俳優の黒木華、橋本淳と加藤拓也監督が7日、韓国で開催中の「第31回釜山国際映画祭」(10月6日~15日)で、映画『日曜のあと』(11月20日公開)のワールドプレミア上映に参加した。上映後のQ&Aでは、旅先で過ごす夫婦の距離感や、静かなやり取りの中で揺れ動く感情をどう演じたかを語った。


 本作は、『わたし達はおとな』『ほつれる』の加藤監督による長編3作目。子どもを授かり、人生の節目を迎えた麻衣(黒木)と洸一(橋本)が、言葉にできない思いを抱えたまま旅先で過ごす5日間を描く。映画祭では、昨年新設されたメインコンペティション部門に選出され、最優秀作品賞を含む5つの釜山アワードを巡り競うことになる。

 映画の殿堂内のハヌルヨン劇場で行われた上映では、満席の観客を前に黒木が「アンニョンハセヨ!黒木華イムニダ」と韓国語であいさつ。橋本も韓国語で続こうとしたが、途中で「ソーリー!」とメモを見直す一幕があり、会場に笑いが起こった。黒木は、韓国に着いてから「華さーん」と声をかけられることが多いとして「知ってもらえていることがすごくうれしい」と笑顔で話した。

 加藤監督は、本作を「麻衣がある出来事をじっと待っている5日間の話」と紹介。「待ち続ける麻衣の中に、不安な感情がじわじわと浸食していく様子に注目してほしい」と呼びかけた。橋本は、少ないせりふや沈黙の間に感じられるものについて、「自由に解釈して構わない」と観客に伝えた。

 上映後には、抑えたトーンの演技について質問が寄せられた。黒木は「事前にリハーサルを何度かして、演劇のように共通の意識を持った上で現場に臨めたので、不自由はなかった。細かなニュアンスを監督に調整してもらった」と振り返った。


 橋本は「表面は静かだが、水面下では感情が激しく動いている状態を意識した」と説明。加藤監督の演出について、「感情ではなく、そのシーンの状態を作る」とし、「表現ではなく、その役として生きてほしいと言われた」と明かした。難しさを感じながらも、そこが作品の魅力でもあったという。

 撮影は、愛媛県松山市のリゾートホテルで行われた。加藤監督は、舞台にリゾートを選んだ理由について、自然と人工の対比を作りたかったと説明。山の中にあるコンクリート造りのホテルには直線が多く、一歩外に出ると波や木などの不規則な形が広がることに触れた。また、「日常から隔離されても、強制的に一緒にいなければならない時間を作るため」とも語った。

 黒木は、そこで過ごす夫婦について「広い場所で一緒にいるのに心の距離が遠く、余った空間に押しつぶされそうだった」と表現。橋本も「あれが家だったら違う展開になっていた。リゾートだから起きてしまった数日間が映画の核でもある」と話した。

 曜日が変わるたびに流れる音楽に、怖さを感じたという観客からの質問も。加藤監督は「ホラーというより、主人公の心象が静かなところで高まっていくサスペンスのような雰囲気を意識した」と、演出の狙いを明かした。


 Q&Aの最後に、黒木は「一人ひとりに感想を聞きたい。時間を共にしてくれてありがとう」と観客に感謝。橋本も「ワールドプレミアというドキドキした空間で、皆さんと一緒にこの映画を観られて本当に幸せ」と喜びを伝え、加藤監督は「この映画を受け入れてもらえたらうれしい」と呼びかけた。

 6日のオープニングイベントでは、3人でレッドカーペットに登場。クリスチャン・ディオールの白いドレスを着た黒木には、観客から「華ちゃん、かわいい~!」と歓声が上がった。同映画祭初参加の黒木は「それほど緊張はしませんでした」と振り返り、レッドカーペットに初参加した橋本も「楽しかったです!」と笑顔。「華さん、華さんって呼ばれていて、僕が一番うれしくなりました」と語っていた。
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