「あなたの親戚が被災して、救援を求めてヘリをチャーターしました。費用を代わりに支払ってください」「5億5千万円が当せんしました。
受け取りにお金が必要なので送金してください」ー。人間の不安や欲望をあおる特殊詐欺が、沖縄県内で急増している。2023年は被害額が2億円に達し、件数も前年の3倍超と突出した。「自分がだまされるはずはない」と思っていても被害に遭ってしまう原因とは?犯罪心理学に詳しい泊真児・琉球大学教授に聞いた。
■被害件数は15件→48件に
 沖縄県警によると、2023年の特殊詐欺の被害は48件で総額は約2億円。2018~22年は15~25件、被害額は約2000万~9270万円で推移したのと比べると、23年は近年になく被害が多い年となった。
2024年もすでに5件、計約4800万円の被害が出ている。周囲に相談しなかったり、被害届を出さなかったりする人もいて「実際の被害者はもっと多いのではないか」と推察する。
■「自分は大丈夫」なはずが不意打ちに
 そもそも、人はなぜだまされるのか。泊教授が挙げたのは、誰しもが「正常性バイアス」を持っているからだ。「自分だけは大丈夫」「詐欺に遭うはずはない」と思って、心の平常を保とうとする心理を指す。このバイアスのせいで、急に電話がかかってきたり、ショートメッセージやダイレクトメールが届いたりといった「不意打ち」を食らうと、相手を疑うという気持ちが働きにくくなるという。

 人間は不意打ちを食らうと無防備になり、相手の言うことをうのみにしやすくなる。そこで「今すぐ金を振り込まないと逮捕される」「裁判になる」と恐怖心をあおられると、しばしばパニック状態に陥る。その状態で「今、手続きすれば間に合う」などと解決策を提示されると、「この人の言うことを聞けばきっと助かる」「早く解決したい」とすがる気持ちから、だまされてしまうのだという。
■「甘い話」にもわなが
「甘い話」も同様だ。「高配当は確実です」などと金融商品の魅力を吹聴されると、「得したい」という欲望があおられ、心のハードルが下がる。その状態で「絶対にもうかります」「チャンスは今回限り。
先着順で締め切ります」などと畳みかけられると、多くの人が「早く大きな利益を得たい」という気持ちから、つい支払ってしまう。
「私は大丈夫」は危険! 急増する特殊詐欺の被害者心理とは? ...の画像はこちら >>