第39回三島由紀夫賞に小説家、豊永浩平さん(23)の「はくしむるち」が決まった。
浦添市で育ち、中学の頃から読書に夢中になり「小高い丘をのぼればたどり着く浦添図書館で、ひたすら興味のままに本に触れていた」。
沖縄、そして文学の源流は、戦中・戦後を生き、米軍基地で働いたこともある「オジー」に、あるという。
本格的に創作活動を始めたのは、琉大人文社会学部に入学してから。中上健次さんの土地を題材にした作品に大きな影響を受けた。
仲宗根政善さんの「ひめゆりの塔をめぐる人々の手記」など沖縄戦の本を多く読んだ。卒論の作品は大江健三郎さんの「水死」。殉死という国家主義と個人の関係を描いた小説だ。
「はくしむるち」は、現代を生きる若者の日常と沖縄戦に動員された鉄血勤皇隊の物語を交錯させ、戦中・戦後の沖縄を貫く暴力を描き出した。
選考では、文学史の中でさまざまに描かれてきた沖縄を「一度白紙に戻しグラフィティ(落書き)のようなスタイルで新しく書いてみようという意欲作」と評価された。
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沖縄戦と27年間の米軍支配、信仰など文化の根っこにある土着性。
「沖縄は文学不毛の地か」をテーマに『新沖縄文学』が1966年創刊。翌年の大城立裕さんの「カクテル・パーティー」の芥川賞受賞で沖縄は歓喜に沸いた。
90年代に入ると、又吉栄喜さん、目取真俊さんに芥川賞受賞作が生まれた。従来の「沖縄」への接し方の枠組みを打ち破り、独自の表現、実験的な手法でその枠を広げていった。
「はくしむるち」に次のような印象的な言葉がある。〈まだ(なーら)白紙もどき(むるち)ぬ子ども(わらばー)たーやれー怪物ならんよう気(ち)い付(ち)きらんだれーならんさ!〉
沖縄戦、基地と隣接する日常、いじめや暴力をテーマに若い世代が身近に感じるサブカルチャーの要素を取り入れ、ウチナーヤマトグチを効果的に交えたスピード感ある文体が特徴だ。
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豊永さんは会見で「基地のフェンスという線だけでなく、心理的な硬直した線や壁をかく乱したかった」「沖縄という地に根ざした世界観を書いていきたい」と未来への希望を語った。
作家の大城貞俊さんは「少年少女の姿に沖縄の悲惨な歴史を託すだけでなく希望も見いだすところに、彼の文学の力が読み取れる」と評価する。
近年ラッパーのAwichさんや写真家石川竜一さんら若い世代が新たな地平を開いている。痛みの記憶に向き合い、希望の明かりをともす若い表現者たちの今後の活躍に期待したい。

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