【JDMレジェンズ  Vol.1】

 自らの日本旧車好きが高じ、さらに改造の腕が認められて、ついにショップを開業したオーナーがいる。おもに日本の旧車をアメリカに輸入する業務を専門に行っており、北米での日本車人気も追い風になって、多くの仕事の依頼が舞い込んでいるようだ。
一台一台ていねいに仕上げることはクルマに対する思い入れも強くなり、売り先が決まった時、手放すのがつらくなることもあるという。そんな人間くさい仕事ぶりをリポートする。
クルマが好きで仕事にする 自動車メーカーの社員、街角の修理工場や中古車販売業、町中を走る運転手から名だたるレースドライバーまで、クルマに関する職業はいろいろ。それでも、クルマ教育を受けてなるべくしてなった職業、というのは少ないほうで、やっぱり子供の時に接したクルマが好きだったからクルマの仕事に就きたかった、というのがよくある話。

 日本に国産車が普及し始めた昭和40年代には、「外車」のほうがカッコよくて性能もはるかに上をいっている、そんなふうにみなされることも多かった。身近では見ることのできない外車に憧れて、都会にあった並行輸入車販売店に展示された珍しい外車を、ショールームのガラス越しに眺めて走る姿を想像していたのは、もう40年も前のこと。


 今では輸入車系ディーラー店舗もあちこちにあるし、家にいながらにしてコンピューターをのぞき込めば、世界のどこでどんなクルマが売られているのか、すぐに分かる。走っている姿をビデオで見るのだって簡単。だからこそ、国やメーカーごとの特徴とか、現地モデルの仕様とか、そんな「個性」が薄れてきてしまった今では、本当のクセのあるクルマっていうのは、もう世界のどこにもなくなってしまったのだろうか。未知のクルマに心を熱くするっていうことは、もうありえないのか……。

 そんな言葉にならない問いに、自分なりの答えを出した人がいた。エリック・ビゼックさん。
日本からは遠いアメリカ・ユタ州ソルトレイクシティにある、日本旧車のアメリカへの輸入を専門とするショップのオーナーだ。自分がなぜクルマが好きなのかという理由を、自問しながら突き詰めて、行き着いた答えがこれだった。

市内の工業地域の一角にあるショップなど【写真13枚】

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