危険薬物の深刻な問題が、また浮き彫りになった。 大麻に似た成分を含む「大麻グミ」を食べた人の健康被害が全国で相次いでいる。
 県衛生薬務課によると、県内でも大麻グミを食べた未成年の男性1人が7月に救急搬送されていた。那覇市内の店舗でグミを購入し、食べて高揚感が出た後、数時間して路上へ倒れ込んだという。 大麻グミから検出された合成化合物HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)は、大麻の有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)と化学構造が似ており、健康被害や幻覚を生じさせる恐れがある。 法規制されているTHCと違って、HHCHは規制対象外で、「危険ドラッグ」に相当する状態だった。 相次ぐ健康被害を受け、厚生労働省は、HHCHを医薬品医療機器法に基づき指定薬物に指定した。 来月2日から規制対象になり所持や使用、流通が禁止される。
 ただ、規制強化のたびに成分の一部を変えた類似化合物の開発が後を絶たない。法の抜け穴を探す「いたちごっこ」の状態が続く。 厚労省は、HHCHに似た別の成分が新たに流通する可能性があるとして、類似の構造をまとめて禁止する「包括指定」も検討しているという。 危険薬物が放置されている状況は看過できない。健康被害が出たから指定する後手の対応ではなく、いたちごっこに終止符を打つ実効性のある対策を求めたい。■    ■ 沖縄麻薬取締支所と県は24日までに、大麻グミなどを扱う那覇市、宜野湾市、名護市にある計4店舗を立ち入り検査した。
 那覇市の国際通り沿いにある店では、検査直前まで若者らが入れ代わり立ち代わりに入店し、危険ドラッグを購入する様子も見られた。 那覇市消防局によると、昨年7月~今月20日までで危険ドラッグによる救急搬送は23件で、20~30代が多数占めるという。 大麻類似の成分を含む食品には、グミの他にもクッキーやチョコレートなど身近な菓子に加工されたものもあり、子どもが誤って口にする恐れもある。 認識の甘さやちょっとした好奇心から誰でも簡単に入手できる危険ドラッグは、「ゲートウエードラッグ」と呼ばれている。覚醒剤などさらに強い副作用や依存性のある違法薬物に手を出す入り口になりかねない。■    ■ 大麻取締法違反容疑の摘発件数を人口比で見ると、沖縄は全国最多が続く。
大半は10~20代の若者だ。 軽い気持ちで始める人がいる一方で、貧困や生きづらさから逃れるようにして薬物に手を出す人もいる。 ネット上には「大麻は安全」「合法だから大丈夫」などといった誤情報がまん延している。 関係機関が危機感を持ち、薬物の危険性や違法性について注意喚起しなければならない。それと同時に、薬物から若者たちを守る家庭、学校、地域の連携が求められる。