トータル・ファッション・アドバイザー、昭和の名力士、パリコレNo.1モデル、世界一クリエイティブな大型犬…。ロバート・秋山竜次は、その確かな観察力と、自らの思いを具現化してくれるメイク・衣装などのスタッフとともに、あらゆるものに“なりきる”。
現代を代表するクリエイターに扮し、それぞれのフィールドでの仕事ぶりや人生について語るクリエイティブコンテンツ「クリエイターズ・ファイル」が、気づけば10年。このほど行われた取材会で、当の本人は「もう、ある程度の職業はやっちゃってます」と苦笑しながらも「(YouTubeの)再生回数とか正直意識してないです。マイペースでとにかく面白さ優先でやってきました」とこれまでを振り返る。

 きょう8日からスタートする、ロバート秋山竜次 presents「10周年 クリエイターズ・ファイル 胸やけ大博覧会」in池袋は、秋山曰く「覚悟して来てくれないと、マジでしつこいので、キャベジン、ソルマック…、いや1回キャベツを胃に敷いてきた方がいいんじゃないかなというぐらい、10年分の思いが詰まったイベントです(笑)」。これまでのキャラクターがずらりと並んだ写真を見ると、すべて同一人物がやっているのかと思わされるくらい、どれも見事な出来栄えだが、どのように完成させているのだろうか。

 「例えば『犬になりたい』って思いついたとしたら、どうやって犬になるんだってわちゃわちゃし始めるんですよ。ホームセンターにあるものなどを組み合わせてやっていて、メイクさんや衣装さんの連携プレーが半端じゃない(笑)。みんなで、文化祭のように作っています。あとは写真を撮った時に、そういう風に見えそうなものが1枚でも撮れたらこっちのもんです(笑)。19歳の透明感がありすぎて見えなくなるという少女をやったことがあるんですけど、どう考えてもおっさんなんで、カメラマンさんには光の条件とかを駆使してもらって。そうすると、100枚に1回くらい、奇跡的に透明感があるやつが出てくるんですよね。これで『もういけた!』っていう感じです(笑)」

 幼少期から、目に見えるものから“妄想”をかきたてていた。
「人の細かい癖とか、口調とか、服装とか見るのが好きというか、よく見てましたね。学校の先生の感じを見て『理科の先生って大体ポロシャツ着てんな』とか。そんな法則が見えてきたりして。あと『あの先生、けっこう真面目なんだけど、駐車場にある車を覗いたりすると、意外と、車の中遊んでんな…』みたいな(笑)。そんなのばっか見てましたね。正直、嫌な少年でしょうね(笑)」。

 秋山の幼少期トークは止まらない。「ひとつのことで、なんか家庭が見えてきたりとか、あと、教頭先生の車を見たり。なんか教頭先生ってやっぱ教頭先生しか選ばない車を乗ってらっしゃって。セダンの白い…もう教頭先生だなっていう車に乗ってるんすよね。それ、小中高一貫してそうでしたね。正月にはけっこうフロントにしめ縄つける人が多かったですね。
校長になると振り切ってそれやらないんですよ。教頭はちょっと上に出世したいっていう、ピシッとしたいっていう思いがあるから、教頭先生を観察するのが一番面白かったですね(笑)」。

 無意識な部分に宿る“笑い”を見つける達人の秋山にとって、一般の人々との交流は大好物だ。「僕らは、面白いことしようって意識してやってるじゃないですか。そうではなくて、天然で面白い人には、勝てないですよね。やっぱり狙ってなんかしようって人じゃないんで、本当に笑っちゃうんですよね。だから、一般の方と絡むのはもう大好きですよね。何か狙ってないですけど、めちゃくちゃ面白い箇所を見つけたら、もう捕まえたくなっちゃう(笑)」。

 クリエイターズ・ファイルでの様子や、取材会での秋山の言葉を聞いていると、類まれな妄想力、確かな観察力を生かした“なりきり”、福岡県出身ということもあってか、どこかでタモリを彷彿とさせる。タモリといえば「4ヶ国語麻雀」や「ハナモゲラ語」などの“言葉”を駆使したものも有名だが、秋山も自身のラジオ(BAYFM『ロバート秋山の 俺のメモ帳! on tuesday』)にて、ハード・秋山・ファン(HAF)にしか理解できない「HAF信号」なるものを作り出し、リスナーとともに楽しんでいる。さらに、2014年放送のフジテレビ系『笑っていいとも!』グランドフィナーレにおいて、関根勤がタモリについて次のようなコメントを残していた。

 「『いいとも』スタッフとレギュラー全員で、タモさんの別荘でゴルフの大会をやったことがありました。
前の日、タモリさんの部屋で宴会をやっていたんです。タモリさんは白いガウンを着て、くつろいでいたんですね。Hさんというディレクターが、デリカシーがない方で、女子アナが『本当にデリカシーがない人なんです』って話をしていたら、タモさんがいつの間にか女子アナになって『本当に嫌よね』って(一緒になって話していた)。最初は違和感あったんですけど、30分続けていると、そのうちに女子アナに見えてきて、あれは見事だと思いました(笑)」

 クリエイターズ・ファイルの精神にもどこか通じる、こういった話などを総合すると、もしかすると「令和のタモリ」は秋山では、いや、んなぁーことはないと頭の中でぐるぐる考えていると、写真撮影の時間に。すると、秋山がおもむろにサングラスを着用した。「これは…」と思ったのもつかの間、秋山がうれしそうに言葉を紡いだ。「これは、スペースカジュアルクリエイターです。なんか、これからの将来で『宇宙に買い付け行ってきました!』みたいな人が出てきそうじゃないですか(笑)」。こちらの邪推などお構いなしに、秋山竜次はこれからも面白さ優先でキャラクターを生み出していく。
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