舞台は鎌倉の住宅地。焼杉張りの落ち着いた外壁が周囲に馴染む一方で、建物全体は平面が“くの字”を描く個性的なデザイン。玄関に足を踏み入れると、杉の香りが広がり、天井はルーバー状に設えられている。
LDKは約23畳の大空間。床には杉板、壁は土壁と漆喰、天井は構造材を現しにした自然素材尽くしの設計。3段階の高低差を持たせた床や、南北両側に設けた全開可能な引き戸が特徴的で、縦格子の網戸と障子戸も備えられ、風通しと光の取り入れに配慮されている。
キッチンやダイニングテーブルはすべて造作で、木材は丸太の状態で仕入れ、自ら製材したものを使用。食卓上にはプロジェクターを内蔵した木製の吊り箱があり、居間の漆喰壁に映像を直接投影できる仕様になっている。
2階には建主の仕事場でもある書斎や、家族で使える洗面室、木製の洗面台、ヒノキ張りの浴室が並び、浴槽には青森ヒバを使用。16畳の広々とした寝室は、子どもたちの成長にあわせて空間を仕切れるよう計画されており、現在は“棚”をベッドとして使っている。
竣工:2022年12月
敷地面積:171.7平方メートル(51.9坪)
建築面積:67.0平方メートル(20.3坪)
延床面積:114.3平方メートル(34.6坪)
構造:木造(伝統工法)
設計:吉能雅人/アトリエユイム