身振り手振りというほど、腕元の動きは目立つもの。それだけに時計のアピール力は高く、控えめなサイズであっても注視を集める。

だからこそ、時計は見た目が最重要ともいえる。

ダイヤル&ケースに個性の宿るデザインはその効果を確信犯的に演出してくれるはずだ。確信犯とは本来、大勢に逆らおうとも自分の信じる信念や道徳に基づくことであり、その洒落た気骨にも誰もが目を見張るのだ。

 


RALPH LAUREN
ラルフ ローレン/スティラップ

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ラルフ ローレンの本格的なウォッチコレクションの象徴として「スティラップ」が誕生して早くも10年を迎えた。ユニークなフォルムは、モデル名が示すとおり、乗馬の鐙(あぶみ)をモチーフに、ライフスタイルに根ざすブランドならではの世界観を表現する。

そこには時計収集家としても名高いラルフ・ローレン氏の造詣の深さやセンスが存分に注がれ、風合いのあるレザーストラップとも調和し、ヴィンテージのような風格も漂う。いくつになっても使い続けられる形に、アメリカントラッドの伝統が息づいている。

 


HERMÈS
エルメス/ケープコッド

男も時計も見た目が9割? デザインに個性が宿る6つの腕時計
腕時計SSケース、縦33×横33mm、自動巻き。63万9000円、シャツ10万1000円、パンツ17万4000円/すべてエルメス(エルメスジャポン 03-3569-3300)

ジュエリーにあまり興味のない男でもエルメスの傑作ジュエリーと名高い「シェーヌ・ダンクル」は気になる存在だろう。船の錨の鎖をモチーフにしたシンプルなデザインに、あえてシルバーを用いて潮の香りと力強いエレガンスを融合する。

これに着想を得て1991年に誕生したモデルが「ケープコッド」だ。正方形の文字盤を取り巻く、ベゼルと一体になったケースにそのスタイルを受け継ぎ、さらに数字インデックスのタイポグラフィにも独特のフォルムが息づく。気品ある男のジュエリーウォッチだ。

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TIFFANY & CO.
ティファニー/ティファニー イースト ウエスト

男も時計も見た目が9割? デザインに個性が宿る6つの腕時計
腕時計SSケース、縦42×横25mm、クオーツ。46万円/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク 0120-488-712、コート2万3000円、ニット6500円/ともにアーバンリサーチ ロッソ(アーバンリサーチ ロッソ ミント神戸店 078-230-4710)

ケースとストラップ幅をほぼ同じにするデザインは力強く、洗練された雰囲気を漂わせる。だがよく見ると大胆にも文字盤の上下は90度回転され、ユニークな個性を主張するのだ。これも人とは違った見方や考え方を大切にするニューヨーク的な発想と同時に、トーキングピースとしての魅力を備え、多彩な文化や価値観が混在する大都市で創業し磨かれたティファニーらしさを象徴する。

モデル名は本来は上下にある南北を回転し、東西にしたことに由来しており、ここからもそんな遊び心が伝わってくる。ティファニーの真面目な時計作りの姿勢が伝わってくる名器である。

 


CARTIER
カルティエ/トーチュ

男も時計も見た目が9割? デザインに個性が宿る6つの腕時計
K18WGケース、縦39×横31mm、手巻き。171万6000円/カルティエ 0120-301-757 Photo 2000 © Cartier

樽型のトノウに対して、左右のボリュームを増した独特のケースフォルムは「トーチュ」と呼ばれるもの。フランス語で“亀の甲羅”を意味し、1912年にルイ・カルティエが考案したスタイルだ。そのスペースを活かした複雑機構も人気が高いが、こうして2針の手巻き式というドレスウォッチに原点回帰することで、ケースの美しさがさらに際立つ。

 


GUCCI
グッチ/グリップ

男も時計も見た目が9割? デザインに個性が宿る6つの腕時計
SS(イエローゴールドPVD加工)ケース、38mm幅、クオーツ。21万5000円/ラグジュアリー・タイムピーシズ ジャパン 03-5766-2030

ヴィンテージ時計のデザインに、ジャンピングアワーのフェイス前面を覆い、わずかな小窓で時刻を表示する“鉄仮面”と呼ばれるスタイル。これを1970年代スケートカルチャーに着想を得て新しく解釈。時分、日付を3つの小窓に表示し、ゴールドカラーで統一した佇まいににストリート感が溢れる。

 


HAMILTON
ハミルトン/ベンチュラ

男も時計も見た目が9割? デザインに個性が宿る6つの腕時計
SS(ブラックPVD加工)ケース、縦50.3×横32.3mm、クオーツ。10万1000円/スウォッチ グループ ジャパン 03-6254-7371

アメ車のテールフィンなどで名高いデザイナー、リチャード・アービブが1957年に手掛けた革新的なデザインが「ベンチュラ」だ。時計の定石である丸でも四角でもない三角というカタチ。それは近未来を示唆するともに半世紀を経た現代も、オールブラックを纏い、斬新さは色褪せるどころかさらに増す。

 

※本文中における素材の略称は以下のとおり。SS=ステンレススチール、K18=18金、WG=ホワイトゴールド

渡辺修身=写真 菊池陽之介=スタイリング 柴田 充、髙村将司、増山直樹、渋谷康人=文