事実ならば選挙の公正さを揺るがしかねない。自身の足元から湧いた疑惑であり、首相は正面から答えるべきだ。

 自民党総裁選や衆院選で高市早苗首相の陣営が、他候補を誹(ひ)謗(ぼう)中傷する動画を大量に投稿していたとの週刊文春による報道が波紋を広げている。
 国会では、動画を作成したとする男性と首相の公設第1秘書の接点について連日のように質問が出ている。
 高市首相は「(接点の)記録はない」「(男性と)会ったことはない」などと否定。秘書に確認した上でネガティブな情報発信は行っていないとし「秘書を信じる」と述べた。
 首相は当初、秘書は男性と「面識がない」と説明していた。
 だが、男性は実名で顔を出し、オンライン上で何度もやりとりしたと証言。すると「お会いしたことはない」と表現ぶりを変えた経緯がある。首相の説明はあいまいで説得力が乏しい。
 4日の衆院予算委員会でも中道改革連合の伊佐進一氏が、男性と秘書の会話とされる音声が新たに同誌のサイトで有料公開されたとし秘書の声かどうかの確認を求めた。
 これに対して首相は国会対応など多忙を理由に「音声は確認していない」と答弁を避けた。
 しかし、事前通告で音声の確認を求めた上での質問だ。伊佐氏は音声は2分程度でこの場でも確認できるとしたが、それでも首相は応じようとしなかった。
不誠実極まりない。
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 秘書と男性がやりとりしていたかどうかは問題の核心部分だ。
 それにもかかわらず首相は、週刊誌のサイトの有料会員でなければ音声が聞けないとして「私の知らない方の言い分ばかりをセンセーショナルに報道してきた、そこの有料会員になれということであれば、それはできません」と拒否したのである。
 自身に不利な報道を避けているとしか見えない。
 昨秋の総裁選では小泉進次郎防衛相や林芳正総務相を「無能」などとする動画が作成されたほか、今年2月の衆院選では枝野幸男氏、岡田克也氏、馬淵澄夫氏など中道の候補者を中傷する動画が集中的に流されたという。
 衆院選で中道は大敗を喫した。有権者の投票判断に影響したとすれば、選挙結果の正当性にも疑問を抱かせる由々しき事態だ。
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 選挙中のSNS上での偽情報の氾濫は深刻な問題だ。
 一昨年の兵庫県知事選では複数のデマが拡散され、選挙結果を左右するまでに激化した。
 来春の統一地方選を前に現在、与野党が選挙中のSNS規制を巡り今国会での法整備を検討中だ。
 そうした中で行政の長である首相が身内に甘いとなれば国民に対しても示しがつかない。
 公の場で秘書に説明させるなど首相は、疑惑払拭へ積極的に説明責任を果たすべきだ。
 
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