米空軍のCV22オスプレイが屋久島沖に墜落したことを受け、国会では与野党双方から、政府の対応を疑問視する声が相次いだ。 防衛省の宮沢博行副大臣は29日、記者団に事故を「不時着水」と説明。
その根拠を問われ、「米側の説明ではパイロットは最後まで(操縦を)頑張っていたということですから」と答えた。 目撃者の証言はいずれも衝撃的な内容で、コントロールを失わずに飛行士の意思で着水する「不時着水」を示唆するようなものではなかった。 主体的な判断を欠いた米軍の使い走りのような対応はお粗末というほかない。 これにはさすがに与党議員からも疑問の声が上がった。 翌30日、木原稔防衛相は参院外交防衛委員会で「不時着水」という言い方を「墜落」に改めた。 説明を変更したのは米側が「墜落」と言ってきたからである。
 政府が、米軍に安全性が確認されるまでオスプレイの飛行を控えるよう要請したのは事故から半日余り後の30日午前8時ごろという。 だが、普天間飛行場や嘉手納基地では同日午後までオスプレイの飛行が確認されている。 今回の事故は、南西諸島の軍事化と日米一体化が進むその最中に起きた事故だった。 浮かび上がったのは、米軍に対する腰が引けた対応だ。安全保障の名の下に進められる軍事化によって、そこに住む人々の日常が脅かされ続けていることを忘れてはならない。■    ■ 2004年8月、沖縄国際大学への米軍CH53ヘリの墜落事故。
16年12月、名護市安部海岸へのオスプレイ墜落事故。 いずれも民間地域で発生した事故だった。だが、米軍によって規制線が敷かれ、警察も消防も必要な捜査ができなかった。米軍は地位協定合意議事録によってさまざまな形で守られていたのである。 その後、日米の話し合いで一部改善が図られたが、米軍優位の基本的な構図は変わっていない。 事故のたびに問題になるのは、原因究明・再発防止というプロセスがおざなりになっていることだ。
 原因が明らかになる前に「点検の結果、異常は見つからなかった」として訓練が再開されるケースが目立つ。 政府は安全が確認されるまでの飛行停止を要請した。この表現はくせ者だ。原因究明を待たずに訓練が再開される恐れがある。■    ■ 米軍だけではない。自衛隊もそうだ。
 宮古島付近で4月6日に発生した陸自のヘリ事故では、UH60JAヘリに乗っていた幹部ら10人が死亡した。 陸自は、事故調査の報告期限(4カ月以内)が過ぎても調査結果をまとめることができなかった。だが、点検の結果、異常が見つからなかったとして飛行を再開した。 政府の主体的な関与や実効性のある不安解消策など、これまでに浮上したさまざまな問題をこの際、全面的に洗い直す必要がある。