記の表からもわかる通り、設備・人員・体制が最も充実しているのが基幹型の認知症疾患医療センターです。入院体制も整っているため、状態に応じて入院治療も可能です。

地域型の一部や連携型では、入院設備がないところもあり、入院治療が必要な方は入院設備のある医療機関を紹介されるのが一般的です。

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認知症疾患医療センターがしてくれること

【業務内容】
  • 認知症の状態にある方の家族などからの相談の受付
  • 医療機関などの紹介
  • 鑑別診断(認知症の原因疾患についての専門的な診断)
  • 初期対応
  • 身体合併症、行動・心理症状の急性期対応
  • かかりつけ医などへの研修の実施
  • 地域包括支援センターなどとの連絡調整
  • 認知症医療に関する情報発信

認知症疾患医療センターでは検査体制が充実しているため、心理・血液検査や画像検査から、より正確な診断を受けることが可能です。

また、介護者が頭を悩ませる行動・心理症状の背景(理由)を多角的・専門的に考察し、より適切な治療やアドバイスも期待できます。

認知症の行動・心理症状は、身体的不調が原因で起こることがあります。

脳の状態だけではなく、全身状態の観察をあわせて行う点が、強みといえるでしょう。

また、本人の状態に応じて介護事業所や地域包括支援センターなどの関係機関との連携を図り、本人や家族にとって、より良い選択肢を提案してくれます。

認知症疾患医療センターへの受診方法

1.かかりつけ医に紹介してもらう かかりつけ医に紹介をしてもらい、認知症かどうかの鑑別診断を行ったり、治療方針を選定したりします。その後は、かかりつけの医療機関で治療を継続することになります。 2.認知症疾患医療センターに直接問い合わせる

自分の住所地にある認知症疾患医療センターは、住所地の役所のホームページから検索が可能です。

役所に電話をして確認することもできますが、「かかりつけ医の紹介状がないと診察不可」や「紹介状がないと初診料または特別費用がかかる」ケースもありますので、確認が必要です。

3.介護事業所や地域包括支援センターに問い合わせる かかりつけ医がない場合や「認知症かも?」と気づき、相談する場所がわからない場合、住所地の役所や地域包括支援センター、介護事業所に問い合わせましょう。必要に応じて、認知症に詳しい専門医や認知症疾患医療センターを紹介してくれます。
超高齢社会の地域支援を支える認知症疾患医療センターの役割
専門期間としてさまざまな機能と役割を持つ

地域の医療機関や介護事業所との連携を図り、認知症にまつわる啓発活動を通じて、地域の認知症対応力を向上させることも、認知症疾患医療センターの役割です。

今後増加すると見込まれる認知症の専門機関として重要な役割を果たす機関です。しかし、まだまだ一般の方に浸透しきっていないように感じます。

この記事を参考に、認知症疾患医療センターの機能や役割を知っていただけるとうれしく思います。

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