老後に備えてお金を貯めることは大切だ。だが、貯め込むこと自体が目的になったとき、人はかえって幸せを逃してしまうのかもしれない。
退職金2000万円を残したまま、病で旅行も食べ歩きもできなくなった男性。十分な資産がありながら、節約を優先しすぎた結果、家族との関係まで遠のいた夫婦――。老後不安に駆られすぎるあまり、「使うべきときに使えない」人たちの後悔から、幸福度を最大化するお金の使い方を考える

お金を貯めたことを後悔する人も…

退職金2000万円を残してがん宣告…貯め込んだことを激しく後...の画像はこちら >>
50代から好きなことに散財する――。これは誰にでもできることではない。実際には役職定年で収入が下がり始め、老後生活への不安が高まる人のほうが多いだろう。

しかし、お金を貯めることが確実に幸せに繫がるとは限らないのも、また事実だ。山陰地方で某メーカーに勤務する吉川宏伸さん(仮名・63歳)は「地道に貯めてきたことを後悔している」と話す。

「60歳で定年退職して、2000万円の退職金をもらい、同じ会社で再雇用してもらったのですが、61歳のときにステージⅢの胃がんが見つかったのです。転移も見つかって胃と十二指腸を取る手術をしたのですが、予後があまりよくなく、担当医からは『あまり期待しないでください』と言われています。

がんの状況から見ると、5年生存率は30%ほどのようで……。住宅ローンは完済しており、退職金の2000万円は老後に旅行を楽しむためにとっておいたのに、もはや旅行ができる体調じゃないし、好きな食べ歩きもできない」

お金を使わなかったことで不幸な状態に陥るケース

吉川さんには妻も娘もいる。遺産を残せることには満足しているようだが、「もっと自分のために使ってもよかった」という後悔があるようだ。

このようにお金を貯め込みすぎて後悔する高齢者は少なくない。行政書士でFPでもある松尾拓也氏が話す。


「相談者のなかに65歳時点で9000万円のお金を持ち、暮らしていくには十分な年金をもらっていたご夫婦がいたのですが、80代で2人とも亡くなったあと、子供の間で相続争いが勃発して最終的に絶縁してしまったというケースがあります。

また、別の70代夫婦は節約生活で5000万円以上のお金を貯めていましたが、節約志向が強すぎてリフォームをほとんどせずに築50年の古家に住んでいました。その家のトイレは異臭を放ち、お風呂はカビだらけ、キッチンは油まみれだった。その影響で、孫が寄りつかなくなり、寂しい老後生活を送っていました。

どちらも『貯めすぎて後悔している』とは言っていませんでしたが、お金を使わなかったことで不幸な状態に陥ったのは確かです」

退職金2000万円を残してがん宣告…貯め込んだことを激しく後悔する63歳男性が語る“老後不安”の罠
50代からの[幸せ散財]革命


お金を貯めすぎて不幸になる高齢者の特徴は…

退職金2000万円を残してがん宣告…貯め込んだことを激しく後悔する63歳男性が語る“老後不安”の罠
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お金を貯めすぎて不幸になる高齢者には特徴がある。

「お金を貯めることが目的化しているんです。自分や家族、家に投資するという発想がないので、自分や家族がやりたいことにお金を使わず、幸福度が上がらない」

幸福度を最大化するために

背景には過剰なまでに老後不安が喧伝されてきた影響があると松尾氏は話す。

「長く生きれば、確かに多くのお金が必要になります。しかし、実際には70、80代になると体が衰え、外出機会は減って、自然と生活コストは下がっていく。誰もが年を取るほどお金を“使えなくなる”んです。それに考えが及んでいないために、過剰に貯め込んでしまう人が少なくない」
 
65歳以降、体が衰えていった場合に、本当に必要な生活コストはいくらなのか? 50代のうちから試算して、適度に貯めて好きなことにお金を使うことが、幸福度を最大化することに繫がるのだ。

※2026年6月2日・9日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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