介護施設・事業所の財務状況を公表すべきとの提言
社会保障審議会・介護保険部会で議論が開始
5月19日の「福井新聞」で、県内の介護施設で週休3日制の働き方が普及していると報道されました。
記事によると、福井県のある特養では、2023年度から「1日8時間・週5日勤務」か「1日10時間・週4日勤務」か、職員が働き方を選択可能に。契約社員を含めた約200人の職員のうち、介護職員8人、ケアマネ1人の計9人が週4日勤務=週休3日制を選択しているとのことです。
1日あたりの労働時間が10時間となるので、週4日勤務であっても、1週間あたり40時間という法定労働時間は維持されています。日々の勤務時間を2時間増やして、その分、週の中に丸1日休める日を確保するわけです。
もともとこの福井県の施設は、介護業界の魅力向上を図る県の事業でモデル事業所に採択されており、昨年度から本格的に週休3日を実施していました。福井県は今年度も事業を継続。その枠組みの中で、今年度も引き続き週休3日制を導入しています。
近年、福井県のみにとどまらず、全国的に人手不足が続く介護業界全体において、1日の勤務時間を長くする代わりに休日を増やす「週休3日制」に注目が集まっています。厚生労働省がモデル事業の1つにも設定しており、今後普及が予想される働き方と言えるでしょう。
介護職における週休3日制とはどのような働き方なのか、メリット・デメリットは何かについて深掘りしてみます。
そもそも週休3日制とは?
週休3日制とは、1週間の間に、必ず3日間の休日を確保できる働き方のことです。土日を含む必要はなく、平日3日間の休みでも週休3日に該当します。
2019年から始まった政府の働き方改革が進む中、ゆとりのある働き方の代表例の1つとして、週休3日制の導入への関心が高まりました。職場に週休3日を導入する場合、以下の3パターンがあります。
- 総労働時間維持型・・・1日あたりの所定労働時間を増やして(1日10時間)、1週間あたりの労働時間を週休2日と同じ40時間にする方法です。丸1日休める日は増えますが、就労日の労働時間が2時間長くなります。
- 給与維持型・・・週休3日にしても、週休2日のときと給与額および1日あたりの所定労働時間を同じとする方法です。単純に働く側が有利な設定で、成果主義的な組織に向いています。
- 給与減額型・・・休みを増やした分、週休2日制のときよりも給与を減額する方法です。雇用する側にとっては労働力が減り、働く側にとっては給与額が減ってしまいます。雇用する側の場合は事業を縮小したいとき、働く側にとっては給与額を減らしても育児や介護などのプライベートを重視したいときに適した働き方です。
介護業界の場合、人手不足が続き収益にも余裕のない施設が多いことを踏まえると、給与維持型は難しいケースが多いでしょう。上記の福井県の介護施設は、総労働時間維持型が採用されています。
週休3日制を導入することの施設側のメリット・デメリットとは?
週休3日制導入による施設側のメリット
週休3日制を導入した場合の施設側のメリットとして以下の点が考えられます。
- 求職者の増加・・・メリハリのある働きやすい職場となり、就労希望者が増え、人材確保につながりやすいです。「週3日休める」ということで、他の施設との差別化もできます。人材確保難に苦しむ介護業界においては、大きなメリットとなり得ます。
- 離職率の低下・・・1日あたりの就労時間は増えるものの、週3日休めるので職員の満足度が高まり、離職率が下がる効果が期待できます。介護業界は全体的に離職率が高めであり、定着率を高めたい施設にとっては導入の意義は大きいです。
- 施設全体の生産性の向上・・・休める日が増えるので、各職員は心身の体調管理がしやすいです。出勤日の生産性を高めることができ、リフレッシュした元気な職員がケアを行うので、利用者へのサービスの質向上にもつながります。
週休3日制導入による施設側のデメリット
週休3日制を導入した場合の施設側のデメリットとして以下の点が挙げられます。
- 事務作業の煩雑化・・・特定の職員が「今年度から週休3日」となった場合、週休2日で働き続けている職員との間の勤怠管理や給与管理などの処理を行うための事務作業が増加します。複数の勤務形態が存在し続けることになり、労務管理のスムーズな事務処理が難しくもなります。
- 職員間の意思疎通の頻度が減る・・・現場では利用者に関する情報共有が不可欠です。休みが増えると、共有できない時間が週に丸1日増え、現場のケア作業における流れが滞る恐れがあります。また、新たに雇用される職員の場合、職員同士が顔を合わせる日が週休2日制よりも少ないので、人間関係の構築により時間がかかることも考えられます。
- 利用者と職員との距離感増加・・・休みが増えると利用者とコミュニケーションが取れない日が増えます。週休2日制の場合に比べて、職員と利用者が馴染みの関係を作りにくくなる可能性があります。
週休3日制を導入することの働く側のメリット・デメリットとは?
週休3日制導入による働く側のメリット
週休3日制を導入した場合の働く側のメリットとして以下の点が考えられます。
- 毎週1日、自由な日が増える・・・週休2日制から週休3日制に変更すると、年間約50日も休みが増えます。合計の年間休日は156日となり、プライベートの時間を大切にでき、資格取得など自己啓発の時間を増やすことも可能です。休みの取り方によっては連休も取得でき、旅行などにも出かけやすくなります。
- 残業が減る・・・1日の就業時間が増えることで、日勤や夜勤などの間で勤務時間の重なりが増えます。残業して引継ぎをする、といったことを減らせます。例えば夜勤の場合、朝方のピーク時(起床・洗顔の介助、朝食の準備に追われる時間帯)になると残業が発生しやすいです。しかし10時間勤務であればピーク時における職員不足を防ぎ、引継ぎもスムーズに行うことができます。

週休3日制導入による働く側のデメリット
週休3日制を導入した場合の働く側のデメリットとして以下の点を挙げられます。
- 1日あたりの労働時間が増加・・・総労働時間維持型だと10時間労働となるので、就労日は帰宅後にプライベートな時間を確保しにくいです。「就労日は仕事の日」と、割り切る必要性が高まります。
- 急な休みを取りにくい・・・出勤日は1日10時間勤務となるため、1日あたりの任される仕事量が増えます。もし急に休みを取ろうとすると、他の職員への迷惑の度合いが大きくなり、週休2日制よりも休みにくい雰囲気が生じる恐れがあります。
今回は近年注目を集めている介護職の週休3日制について考えてきました。もし就労先の介護施設で週休3日制を導入している場合、メリット、デメリットの両方を踏まえ、適用するかどうかを考えると良いでしょう。