京都の真言宗寺院・醍醐寺で6日、奉納コンサート『OTOBUTAI』が開かれた。映画『国宝』で音楽を手掛けた原摩利彦氏が同公演のために書き下ろしたテーマ曲「Eclipses」を初披露した。


 『OTOBUTAI』は1989年に金閣寺で始まり、清水寺、平等院、東大寺など日本を代表する寺院などを舞台に紡がれてきた唯一無二の奉納コンサート。第38回を迎える今年は、1998年ぶり、2回目となる醍醐寺で開催された。

 「鼓動 ― The Beat of Life」をテーマに、「孤独」、「葛藤」、「別れ」、「兆し」、「夜明け」の5つの章で構成されたコンサートでは、バレエ、音楽、語りがひとつとなり、いのちのリズムを刻んだ。音楽監督を原氏が務め、岩井優花(バレエ)、ジュリアン・マッケイ(バレエ)、大貫妙子(歌手)、沖仁(フラメンコギター)、チェ・ハヨン(チェロ)、宮尾俊太郎(俳優)が出演した。

 夕暮れ時、虫の音、風の音が響き静けさに包まれた境内で、宮尾の語りから始まったコンサート。「孤独」の章で「Eclipses」が演奏された。沈みゆく太陽を見送るような寂しげな音色が響く中、天女の羽衣を思わせる衣装をまとった岩井が優雅に舞い、観客を魅了した。

 「葛藤」の章では、もの悲しげな雰囲気から一転し、沖がかき鳴らすフラメンコギターの激しい曲調のなか、マッケイが力強いダンスを披露。その頃にはすでに境内は暗闇に包まれていた。「別れの章」ではチェ・ハヨンが演奏する「瀕死の白鳥」を岩井が舞った。

 幻想的な光の演出を経て、物語は明るい雰囲気へと変化していく。「兆し」の章では、大貫が「3びきのくま」と「四季」の2曲を歌った。
しっとりとした歌声に観客は聞き入っていた。そこに山伏たちが錫杖を鳴らして舞台に現れ、物語は最終章へと向かっていった。

 「夜明け」では、原が音楽を担当した「映画『国宝』より組曲」が演奏。ラストには僧侶による法螺貝の音も加わり、再生を予感させる山の鼓動に、人と山、いのちと自然が呼応していく大団円のエンディングでOTOBUTAIは幕を閉じた。

 なお、コンサートの模様は、11月23日深夜0時30分からMBS/TBS系ネットで放送される。
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