仕事相手から求められる人は何をしているか。営業コンサルタントの菊原智明さんは「今は比較サイトで最安値の商品を探せるし口コミサイトで評判が広がるから、『その場でガツガツ』の営業スタイルでは会社ごと先細っていく。
『ゆっくりジワジワ』の長期的思考の人だけが必要とされる」という――。
※本稿は、菊原智明『決定版 「稼げる営業」と「ダメ営業」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■力業でねじ込む営業は時代遅れ
稼げる営業はゆっくりジワジワ、

ダメ営業はその場でガツガツ。

営業活動をやっている中で悩みの一つに「お客様がなかなか決めてくれない」というものがあります。今、多くの営業から「今は選択肢も多くなり、慎重なお客様が増えたから、なかなか決まらない」という話を聞きます。
今までの営業活動では、その場で契約を決める、といったこともやり方次第では可能でした。
こういった「その場でガツガツ」といった営業スタイルでも結果が出せたのです。
しかし、最近はこういった力業でねじ込む営業では成果が出にくくなってきています。
今はスマホで検索すれば無限に候補が出てきます。値段比較サイトを使えば最安値の商品を数秒で簡単に探すことができるのです。
仮に運よくその場で上手く契約を取ったとしましょう。その後、他社より高いと分かればすぐにキャンセルされます。

さらには「この会社は強引なやり方で売りつけてくる。気をつけた方がいい」などと口コミサイトに書き込みされてしまいます。こうなれば新規のお客様は警戒し、寄りつかなくなります。こうして会社ごと先細って行くのです。
■長期的思考で結果を出す「営業レター」の効果
時代が変わった今、「ゆっくりジワジワ」の長期的思考で結果を出していくしかありません。この具体的な方法の1つとして私は多くの営業の方に「営業レター」をお伝えしています。
営業レターとは私が以前より推奨している営業手法で、お客様に役立つ情報を定期的に送り、じっくりジワジワと信頼関係を構築していくという戦略です。
手紙などのアナログツールでもいいですし、メールやSNSなどのデジタルツールを使って送ってもかまいません。
焦らずじっくりお客様と信頼関係を構築するのがポイントになります。
ゆっくりジワジワ関係を構築する、と聞くとどうしても「言っていることは分かるが、結果が出るまでに時間がかかるのでは困るし、そんな余裕はない」と感じるかもしれません。ですが意外にも、このような長期的思考で取り組んだ方が早く結果が出たりします。
普通の営業は早く結果を出したいと思い、
「残り2つとなりました、お急ぎください」

「今日の22時まで20%キャッシュバックキャンペーンを行っています」
といった情報を送ります。
こういった内容を受け取ったお客様は「あぁ、また売込みね」とうんざりします。情報が届くたびに信頼度が下がり、すぐに迷惑メール行きです。
■本当に役立つ情報を提供する
その一方、稼げる営業はお客様に対して「本当の意味で役立つ内容」を送り続けます。
・すでに購入した人からのアドバイス

・お得に購入するポイント

・商品の意外な使い方
などなど。これを見たお客様は「価値のある情報を送ってくれる人だ」と好印象を持つものです。
もしあなたが買う立場でしたら「購買をあおってくる内容を送ってくる営業」と「本当の意味で役立つ内容を送ってくれる営業」のどちらを選ぶでしょうか?
当然、後者の営業に声をかけたくなるはずです。
急がば回れ。「結果を早く出そう」とお客様をあおるのではなく、じっくりジワジワと時間をかけて本当に役立つ情報を提供しましょう。
営業新時代はこうした長期的思考の人だけが必要とされるのです。
「急がば回れ」の考え方で行動する!
■有益情報を手に入れる失敗後の質問
稼げる営業は良い反省をして、

ダメ営業は悪い反省をする。

少年野球の試合を見に行った時のことです。
監督は選手に向かって「失敗してクヨクヨ落ち込んで何もしないのが一番悪い。
同じ間違いを繰り返さないように練習するんだ」と言っていました。監督さんいわく、良い反省と悪い反省があると言います。いい反省とは失敗を糧にして技術を磨くこと、悪い反省は落ち込むだけで何もしないことです。
これは営業活動でも言えることです。
ダメ営業時代の私はお客様から断られるたびに、がっくり落ち込んでいました。
「次のお客様も見つからない、どうしよう」

「今月ゼロだったらクビだろうな……」
などなど。しばらくの間、ネガティブな思考に支配され、仕事が手につきませんでした。これは悪い反省と言えます。
もしこの時、次のように考えていたらどうでしょう?
「今回は見積を出すタイミングが悪かったな。次から少し変えてみよう」

「プランの合意ができていなかった。次回はもう少し深くヒアリングしよう」
このように失敗を次に活かせれば、良い反省になります。
またお客様に「どのような点がA社より劣っていたのでしょうか?」と質問することも大切です。
お客様から直接意見を聞くことで、さまざまな有益な情報が手に入るのです。
■「いい失敗」「悪い失敗」の捉え方
契約後のミスやトラブルについても同じです。
歳が近いお客様と商談し、契約になった時のことです。
契約後の打ち合わせを進めていく中で、諸経費が予想以上にかかることが分かってきました。これがもとでトラブルになったのです。
お客様「こんなに費用がかかるなんて思いませんでしたよ」
私「すみません。小暮さんのケースは特別でして、予想以上に費用がかかります」
お客様「そんなこと、今さら言われても困ります!」
さんざん時間をかけて何とか金額については納得してもらったのですが、お客様の私への怒りは収まりません。お客様は完全に怒って帰ってしまったのです。
私はこのことでひどく落ち込みました。しばらく他のお客様と商談したり、新規のお客様に接客する気にもなれません。失敗を引きずったために長期間にわたりスランプに陥ったのです。
この時もし「こういった勘違いをするお客様もいるのだから、次回から諸経費を説明する時は十分注意しよう」と考えていたらどうでしょうか。

気分を切り替え、次に失敗しないためのツールを作成したでしょう。
失敗して落ち込むだけでなく、次に活かさなくてはならないのです。
稼げる営業だって完璧ではなく、時にはミスを犯します。
しかし起こしてしまったことは反省し「今回はミスしたがこの程度ですんでよかった。次回からミスしないように資料を整備しよう」と前向きに捉えます。
ミスしたら、まずはお客様にキチンと謝罪をして問題解決に力を注いでください。
その後は、逆に「ミスしたことで重要な気づきを得られた」と前向きに捉えてほしいのです。
失敗した時、ミスした時は、悪い反省でなく良い反省をしましょう。
失敗したら「次回はどうする?」と自分に質問する!

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菊原 智明(きくはら・ともあき)

営業コンサルタント

営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。
群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。

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(営業コンサルタント 菊原 智明)
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