※本稿は、池田千恵『朝15分からできる! 週末アウトプット』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■アウトプットの練習として先生をやってみる
アウトプットにチャレンジしたいと思ったら、中途半端で自信がない状態でかまわないので、友人や知り合いなど小さい単位の集まりで発表してみましょう。
とはいえ、発表なんて人生で滅多にしたことがないという方が大半かもしれません。そんな方におすすめなのが、私が主宰するコミュニティ「朝キャリ」で行なっている「先生ごっこ(アウトプット)の会」です。
これは、「朝キャリ」のメンバーが先生となり、人よりちょっと知っていることを実際に教えてみて、自分の好きなことや得意なことを小さく試す場です。先生になるつもりがない人でも、アウトプットの練習として先生をやってみるのは有効です。いつか役に立つかもしれないと思って学ぶのと、「この学びを誰かに伝えよう」と思って学ぶのでは結果に雲泥の差が出ます。
いままでに、次のような講座が開かれました(一例)。
・接客のプロが教える初対面の人と上手にコミュニケーションを取るコツ
・子どもにお金のことをわかりやすく解説できるようになる新聞の読み方講座
・一歩踏み出したいけど踏み出せない方のための転職活動のヒント
新しいチャレンジが怖いのは、「そんなの無理だよ」「難しいに決まっている」といった、自分のことを大して知らない人の無遠慮なアドバイスに影響されるからです。また、ホンネを語ると「意識高い」と思われるという不安から、声に出せない場合もあるでしょう。「先生ごっこ」ならあくまでも「ごっこ」なので、誰にも文句は言わせません。のびのびとチャレンジできます。
また、先生ごっこを始めることで、「告知→集客→実行」をシミュレーションでき、実施したあとの反省点を今後に活かせます。
■講座のテーマと募集告知で大切なこと
実際にどのようにするかというと、「ごっこ」とはいえ、いきなりアウトプットするのはハードルが高いです。次のモジュールに分けて「先生ごっこ」の準備をしていきましょう。
モジュール①テーマを考える(30分)
モジュール②募集告知文のテンプレートを埋める(1時間)
モジュール③40分話せる構成を考える(半日)
モジュール④録画してリハーサルをしてみる(1時間)
モジュール①テーマを考える
アウトプットすることが目的なので、テーマは何でもいいのです。とはいえ、予備知識や経験が全くないことを40分も話せないので、過去を振り返り、次のようなことを思い出してみましょう。
・3年以上続けられていること
・「○○しか能がない」と思っていること
・「こうだったらいいのに!」「私だったらうまくできるのに!」と、もどかしいこと
3年以上続けていることがなかなか思い浮かばなければ1年でもいいです。ほかの人を見てもどかしい!」と思い、ついやっちゃうようなことや、「ちょっとひと言言いたい」ということを思い出してみてください。
モジュール②募集告知文のテンプレートを埋める
「先生ごっこの会」に立候補するためには、募集告知文として5つの項目を書いてもらう必要があります。実はこの5つさえ埋められれば、自分の考えがまとまるようになっています。自分が教えられる実力をつけてから……と思うとハードルが高くなり、始めるのに時間がかかるので、中身ができていないうちから、いきなり募集告知文を作ってみることがポイントです。
①タイトル
②こんなことで悩んでいる人が、こう変化する講座です
③受講後、こんな未来が待っています
④こんな内容を話します(箇条書きで3つくらい)
⑤プロフィール(200文字以内)
この5項目を「自分だったらどんな先生ごっこができるかな?」という視点で埋めていきましょう。ここで気をつけたいのが、伝える順番(募集告知をする順番)と考える順番は違うということです。
■「悩める後輩」に語りかけるつもりで
募集告知文を書くときスムーズなのは「ちょっと先輩の私が悩める後輩たちに何か伝えるにはどうするかな?」とイメージすることです。たとえば、「望まない部署異動があってモヤモヤしている後輩」に向けてのメッセージをイメージして、テンプレートを埋めていきましょう。
②こんなことで悩んでいる人が、こう変化する講座です
望まない部署異動や配置転換でやる気をなくしている人が、気持ちを切り替えて、いまの仕事を楽しめるヒントがもらえる講座です。
③受講後、こんな未来が待っています
受講後、仕事に行くのがちょっと楽しくなります。
すごい結果が出るような話をしなきゃ、と思うと書けなくなるので、「少し気持ちが軽くなる」といった、ちょっとした効果でも問題ありません。
④こんな内容を話します(箇条書きで3つくらい)
ここは、②と③で自分がやってきた経験、自分が工夫したことを思い出せば箇条書きで書けるはずです。
次に①のタイトルを作ります。タイトルは、先ほど考えた②③をギュッと凝縮した内容で、かつ、この講座を受けることで困りごとが解消し、前向きになれるものを考えていきます。たとえば、前述の②③を凝縮すると、「嫌な部署でも仕事に行くのがちょっと楽しくなる! 気持ちの切り替え講座」といった感じです。
なお、タイトルを「盛りすぎ」ると、「実際と違う!」とクレームにつながるので、内容をしっかりと反映させたものにすることも大切です。
■プロフィールはテーマに合わせてつくり変える
最後に⑤プロフィールです。タイトルで興味を持ったとしても、自分が講座を受ける立場だとしたら、一体誰が、どんな経歴の人が話すんだろう?と気になりますよね。そのため、プロフィールの要素で重要なのは、次の2つです。
・過去の経歴(いままで何をしてきたか)
・実績(数字で具体的に)
先ほどの例の部署移動のタイトルなら、「過去の経歴」「実績」は次のようになるはずです。
望まない配置転換に悩んだ経験があった私が、◎◎をすることでいまの仕事を楽しめるようになった。
これをプロフィールとして文章化すると、たとえば次のようになります。
望まない配置転換に悩んだ経験があったが、◎◎をすることでいまの仕事を楽しめるようになり、会社でも評価されるようになったので、同じように悩んでいる人に自分の経験を伝えたいと思い、この講座を企画。
このようにまとめると、「この人は、自分がつらい思いをして具体的に工夫して学んだことを教えてくれるんだな」と思いますよね。
■講座の構成は細かく分けて
モジュール③40分話せる構成を考える
募集告知文ができたら、次に、構成を考えていきます。第1の目標として、Zoomの無料プランの範囲内の40分、1人で話せるようコンテンツを作ることを目指していくのが、時間的にもちょうどいいでしょう。「長いな」と感じるかもしれませんが、枠組みを作ることができれば40分はあっという間です。
たとえば、次のような構成にしてみましょう。
【自己紹介(5分)】
なぜ、あなたがこの話をすることができるか資格や想いを伝える
【この講座の目的・ゴール(5分)】
どんなことを教えるか、講座のあとどうなっているかをイメージしてもらう
【伝えたいポイント(25分)】
多くても5つに絞り簡潔に伝える(1ポイント5分×3)
ワークなどで考えてもらうのも効果的(10分)
【まとめ(5分)】
講座の内容を要約してまとめる
自己紹介では、最初の5分で自分が持っている資格を紹介したり、「こういう想いでやっています」という原体験の話をしたりします。次の5分で、講座の目的やゴールを話します。
そして本編(伝えたいポイント)に入ります。本編は25分ぐらいです。伝えたいポイントは多くても3つぐらいに絞り、簡潔に伝えます。1つのポイントを5分で話すとすると、3つ作ればもう15分です。本編ではワークなどを使って、参加者に考えてもらうのも効果的です。ポイント3つを各5分で15分、それにワークを10分加えれば、あっという間に25分になります。そして最後の5分でまとめます。
こんな感じで構成を細かく分けてみると、「できそうかも」と思えるようになりますよね。構成さえ決まれば、あとは中身を埋めるだけなので、かなり簡単なはずです。
■この人なら話を聞きたいと思える3つの要素
「この人から話を聞きたい!」と思えるアウトプットには、次の3つの要素が必ず入っています。
1 どんな実績があるか?(これを冒頭に言う)
2 いままでどんな経験をしてきたか?
3 その経験から言えることは何か?
たとえばダイエットを例にあげると、こんな感じです。
1 どんな実績があるか?
例)「あすけん」(ダイエットアプリ)を使って、半年で5kgのダイエットに成功しました。
2 いままでどんな経験をしてきたか?
例)いままで、あらゆるダイエットに挑戦しては挫折してきました。リバウンドを繰り返してだんだんやせにくくなってきてやばいなと思いました。
3 その経験から言えることは何か?
例)失敗してきた理由は、「○○だけダイエット」ばかりやってきたからでした。今回、「あすけん」で食事や運動を記録することで、記録とバランスが大事だとわかりました。具体的にはこんなことしました。
このような順番にすると、実績が最初にあるので聞きたいと思えます。
■資料は「ワンスライド、ワンメッセージ」で
テーマを決め、構成を考えたあと、はじめて資料作成に取りかかります。いきなり資料を作るところから始める方がとても多いですが、その前のテーマと構成を考えることが一番大事です。
わかりやすい資料にするためには、3つのポイントがあります。
1 Less is More
2 話の地図を見せる
3 フレームワークを上手に使う
Less is Moreとは「少ないほうが豊かである」という意味です。とにかく少ない情報で多くを語るように工夫していきましょう。たとえば、「ワンスライド、ワンメッセージ」を心がけます。つまり、1つのスライドに1つのメッセージだけで、それ以上の情報を入れないようにします。ほかには、スライドの配色は、3色、多くても4色までにします。
そして2つ目が、「話の地図を見せる」です。「この話、一体いつ終わるんだろう?」とモヤモヤしたまま、話の内容や本質が頭に入ってこないときがありますよね。ですから定期的に「いまどこの話をしていて、この話はいつ終わるか、どう続くか」を明示する必要があります。
たとえば私の資料は、「今回の内容の目次はこれで、いまからこの話をします」といったことを随時入れています。
そして、3つ目のポイントは図表1のフレームワークを意識して上手に使うことです。
モジュール④録画してリハーサルをしてみる
本番前にはリハーサルしていきましょう。たとえばZoomで顔出ししつつ、スライドを録画しましょう。顔出しの可否は選べますが、あえて顔出しをおすすめします。なぜかと言うと、一方向ばかり向いてるな、髪の毛を触りすぎ、まばたきしすぎ、といったような自分の癖がわかるからです。
また、録画を見直すことで客観的な視点を養える上、資料のつじつまが合っていないところもわかりますし、話す練習にもなります。
慣れてうまく話せるようになったり、フィードバックを得てブラッシュアップできたら、動画配信のプラットフォームにのせることもできます。練習を重ねていくと、「○○さん、プレゼンうまいよね」「資料作成どうやってるの?」と言われるようになり、仕事もスムーズに行くと思いますので、ぜひ始めてみましょう。
----------
池田 千恵(いけだ・ちえ)
朝イチ業務改革コンサルタント
二度の大学受験失敗を機に早起きに目覚め、半年の早朝勉強で慶應義塾大学総合政策学部に入学。外食ベンチャー企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て、2009年に『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)を刊行。ベストセラーとなり、「朝活の第一人者」 と呼ばれるようになる。夜型から朝型に変えた実体験と多くの人の早起き習慣化を指導した実績をもとに、2010年より朝専用手帳『朝活手帳』をプロデュース。10年連続で発売する人気手帳となる。「朝1時間」の業務改革による生産性向上、働き方改革 のための手法を企業に指導しているほか、個人に向けてはキャリアに迷ったとき自分の将来を真面目に楽しく語り、学びたい人向けの朝活コミュニティ「朝キャリ」を主宰。2020年4月現在4歳となる男児を育てるワーキングマザー。
----------
(朝イチ業務改革コンサルタント 池田 千恵)