本作は、『この夏の星を見る』(2025年)で「第17回TAMA映画賞」最優秀新進監督賞と「第39回高崎映画祭」新進監督グランプリを受賞した山元環が、監督・脚本を手がけたオリジナルホラー。自分が死ぬ様子を映したAI動画がスマホに届き、それを受け入れると動画と同じ最期を迎える。そんな怪異が、ある学校の生徒たちを襲う。
鏡を割ったユラは、自分でもなぜそんな行動に出たのか分からず、ぼう然とする。周囲の生徒たちが声をかけるより先に撮影を始める場面に続き、スマホの操作音に合わせて画面が次々と切り替わる。自慢の筋肉をカメラに見せる林流星(砂田将宏)、校則違反で教師の指導を受ける篠宮かおる(井手上漠)、見た目にこだわり、腹部に痩せ薬を注射するインフルエンサー・花井琴葉(平松想乃)、たばこを手放せない風見千明(坂巻有紗)。生徒たちの一癖ある日常が、短い動画をスワイプするように映し出される。
終盤では、学校の怪談を動画に収めている高月颯馬(萩原護)が、“咲かずの桜”を撮り始める。「木の下さん」と呼ばれる霊が宿るとうわさされるその木の下で、颯馬は不気味な音を耳にする。
山元監督は、恐怖が次々と押し寄せる本作のリズムを、TikTokで動画を見続ける感覚になぞらえる。「刺激が途切れないから、何度も何度もスクロールしてしまう」。恐怖や緊張が続くうちに、「『もっと、もっと』と求めてしまうような感覚」が生まれるといい、「脳に刺激が入り続けることで、お客さんにも最後の最後までハイな状態で楽しんでもらえるんじゃないか」と語っている。
『リング』ではビデオテープ、『着信アリ』では携帯電話が恐怖の入り口となった。山元監督がスマホを呪いの媒介に選んだ背景には、人と情報のつながり方の変化がある。かつてはレンタル店に足を運び、自分でビデオを選んでいた。携帯電話の赤外線通信でも、連絡先を交換する相手は目の前にいた。今のスマホについて、監督は「座っているだけで別の世界とつながり、連絡先を知らなくてもあらゆる手段で見知らぬ人とつながれてしまう」と話す。
「自分は何もしていないのに、情報が入ってきて、スマホの側から近づいてきて、勝手に動画が送られてきて殺される」。求めていない動画が自分の手元に届く怖さは、本人の意思に関係なく、撮られた姿が他人のスマホから広がっていく冒頭の場面にも通じる。監督いわく「ドーパミンがドバドバ出る102分間」。日常に入り込む怪異を、場面ごとに畳みかける。
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