※本稿は、マーク(村木幸司)『見るだけでわかる‼ 英語ピクト図鑑』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■英語の学び直しをする人が増えている
昨今のリスキリングブームで、英語を勉強し直そうという人が増えていると言います。実際、英検の受験者数も伸びていて、過去5年間で約15%増加している上に、社会人の受験者も増えているそうです。
たしかに、英語は学び直しに最適です。多くの日本人は中学、高校と英語を勉強しているので、基本的な英単語や文法の知識は持っています。基礎をある程度知っている状態からスタートできるので、まったく知識のない新たなことを1から習得するよりも始めやすく、時間や労力もかからないというメリットがあります。
そういう意味でも、リスキリングに英語はぴったりなのですが、せっかくやる気になった人の最大の敵となるのが「挫折」です。
実際、オンライン英会話サービス企業のBizmatesの調査によると、英語学習経験者の約9割が挫折を経験していて、そのうちの約8割が3カ月以内に挫折しているといいます。つまり、英語学習経験者の約7割が3カ月以内に挫折しているわけです。
私も30代前半で英語の学び直しを始めてから、TOEICで940点をとるまでは、とにかく毎日コツコツと勉強を続けました。もちろん、途中で「今日はやりたくないな」という日もありましたが、とにかく継続するためにさまざまな方法を試してきました。
そこで、本稿では私がこれまで実践してきた「英語学習で挫折しないための、誰にでもできるポイント」を紹介したいと思います。
■英語学習に挫折しないための「3つのポイント」
①小さく始める
まず1つめのポイントは、「小さく始める」ことです。目標を設定して計画を立てる時はやる気が高い状態なので、欲張った計画を立てがちです。しかし、最初は「どんなに忙しくてもこれくらいは余裕でできる」ぐらいの、ゆるい計画を立てましょう。
私はこれまで英語コーチとして何十人もの生徒を担当してきましたが、その多くがスタートダッシュを頑張りすぎて2カ月くらいで中だるみが訪れ、3カ月もたずにフェードアウトしてしまうのを見てきました。英語学習にスタートダッシュは不要です。スタート時こそ「物足りないくらい」でちょうどいいんです。
②ゼロの日をつくらない
仕事や家事、子育てなどに忙しい日々の生活の中で、時間をつくって英語学習に取り組むのは、体力的にも精神的にも大変なことです。時には体調がすぐれないことだってあるでしょう。
そんな状況で英語学習を継続するためには、「最低限でも“できた”と認める」ことが大事です。1日5分でも、1日1ページでもいいので、「これだけやれば継続できたことにする」という最低学習時間のマイルールを設けてみましょう。
まったくやらない日を1日でもつくってしまうと、2日サボり、1週間サボり……と、結果的に挫折してしまいます。どんなに忙しくても、どんなに疲れていてもできる量をマイルールとして設定しておきましょう。
③無駄なことをやらない
英語学習は、TOEICならTOEIC対策、英検なら英検に特化した対策をやるというように、その目標達成に必要なことだけに絞りましょう。努力したのに期待したような成果が出ないと、モチベーションが下がって心が折れてしまいます。これを防ぐため、目的達成にフォーカスした正しい努力をすることが大切です。
もちろん、試験ではなく会話力を向上させたいなら、英語の基礎知識を習得したあとにアウトプットしまくることです。会話は圧倒的な量をこなすことで成果が出ます。
この3つのポイントを意識して、長い目で英語学習に取り組んでいってください。
■スマホの言語設定で英語がもっと身近に
「何とか英語を話せるようになりたい」
そう思い立って英語学習を始めるのはすばらしいことです。でも、いざ英語学習を始めようと書店に行ってみると、無数の英語関連の書籍が並んでいます。英会話アプリもたくさんありますし、YouTubeでもさまざまなジャンルの学習法が紹介されています。
「いったい何から始めたらいいんだ……」と頭を抱える人も少なくないでしょう。
そんな人にまず取り組んでほしい、今すぐ英語に親しむ方法があります。それは、スマホやパソコンの言語設定を、「English」にすることです。
有料アプリに課金する必要も、書店で書籍を買う必要も、ましてや英語スクールに通う必要もありません。つまり、「今すぐできること」が目の前にあるんです。
言語設定をEnglishにすると、画面が英語ばかりで最初は戸惑うかもしれません。でも、毎日やっているアプリの操作やSNSの閲覧なら、だいたいのボタンの位置はわかっているので、それほど困ることはないはずです。
さすがに複雑な設定をする時は、日本語に戻したほうが安心ですが、普段使いのアプリはすべて英語で操作することをおすすめします。
■慣れたらパソコンの言語設定も英語に
私がこのスタイルにしたのは、海外出張時や駐在時に現地で支給されたスマホがデフォルトで英語設定だったことや、海外で現地のSIMを買った時に、お店の人に設定(アクティベート)してもらうために日本語モードのスマホを渡したら、困った顔で突き返されてしまったことがあったからです。
そのため、「もう言語設定は英語でいいや」と英語のままにしておきました。これがきっかけで、パソコンのOSも、GoogleなどのWebブラウザも、今はすべて英語の設定にしています。
誰にでもできる英語に親しむための第一歩なので、ぜひトライしてみてください。
ただし、いざという時に英語から日本語に戻せるように、言語設定の戻し方を把握しておく必要があります。英語設定にしたら、Setting→Language→Japaneseという戻す操作は確認しておきましょう。
■英会話レッスンでは「言えなかったこと」を「言えるように」する
最近では、オンライン英会話やAI会話アプリなどで会話を練習している人も多いと思います。そこで私が実践し、英語コーチとして生徒さんにもおすすめしている、英会話レッスンの活用方法をお伝えします。
英会話は、学んだことを次に活かすのが大切です。レッスンを受けたら必ず「復習」をしましょう。重要なのは、レッスン中に「言いたいのに言えなかった言葉やフレーズ」を日本語でメモしておくこと。レッスン後は「英語でどう言えばいいか」を調べて、「こう言えばよかったのか!」と納得できる状態にしましょう。
そのうえで、自分で文章をつくり、音読して、反復して、何も見なくてもパッと言えるようにしておきます。そして次回のレッスンで、その単語やフレーズを使うチャンスを自らつくるのです。
例えば冒頭のアイスブレイキングで雑談のように話してもいいですし、先生からの質問の答えに、ちょっと強引でもその単語やフレーズを使って答えてみてもいいでしょう。
実際のレッスンで1度でもアウトプットすると、その単語やフレーズが自分の言葉として定着します。学んだことは、すべて「自分事」として実際に使ってみることが大事です。
まずは1語だけでも、1フレーズだけでもいいので、自分の「言いたくて言えなかったこと」を言えるようにしてみてください。
今回は、今すぐ誰でもできる英語力アップの秘訣を紹介しました。これから学び直しを始める大人も、英語学習をしている学生さんも、ぜひ試してみてください。
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マーク(村木幸司)(むらき・こうじ)
英語コーチング協会認定コーチ
大手自動車メーカー勤務時代に、英会話教室でネイティブ講師に英語を習うも、ろくに会話もできず、TOEICは毎回300点台。しかし、英語の基本文法を学び直したところ英語学習に目覚める。TOEICのスコアも劇的に伸び、その英語力を活かして海外出張や海外駐在を経験。現在は脱サラして、英語コーチング協会認定コーチとして、基本英文法やTOEIC対策をオンラインで教えている。X(旧Twitter)でのピクトグラムを使った英語解説が話題になり、フォロワーは6万人以上。
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(英語コーチング協会認定コーチ マーク(村木幸司) 構成=岩佐陸生)