健康的に老化を防ぐには、どんな食事を心がけるべきか。内科医の工藤孝文さんは「50代以降の人は歯が悪い人が増えてくるが、パンやうどんなど軟らかいものばかり食べて噛まなくなると顔から老けていく。
毎食、しっかり噛んで、知らず知らずのうちに顎がしっかり鍛えられるメニューを選ぶことだ」という――。
※本稿は、工藤孝文『50代から気になる『老けない』やせ方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■50代からのダイエットの強い味方になる食材
太りやすい人には、やっぱりスイーツ好きの人が多いです。甘い物を食べると、脳内で“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが分泌されて気持ちが落ち着くため、ストレス解消のために甘い物をつい食べてしまうという人は少なくありません。
50代からのダイエットにストレスは禁物ですが、甘い物を毎日たくさん食べていたら、さすがにやせることはできません。甘い物は少しずつ食べる量や頻度を減らしていってほしいのですが、そんなとき、強い味方になるのが、高カカオチョコです。
ご存じの通り、カカオ成分が70%や80%のチョコレートで、その分、普通のチョコレートよりミルクや砂糖の割合が低くなっています。
普通のチョコレートに慣れている人からすると苦みが強く甘味が少ないので、最初はちょっと物足りなく感じるかもしれません。でも、カカオ成分が豊富なだけにチョコレートの味と香りは確かにするので、だんだんおいしく感じるようになってくるはずです。
ダイエットで甘い物を減らしていくとき、口さみしくなったら、高カカオチョコを1かけ食べて、気持ちを落ち着かせてください。
そして、高カカオチョコの素晴らしいところは、抗酸化作用が高いポリフェノールと食物繊維がたっぷり含まれていること。
ポリフェノールは血管の老化などを予防してくれるので、老けずにやせたい人にはもってこいの有効成分です。
食物繊維は血糖値の急上昇を防ぎ、腸内環境の改善に役立ちます。
特に、食前の15~30分ほど前に1かけ食べておくと、食事による血糖値の上昇をゆるやかにしてくれるので効果的です。
■老けずにやせるために必要な良質な油の種類
脂質のとりすぎが体に悪く、ダイエットの妨げになることは間違いありません。しかし、老けずにやせたいなら、良質の油をしっかりとることも重要。脂質を避け続けていると、年齢を重ねるごとに、体が血管から老け込み、体中の細胞を老化させてしまいます。
要は、体に良い油・悪い油を知って、できるだけ良い油を適切な量を摂取することが大切なのです。
脂質は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2つに分けられます。
飽和脂肪酸は肉類や乳製品、バターなど動物性食品に含まれる油です。とりすぎると肥満や血管の老化につながるので、控えめを心がけましょう。
一方、不飽和脂肪酸は、魚や植物性の食品に多く含まれる油で、オメガ3、オメガ6、オメガ9の3種類があります。
オメガ3は、アマニ油、エゴマ油、青魚に豊富なDHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)で、血管を若々しく保つ上で欠かせない油です。
オメガ6は、大豆油、サラダ油、コーン油などで、悪玉コレステロールを減らして血管を若々しく保つ効果がありますが、とりすぎにも注意が必要です。

オリーブオイルで有名なオメガ9にも、血中のコレステロールを適正に保つ働きがあります。
■脳を活性化し、記憶力を向上させる効果も
中でも、50代以上の人に積極的にとってほしいのが、オメガ3です。
オメガ3には、血流を改善したり、肌のターンオーバーを整えたりする効果があるので、不足するとシワやたるみの多い老けた体になってしまいます。
さらにオメガ3は、肌のバリア機能を改善し、敏感肌や乾燥肌を防ぎます。アマニ油を12週間とり続けたところ、皮膚の状態が良くなったという研究報告もあります。
その上、脳を活性化し、記憶力が向上したという結果も知られています。50代になると気になりはじめる認知症の予防にもなる、重要な油といえるでしょう。
オメガ3の摂取には青魚の刺身などが最適ですが、魚を食べられないときは、1日小さじ1杯のアマニ油やエゴマ油をとるようにしましょう。手軽ですし、上がりすぎた中性脂肪を下げる効果もあります。
オメガ3は熱に弱く酸化しやすいため、その点に注意しつつ、毎日の食事にとりいれるようにしてください。
たとえば、サラダを食べるときも、油は太るからとドレッシングをまったく使わないより、エゴマ油やアマニ油と塩こしょう、レモンなどで、適度に脂質をとったほうが、血管や皮膚の若さを保ちながら、健康的にやせられます。
■若々しい顔つきでスタイルの良い人の食事法
太り気味の人の中でも、特に忙しい人にありがちなのが、あまり噛まなくてもササッと食べられてしまうパンやうどんを食する頻度が高いこと。
しっかり咀嚼しなくても食べられる食事を好む人は、食べるのも早い人が多いです。
大前提として、早食いの人は太ります。しっかり噛んで食べないと満腹中枢が十分に刺激される前に1食分を食べ終えてしまうため、食欲が満たされず、追加で何かをプラスしたり、しばらくしてすぐにおやつを食べたりしてしまうのです。
特に、50代以降の人は歯が悪い人が増えてくるので、パンやうどんなど軟らかいものを好む傾向が上がってきます。
でも、50代以降の人こそ、できるだけ噛み応えのある食事を心がけるべきです。
何よりコワいのは、噛まなくなると、顔から老けていくこと。
咀嚼には顎の筋肉が使われているので、軟らかい食事ばかりしていると顔の筋肉が垂れ下がり、見るからに老けてしまいます。せっかく体重が落ちたのに、すっかり老け顔になってしまうでしょう。
そんな悲惨な状況に陥らないために、パンやうどんを選ぶ回数を極力減らし、ごはんや肉、野菜が豊富なメニューを選ぶようにしましょう。
毎食、しっかり噛んでいれば、知らず知らずのうちに顎がしっかり鍛えられるので、年齢を重ねても引き締まった若々しい顔つきでいられます。
もちろん、満腹中枢が刺激されて、無理しなくても食べる量が自然と減っていき、ダイエットにも成功しやすくなります。噛めば噛むほど唾液の分泌が増えるので、消化を助け、免疫力が上がるなど、健康維持の面でもいいことがたくさんあります。


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工藤 孝文(くどう・たかふみ)

内科医

工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。

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(内科医 工藤 孝文)
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