「昔、僕が見た映画の男たちは傘を差さなかった」。

キャプテンサンシャインのデザイナー、児島晋輔さんは、そのスタイルを今に蘇らせようとする。

その真意を聞いてみた。

 


歴史が教えてくれる、幸福の「傘不要論」!?

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「キャプテンサンシャイン × ゴールドウイン」のレインコート
リップストップのポリエステルシェルのハーフコート。ボリューム感のあるAラインは、キャプテンサンシャインでは頻出する定番のシルエット。国産アウトドアブランドの雄の力を借りて完成した一着だ。そして、ゴールドウインのインラインで展開される同カラーのゴアテックスのキャップを被れば、傘不要スタイルの完成。

「正直、雨が嫌いなんですよ」。

ゴールドウインとのコラボ第2弾として出来上がったコートを前にして、児島さんはそうつぶやく。

「というか、傘を差すのが嫌なんです。持ってるだけでも煩わしいし、電車に乗ったり人混みを歩いたりするにも、傘ってとにかくストレスになりますよね」。

とはいえ、不意の悪天候はやはり避けられない。そこで児島さんにヒントをくれたのが、自身のルーツでもあるクラシックな男性像だった。

見た目よし・機能よしのレインコート。とにかく「傘が嫌い」な人へ
「君の瞳に乾杯」の台詞が有名な『カサブランカ』でのハンフリー・ボガート。アクアスキュータムのコートにボルサリーノという、ジェンツのお手本的装い。 © AP/AFLO

「古い洋画はいつもインスピレーション源になっています。

昔の紳士は外ではいつもハットを被って、トレンチやバルカラーのコートを着ていたりする。それは雨の日でも変わらず。

マーロン・ブランド、ポール・ニューマンなどもその印象が強く、ハンフリー・ボガートの映画『カサブランカ』には豪雨のシーンがありました。自分が好きなそういう時代のスタイルに、今の技術を取り入れてみようと思ったんです」。

そんな発想から生まれたのが、このコートというワケだ。

「僕も雨の日にはレインハットを被ることが多いので、フードはなし。

それでも首から風が入ると寒いときもあるので、チンストラップ付きのスタンドカラーを選びました」。

機能面については、ゴアテックス プロを使った第1弾とは異なり、今回は裏地を用いず透湿性を高めた2層構造のゴアテックス パックライトを選んでいる。

「春夏なので、軽さにこだわったのがその理由。畳んで持ち運べて気軽に羽織れ、雨がやんだら水をパッと払ってまた畳める。街着にも旅にも、こういうレインウェアがあると便利ですよね」。

もちろん、その知恵は日常生活にも活きてくる。

足さばきを良くするために着丈は短く、手ぶらで行動できるよう、フロントには大容量のポケットを装備。

銀幕のダンディズムに倣って、コートと帽子で雨避けを。“水も滴るいい男”なんて昔の褒め言葉があるが、現代に置き換えてみてもなるほど、一理ある。このコートは、なんだかそんな気持ちにさせてくれる。

見た目よし・機能よしのレインコート。とにかく「傘が嫌い」な人へ

「キャプテンサンシャイン」デザイナー
児島晋輔さん Age 44
1976年、兵庫県出身。ファッション誌の編集者を経て服作りをスタートし、2013年にキャプテンサンシャインを設立。
古着にも精通していて、モダンクラシックなスタイルがお家芸。

 

山本雄生=写真 松平浩市=スタイリング 今野 壘=文