「平和国家」が音を立てて崩れていく。そう思わせる戦後日本の安全保障政策の大転換だ。

 政府は防衛装備品の輸出を定めたルール「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定し、殺傷能力のある武器輸出の解禁へ舵(かじ)を切った。
 これまでは、救難や警戒、掃海など戦闘行為に該当しない「5類型」に限って認めていたが、それを撤廃した。
 新たなルールでは、装備品を護衛艦やミサイルなどの「武器」と、防弾チョッキや警戒管制レーダーなどの「非武器」に分類。
 殺傷能力の高い武器も秘密保護などに関する防衛装備移転協定の締結を条件に輸出する。締結国は米英など17カ国に上る。
 現に戦闘が行われている国への輸出は原則不可とするものの、「特段の事情」がある場合は可能とする。時の政権の判断で例外を認める「抜け道」を残した格好だ。
 仮にイランと交戦中の米国への輸出が審査された場合、直ちには輸出を禁じないという。
 日本は戦後、平和国家の理念から、武器輸出を事実上禁じてきた。安倍政権下の2014年に政策転換して以降、段階的に緩和されたが、それでも非戦闘目的に限ってきた。
 そして今回、制限がなくなる。
 想像してみてほしい。
日本製の武器が、他国の人々を傷つけ、子どもの命を奪うことを。日本は紛争に加担することになり、日本ならではの平和貢献ができなくなる。
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 「歯止め策」の議論も尽くされていない。
 歴史的転換となるルール改定にもかかわらず、自民と維新の実務者協議は3回だけ。閣議と国家安全保障会議(NSC)で最終決定された。
 実際の武器輸出に関しても、首相らNSC4大臣会合で審査し、事後的に国会議員に通知する仕組みとなっている。
 共同通信社が先月実施した世論調査で、武器輸出を「認めるべきではない」は56%と半数を超え、「認めるべきだ」は36%だった。
 国論二分どころか、反対の強い政策である。
 国会での議論など国民の理解を得る手順が必要なのは当然だ。
 輸出ルールの法制化、国会が事前にチェック機能を発揮できる仕組みを作らなければならない。
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 外務省が05年に発表した「平和国家としての60年の歩み」は、国際紛争助長回避の項目でこう記している。
 「武器の供給源とならず、武器の売買で利益を得ない」
 武器輸出解禁は、結果的に紛争を助長し、地域の軍拡競争をあおる懸念がある。

 高市早苗首相は「平和国家の基本理念を堅持することに全く変わりはない」とXに投稿した。
 「全く変わりはない」というのは詭(き)弁(べん)でしかない。殺傷兵器の輸出は、平和国家の根幹を損なう。
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