8月5日に開幕する第108回全国高等学校野球選手権大会。今年も全国49代表が甲子園に集結し、日本一を懸けた熱戦が始まる。

だが、今大会は優勝候補同士の横浜と沖縄尚学が1回戦で激突するなど、例年以上に先の読めない組み合わせとなった。はたして、深紅の大優勝旗を手にするのはどの高校なのか。高校野球を知り尽くした5人の識者に、優勝校を大胆予想してもらった。

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戸田道男氏(編集者&ライター)

優勝予想:関東一

 横浜(神奈川)対沖縄尚学が初戦で当たる超ビッグカードの実現には度肝を抜かれた。前年の春の選抜優勝校と夏の選手権優勝校の初戦激突は、昨年の健大高崎(群馬)と京都国際に続いて2年連続というのがびっくり。ここ2年続けて夏の甲子園はまことにもったいないくじ運に恵まれているというか、見舞われているというか......。

 恒例の優勝校予想を......という編集部からの依頼ではあるが、こういう場合、このビッグカードの両者をまず候補から外してしまうのが無難。勝ったほうが当然、力強くその先の道を突き進むとしても、予想はこの両雄以外の有力チームに託したい。

 というわけで、横浜、沖縄尚学を外して......となると、オーソドックスなところに落ち着いたようにも思えるが、関東一を推したい。

 関東一(東東京)は一昨年準優勝、昨年ベスト8に続いて3年連続で夏の甲子園にやってきた。東東京から3年連続出場は荒木大輔のいた早稲田実以来のことだというが、今夏の東東京での関東一の勝ちっぷりは頭一つも二つも抜けていた。エース左腕・石井翔、2年生右腕・高橋友翔の二枚看板を中心に投手陣は盤石。

田沢心、井口瑛太らが軸の打線も硬軟取り混ぜた自在の攻めを見せてスキがない。

 問題は、関東一の組み合わせ抽選結果も、かなりのイバラの道になったこと。初戦の相手は選抜8強入りし、優勝校・大阪桐蔭に惜敗した難敵の英明(香川)。なんとか倒したとしても、同じブロックにはドラフト候補の二刀流・平田玲翔(れいと)を擁する大分商や、投打にタレントぞろいの花巻東(岩手)などが入った。その先には、当然、横浜と沖縄尚学の勝者や神村学園(鹿児島)、智辯和歌山あたりも待ち構える。しかし、1回戦から決勝まで6試合すべて厳しい戦いになったとしても、ここ2年の甲子園で積み重ねた経験値が最大の武器になると予想したい。

楊順行氏(ライター)

優勝予想:仙台育英

 157キロ右腕・織田翔希を筆頭にタレントの揃う横浜(神奈川)と、末吉良丞ら充実した投手陣で夏連覇に挑む沖縄尚学。この優勝候補が1回戦でいきなり激突する。過去の甲子園で、神奈川と沖縄の対戦は6勝6敗と五分だが、ここを突破したチームがどこまで勝ち進むかが最大の注目。ただし、大会6日目、1回戦最後の登場だから、ベスト8進出まで7日間で3試合を戦うことになり、日程面でやや厳しい。

 となると、気になるのは仙台育英(宮城)と神村学園(鹿児島)だ。仙台育英は宮城大会で59得点2失点と圧倒的な強さを見せた。

下級生中心の打線は切れ目がなく、須江航監督は「トーナメントで勝てる打線」と評価する。1回戦、それも開幕戦の登場だが、2回戦までは中6日と恵まれた。ただし、しんがり登場の相手・花咲徳栄(埼玉)も、選抜8強と手強い。

 神村学園は、選抜初戦で横浜を下した時のエース・龍頭汰樹が、鹿児島大会の準決勝、決勝を完封。速球が武器の2年生左腕・松永遥斗も台頭し、打線も5試合で50得点と活発だ。こちらも、勝てば2回戦まで中5日。昨夏こそ初戦敗退も、2023、2024年夏はベスト4に進んでおり、そろそろ頂点まで突き抜けてもいい。

 ほかに、東東京で史上2校目の夏3連覇を達成した関東一(東東京)も侮れない存在。

 ところで今年は、4年に一度のサッカーW杯イヤーだった。その夏の甲子園を振り返ると、かなりの頻度で、年表に太字で記されるような決着になっている。1998年の横浜高校の春夏連覇を皮切りにすれば、2006年は決勝引き分け再試合で早稲田実(西東京)、2010年は興南(沖縄)の春夏連覇、2018年は大阪桐蔭のやはり春夏連覇、2022年は仙台育英が東北勢初優勝。今回は選抜優勝の大阪桐蔭が出場しないため、連覇があるとすれば沖縄尚学の夏連覇だが......。

 その大阪桐蔭を含め、選抜ベスト4のチームがすべて夏に出場できなかったのは1994年以来。ちなみにこの年もW杯イヤーで、佐賀商が県勢初優勝を果たしているから、未優勝県の快進撃もあるか?

 ともあれ、優勝候補は仙台育英、神村学園、横浜(or沖縄尚学)、履正社(大阪)というところ。なかでも、1994年の佐賀商と同じ開幕試合を引いた仙台育英を一番手にする。

元永知宏氏(ライター)

優勝予想:沖縄尚学

 夏の甲子園を勝ち抜くために必要なのは、エース級の投手を複数揃えていること、DH制を効果的に使うこと、日替わりヒーローが生まれること。

 49代表校の戦力を比較すれば、大本命に挙げられるのは横浜(神奈川)だろう。157キロのストレートを投げる織田翔希はこれまで甲子園大会で10試合に登板して6勝1敗、防御率1.50。彼以外にもマウンドを任せられる投手が複数いるし、野手陣は勝負強く、攻守にスキがない。

 しかし、1回戦で対戦する沖縄尚学も主力選手の経験値では引けを取らない。2年生エースとして昨夏、チームを日本一に導いた末吉良丞と、沖縄大会で背番号1を背負った新垣有絃がいる。事実上の決勝戦と呼ばれるこのカードを制したチームが日本一に最も近づくことになる。

 関東一(東東京)と英明(香川)の一戦にも注目したい。春の選抜でベスト8に進出した英明はサウスポーの冨岡琥希、内野手も兼ねる松本倫史朗の2枚看板を擁する。

センバツ準々決勝で大阪桐蔭に3対4で惜敗したものの、1番打者の池田隼人、強肩捕手の4番・高田斗稀など、日本一を狙えるだけの戦力を備えている。

 2024年の準優勝校である関東一も優勝候補に挙げられる。東東京大会では圧倒的な強さを見せ(全6試合で72得点、6失点)、3連覇を果たした。不安な点を挙げるとすれば、僅差のゲームを経験していないこと。対照的に、香川大会決勝で難敵の高松商業に競り勝った英明がこの試合に勝利すれば勢いに乗るはずだ。

 また今大会は、花巻東(岩手)の萬谷堅心、花咲徳栄(埼玉)の黒川凌大、聖隷クリストファー(静岡)の高部陸など、好投手がたくさんいる。

 そのなかで気になる存在は、春の選抜で強打の横浜打線を6安打に抑え、完封勝利を挙げた神村学園(鹿児島)の龍頭汰樹だ。170センチ63キロと小柄ながら抜群のコントロールを誇り、ゴロもフライも自在に打たせることができる。鹿児島大会では21回3分の1を投げて、1点も許さなかった。九州対決となる初戦で東筑(福岡)を破れば、台風の目になる可能性は高い。

田尻賢誉氏(ライター)

優勝予想:花咲徳栄

 個人的な好みで言えば、 "推し"は関東一(東東京)。能力任せに思いきり投げ、力任せに打つチームが多いなか、しっかりした"野球"をやっている。

東東京大会決勝では左中間の浅いフライで三塁走者がタッチアップで生還する場面があったが、ほとんどのチームは三塁走者が不要なハーフウェイをしていただろう。派手なプレーをせず、きっちりやるから取りこぼしも少ない。

 だが、今大会はあえて別のカラーのチームを優勝候補に挙げたい。それは、花咲徳栄(埼玉)だ。今年のチームを象徴するのが1番を打つ岩井虹太郎。岩井隆監督の次男だ。わかりやすく気分がプレーに表れるのが特徴で、第1打席で打つと固め打ち、そうでなければ沈黙ということが多い。また、プレーに喜怒哀楽が出やすいのも特徴。

 埼玉大会決勝では、一死二塁で右翼線にヒット性の当たりを放つも、相手のポジショニングに阻まれライトライナー。二塁走者が飛び出して併殺になると、その場にへたり込んでしまった。そんな"気分屋"の岩井だが、誰よりも声を出し、誰よりもユニフォームを泥だらけにする。勝利への執念は間違いなくチーム一だ。

 今年の花咲徳栄は岩井の性格そのままのようなチーム。いい時はいいが、ダメな時はダメ。浮き沈みが激しく、まるでジェットコースターのようだ。秋の関東大会(対法政二)で0対9からひっくり返す奇跡の大逆転をしたかと思えば、選抜では準々決勝の智辯学園(奈良)戦で8対0からひっくり返されるまさかの大逆転負けを喫した。

 春の大会でも、埼玉大会で浦和学院に1イニング5失点と4失点を一度ずつ。関東大会でも専大松戸に1イニング5失点と、とにかくビッグイニングをつくられることが多い。この悪癖さえ顔を出さなければ、岩井監督が下級生時から手塩にかけて育てたエース・黒川凌大、チーム一の好打者・笹崎昌久、強肩強打の捕手・佐伯真聡を中心に戦力は整っている。

 何よりも、岩井監督が虹太郎と過ごす最後の夏。選抜の東洋大姫路(兵庫)戦、1点ビハインドの8回表一死満塁で息子に打順が回ってきた時には「打たなきゃ地獄、打ったら天国」と笑っていたが(結果は死球で押し出し)、岩井親子がどんな顔で大会を終えるのか。初戦敗退もあれば、優勝もある"徳栄ジェットコースター野球"に注目したい。

 と、ここまで書いたところで組み合わせ抽選の結果は初戦の相手が唯一決まらない49番目の登場となった。このクジを引いた学校は6大会連続初戦敗退中で、通算成績も勝率2割5分に満たない。昨年も優勝候補の一角に挙げられていた神村学園(鹿児島)が敗れている。浮き沈みの激しい花咲徳栄は、はたして負のデータを破ることができるのか----。

菊地高弘氏(ライター)

優勝予想:享栄

 今夏は甲子園出場を信じて疑わなかった強豪が地方大会で敗れるなど、波乱の展開が続いている。夏の甲子園も、思いがけない高校が優勝する可能性は十分にありそうだ。

 昨夏にエース・高部陸の存在を理由に聖隷クリストファー(静岡)を優勝予想に挙げさせてもらった(結果は2回戦敗退)。18.44メートルが短く感じる好球質のストレートと、えぐるようなカットボールを初めて見た時には衝撃を受けた。

 今夏も聖隷クリストファーを優勝予想に挙げようと考えたが、研究される今夏は頂点まで駆け上がるのは至難の業と判断した。

 そこで優勝予想に推したいのは享栄(愛知)。31年ぶりの夏の甲子園出場とはいえ、大藤敏行監督の就任以降、戦力は整っていた。

 東海中央ボーイズ時代から将来を嘱望された投打二刀流の大器・坂本亮太が注目されるが、実質的なエースは変則右腕の上江瀧拓未。右横手から、シュートしながら浮き上がる軌道のストレートと、人を食ったような緩い変化球を武器にする。この投手の実力と不思議な雰囲気からは、大仕事をやってのけそうな予感がする。

 かつて大藤監督から体重増加を厳命されながら、期限までに体重を増やすことができず、水を数リットル飲むことで偽装工作を図ったという逸話が残る。大藤監督の「マウンドで遊べ」という言葉で覚醒し、緩急を生かした投球術を確立した。甲子園球場という巨大な「遊び場」で上江瀧がどんな投球を見せてくれるのか楽しみでならない。

 ほかにも坂本、近藤優などハイレベルな投手が揃うのは心強い。初戦となる2回戦の履正社(大阪)戦さえ乗りきれれば、勢いに乗るだろう。

 選手たちはただ技術があるだけでなく、ベンチ外の3年生や後輩たちに思いを馳せる人格者が揃っていると聞く。もちろん、人間性が優れているからといって勝てる世界ではないが、人知を超えた神風を呼び込むのは、いつも「応援される選手」である。

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