国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ最南部のラファへの攻撃を即時停止するよう命じた。
 ICJは、国家間の紛争を解決する手段として設立された国連の主要機関の一つ。
ICJが下した暫定措置命令(仮処分)には法的な拘束力があり、関係国はそれに従う義務がある。
 イスラエルは命令に従って直ちに攻撃を全面停止し、交渉の席に着くべきだ。独善的な態度を改めなければ、孤立を深めるだけである。
 仮処分に至るいきさつはこうである。
 ガザ大規模攻撃はジェノサイド(民族大量虐殺)条約違反に当たるとして、昨年12月、南アフリカがICJに提訴した。
 ICJは今年1月、ジェノサイドを防ぐ「あらゆる措置」を取るよう命じたが、イスラエル軍の攻撃はやまず、民間人の犠牲は増える一方だ。

 南アフリカは今月10日、改めてラファへの攻撃停止と撤退の仮処分を申請した。
 ICJが攻撃停止の命令に踏み込んだのは今回が初めてである。
 イスラエル軍は攻撃停止命令が出た後も、それを無視するかのようにラファを含むガザ各地への空爆や砲撃を続けた。
 ガザ保健当局によると、戦闘開始後のガザ側死者は3万5903人に達する。
 ガザへの物資搬入が制限されているため、人道危機は深刻化しており、餓死者が出るほどだという。
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 イスラエル側は「人質を奪還し、国民の安全を確保する義務がある」(ガンツ前国防相)との姿勢を変えていない。

 だが、ガザの悲惨な実情が伝われば伝わるほど、イスラエルの独善的な姿勢に対する国際社会の批判は、高まる一方だ。米国の大学で広がっている抗議行動は、その象徴的な例である。
 国際刑事裁判所(ICC)にも新たな動きがあった。
 ガザ情勢を巡る戦争犯罪と人道に対する罪の疑いで、イスラエルのネタニヤフ首相、ガラント国防相と、イスラム組織ハマスの指導者ら3人に逮捕状を請求した。
 ICCは人道に対する罪や戦争犯罪を犯した個人を訴追するための国際刑事裁判機関で、国家間の争いを扱うICJと違って国連機関ではない。
 注目したいのは、ICJとICCが、それぞれの立場で、イスラエルの軍事侵攻に厳しい評価を下していることだ。

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 ガザの実情は毎日のようにSNS(交流サイト)で発信され、テレビや新聞で取り上げられ、戦場での残虐行為や市民殺害が可視化されるようになった。
 戦争犯罪の疑いのある市民殺害に対して、人権を重視する立場から厳しい目が向けられるようになったのだ。
 戦闘員ではない、武器を持たない市民を、武力攻撃や戦争犯罪からどのようにして守っていくか。
 戦闘を即時停止し、停戦交渉を始める以外に、それに対する答えはない。