連載「ジタンコウフカのススメ」
「忙しくて時間がない」「ジムトレもそろそろダレてきた」という男性諸君、ちょっぴりキツいけどサクッと終わるトレーニングはいかがだろう。キーワードは「ジタンコウフカ(時短高負荷)」。

呪文のようだが、そこには科学の力を借りて効率よく体を変えるヒミツが隠れている。サッカーやラグビーの日本代表選手も通いつめる高地トレーニング施設のトレーナーに、理論と実践法を教わっていこう。
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空中戦が苦手だったJリーガーが、競り負けないフィジカルを手に...の画像はこちら >>

時短でボディシェイプが叶う、いま注目のトレーニングメソッドである「高地(低酸素)トレーニング」。それを街中でできてしまうトレーニングスタジオ「ハイアルチ」のプロデューサー兼フィジカルコーチの新田幸一さんに、時短高負荷なトレーニングをレクチャーしてもらう。

今回は「空中戦で勝てない」と悩んでいた某プロサッカー選手に新田さんが提案した時短高負荷トレーニングを紹介する。

【教えてくれる人】新田幸一さん         
高地トレーニングを街中で体験できるスタジオ「ハイアルチ」の開発者であり、プロデューサー。

長年のトップアスリートたちへの指導経験を活かし、高地トレーニングの効果を最大限に引き上げるメニューを構築。現在は、浦和レッズの槙野智章選手をはじめとしたトップアスリートのほか、大学駅伝の選手たちのトレーナーも務めている。


ジャンプ力が高いだけでは通用しない世界

ハイアルチのへビーユーザーであるJリーガーのA選手。国内屈指のディフェンダーとして知られる彼も、実はかつて空中戦に対する苦手意識をもっていたという。

サッカーやフットサルを知っている者ならわかると思うが、ヘディングをしようとジャンプをしたものの、頭がボールにかすりもしない。あるいは、空中で相手と接触して競り負けてしまい、ゴールを許してしまうというシーンを見たことがあるだろう。

何故、空中戦で勝てないのか。

「ジャンプ力が足りないから?」「フィジカルが弱いから?」などと、A選手も自分なりに原因を考えて、悩んでいたという。

「今ではフィジカルが強くて空中での競り合いにも負けない頼れるディフェンダーとして知られていますが、じつは彼、元々は空中戦が決して得意というわけではなく、相手に競り負けるということも多かったんです。A選手の場合、ことジャンプ力に関しては、並みいるJリーガーのなかでも突出していました。ただ、問題はジャンプをするまでのモーション(助走)が大きすぎることだったんです。ジャンプするまでの時間が長すぎると、相手の不意をつけないどころか、『あっ、あいつくるな』と、次のプレーを察知されてしまう。そうなると、いくらジャンプ力が高くても、抑えるのはそう難しくないですよね」。

そんなA選手の悩みを解決すべく新田さんが提案したのが、ジャンプ力はもちろん、空中での体の切り返し能力を同時に高めることができるトレーニングメニューだ。

「まずジャンプで地面をドンと蹴ったときに、地面から跳ね返ってくる力(地面反力)を利用できるようになれば、助走なしでも高く跳べるようになる。さらに、ジャンプと同時に相手に合わせてバランスを崩すことなく、瞬時に体位を変えることができれば、先のプレーを読まれにくくなります。そこで行ったのが『クロスステップ』というトレーニングです」。


ポイントは急な動きに対応できる俊敏性

「クロスステップ」は、地面反力を使ってジャンプの動作効率を上げる効果のほか、「方向を変える」「止まる」「進む」といった、急な動きの切り替えにも対応できる俊敏性を身につけるためのフットワークだ。

「アジリティクロスという十字型のトレーニングアイテムを使います。

なければ、ビニールテープなどで地面に十字を作ればOK。計4カ所の線をまたいでジャンプしながら移動します。これが基本。ポイントはリズムに合わせてステップを踏むこと。そして、あまりヒザを曲げないように、できるだけ高くジャンプをすることです。空中で体位を変えるとき、バランスを崩さないように注意しましょう」。

●クロスステップ

アジリティクロスの線をまたいで両脚を揃えたまま、ヒザを曲げないように意識して高くジャンプ。ジャンプしながら、素早く体の向きを90°転換し、線をまたいで着地する。同じ要領で90°ずつ体位を変え、リズムに合わせて動き止めることなく行う。時計回りで1分間、反時計回りで1分間。

リズムの目安だが、初めは150bpm(1分間あたりに刻む拍数の単位)くらいからスタートし、慣れてきたら180bpmくらいまで上げてみよう。無料でダウンロードできるbpm計測アプリも多数あるので活用するといい。

とにかくリズムに合わせて遅れないように、4分割されたスペースを時計回り・反時計回りに移動していく。

「最初は両脚を揃えて、慣れてきたら時計回りだけでなく、前後・斜めに移動したり、脚をクロスさせたりと、脚の動きにバリエーションをつければ、トレーニング効率はより高くなります。頭の体操にもなりますね。ちなみにA選手はこれを低酸素環境下で、220bpmのリズムで行っています。ここまでくるとかなり負荷が高くなるので心肺機能のアップにも効果的です」。

国内屈指のJリーガーが、そのポテンシャルをさらに引き出すことに成功したこのトレーンング。じつは年齢を重ねるにつれて衰える俊敏性を維持する上でも効果的だという。時短でできるフィジカル強化、ぜひ実践してみよう。

【取材協力】
ハイアルチ 吉祥寺スタジオ
住所:東京都武蔵野市吉祥寺東町1-17-18
電話番号:0422-22-7885
営業:10:00~22:00(平日)、10:00~19:00(土・日・祝)
http://high-alti.jp/

空間をまるごと低酸素状態にしたスタジオで行う「ハイアルチテュード(高地)トレーニング」を、気軽かつ、リーズナブルに体験できる日本初のハイアルチテュード専門スタジオ。専門トレーナー指導のもとでのトレーニングなので、安全に効率よく鍛えられる。都内では、吉祥寺のほかに、三軒茶屋、代々木上原にスタジオを構える。

【Other Training Menu】
低酸素スクワット/低酸素プッシュアップ/低酸素シットアップ/バーピー/スプリットランジ/スケーティングジャンプ/歩き方/ランニングマシン/100mダッシュ/メンテナンス/胸郭の回旋トレーニング/ジャンプ/コモドドラゴン/フォアフット走法

楠田圭子=取材・文 渡邊明音=写真