部下や同僚にフィードバックするときは何に気を付けるべきなのか。コミュニケーションの専門家の戸田久実さんは「フィードバックは、する側もされる側も多大なストレスがかかる。
※本稿は、戸田久実『すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる~』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■これ以上ストレスをためないために
フィードバックをする側もされる側も、精神状態が常によいわけではありません。
「フィードバックを一生懸命していたけど、疲れ果ててしまった…」
「伝えるときに熱くなりすぎて反省している」
といった心境になることもあります。
疲れていたとしても、マネジメント側の人は多くの責任を担わなくてはいけません。ですから、自分の心を健康な状態に保っておくことは、とても重要なことなのです。
感情を整理できないことがあるなら、日頃からアンガーマネジメントも取り入れながら、必要以上のストレスを抱えないようにしましょう。
アンガーマネジメントでは、「ストレスや怒りを抱えすぎないために、自分が何か行動することで変えられること、変えられないこと、言い換えればコントロールできること、できないことの見極めをしましょう」ということを伝えています。
自分の力では変えられないことに対して、
「なんでこうなんだろう?」
「どうして思い通りにならないんだろう?」
と思ったところで現状は変わらず、自分のストレスや怒りが大きくなるだけです。
自分の力ではどうにもならないことの場合は割り切り、これ以上のストレスがたまらないために何ができるか、ということに目を向け、行動の選択をしてほしいのです。
これからの時代は、マネジメント側の人が疲れ果てる前に、自分のメンタルケアを行うことも欠かせません。不要なトラブルが起こらないよう、日頃から心を整える自分なりの習慣を身につけておきたいものです。
■「肯定的に」あきらめる
何度も改善に向けたフィードバックをしても、まったく変わらない人もいます。
変わる意志が見られない人に対しては、無力感を持つこともあるでしょう。
何度言っても改善されないケースには、主に次の2つの傾向が見られます。
・相手に変わる意志がない
・本人は改善したいと思っていても、能力的に難しい
どちらなのかを見極めることが重要です。
変わる意志がないと思われる人に対して、
「なぜ、この人は変わらないのか?」
「普通、ここまで言われたら変わろうとするよね?」
とイライラしても、こちらのストレスが溜まるだけです。
相手に変わる意志がない場合は、怒りを抱え込まないようにあきらめるという選択もあります。
あきらめるという言葉は、仏教用語で「明らかにして見極める」という意味です。あきらめられず、精神的に疲弊していく管理職は少なくありません。余計なストレスを抱えず次に進むために、肯定的なあきらめもあることを知っておいてください。
■何度注意しても長髪を切らない
ある製薬会社のMR(医療品情報担当者)・Uさん(20代男性)の例を紹介しましょう。
MRは医療機関を訪問するため、ほかの組織と比べると身だしなみに厳しい規定を設けています。
Uさんは、短髪の規定があるなかで肩まで髪を伸ばしていて、何度注意しても意見を聞きませんでした。
上司「訪問先での印象が悪くなり、営業にも影響を及ぼします。さらには、社内でも悪い評判が発生していますよ」
Uさん「でも、長年この髪型で、パートナーも気に入ってくれているから、髪は切りたくありません」
最終的に上司は、長髪にデメリットがあることも伝え、それも自己責任としたうえでそれ以上の注意をやめたそうです。
また、本人に変わろうとする意志があるものの、能力的な理由で改善できない場合は、相手に求めることのハードルを下げ、できる範囲で目標を再設定したり、改善期間を話し合うのもおすすめです。
業務が遂行できるよう、タイプに合わせて改善策を模索していきたいものです。
■言ってはいけないフィードバックフレーズ
相手が自分より立場が下で経験が浅い場合、高圧的にならないよう注意が必要です。
ネガティブな感情は、自分が思うよりも相手に伝わるものです。
言葉や態度だけではなく、自分の気持ちも振り返ってみてください。
【NG例】
・相手をコントロールしようとしている
「わたしのほうが経験値があるのだから、こっちの言う通りにしていればいい」
・相手を見下すような向き合い方をしている
「何をやってもダメな人だな…」
・相手を抑え込もうとする
「こっちの言うことをおとなしく聞いていればいい。反論するな」
・相手のことを心から認められない
「Wさんにしてはよくやったと思うよ」
「珍しくよくできたね」
「やればできるじゃない。いつも本気を出せばいいのに」
「Eさんと比べるとまだまだだけど、がんばったと思うよ」
■相手と対等に向き合う
ポジティブフィードバックも、言い方によっては嫌味に聞こえることもあります。
心のなかで相手と対等に向き合うには、相互尊重が欠かせません。
まず、自分の考え・意見・価値観を大切にすることはもちろん、相手に対しても、同じように尊重します。
「わたしのほうが正しいのに、何を言っているんだ」
と、心のなかで相手を見下したり、相手を自分の思い通りにコントロールしたいという気持ちがあると、言葉にしなくても語調や態度で伝わることもあります。
相手と対等に向き合いながら言葉をかけていれば、徐々にコミュニケーションが円滑になり、チームも明るくなっていくはずです。
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戸田 久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション代表
日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後、服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーションを設立。研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任する。著書に『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』など。
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(アドット・コミュニケーション代表 戸田 久実)
ネガティブなものにしろ、ポジティブなものにしろ相手を尊重する心構えが必要だ」という――。
※本稿は、戸田久実『すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる~』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■これ以上ストレスをためないために
フィードバックをする側もされる側も、精神状態が常によいわけではありません。
「フィードバックを一生懸命していたけど、疲れ果ててしまった…」
「伝えるときに熱くなりすぎて反省している」
といった心境になることもあります。
疲れていたとしても、マネジメント側の人は多くの責任を担わなくてはいけません。ですから、自分の心を健康な状態に保っておくことは、とても重要なことなのです。
感情を整理できないことがあるなら、日頃からアンガーマネジメントも取り入れながら、必要以上のストレスを抱えないようにしましょう。
アンガーマネジメントでは、「ストレスや怒りを抱えすぎないために、自分が何か行動することで変えられること、変えられないこと、言い換えればコントロールできること、できないことの見極めをしましょう」ということを伝えています。
自分の力では変えられないことに対して、
「なんでこうなんだろう?」
「どうして思い通りにならないんだろう?」
と思ったところで現状は変わらず、自分のストレスや怒りが大きくなるだけです。
自分の力ではどうにもならないことの場合は割り切り、これ以上のストレスがたまらないために何ができるか、ということに目を向け、行動の選択をしてほしいのです。
これからの時代は、マネジメント側の人が疲れ果てる前に、自分のメンタルケアを行うことも欠かせません。不要なトラブルが起こらないよう、日頃から心を整える自分なりの習慣を身につけておきたいものです。
■「肯定的に」あきらめる
何度も改善に向けたフィードバックをしても、まったく変わらない人もいます。
変わる意志が見られない人に対しては、無力感を持つこともあるでしょう。
何度言っても改善されないケースには、主に次の2つの傾向が見られます。
・相手に変わる意志がない
・本人は改善したいと思っていても、能力的に難しい
どちらなのかを見極めることが重要です。
変わる意志がないと思われる人に対して、
「なぜ、この人は変わらないのか?」
「普通、ここまで言われたら変わろうとするよね?」
とイライラしても、こちらのストレスが溜まるだけです。
相手に変わる意志がない場合は、怒りを抱え込まないようにあきらめるという選択もあります。
あきらめるという言葉は、仏教用語で「明らかにして見極める」という意味です。あきらめられず、精神的に疲弊していく管理職は少なくありません。余計なストレスを抱えず次に進むために、肯定的なあきらめもあることを知っておいてください。
■何度注意しても長髪を切らない
ある製薬会社のMR(医療品情報担当者)・Uさん(20代男性)の例を紹介しましょう。
MRは医療機関を訪問するため、ほかの組織と比べると身だしなみに厳しい規定を設けています。
Uさんは、短髪の規定があるなかで肩まで髪を伸ばしていて、何度注意しても意見を聞きませんでした。
上司「訪問先での印象が悪くなり、営業にも影響を及ぼします。さらには、社内でも悪い評判が発生していますよ」
Uさん「でも、長年この髪型で、パートナーも気に入ってくれているから、髪は切りたくありません」
最終的に上司は、長髪にデメリットがあることも伝え、それも自己責任としたうえでそれ以上の注意をやめたそうです。
また、本人に変わろうとする意志があるものの、能力的な理由で改善できない場合は、相手に求めることのハードルを下げ、できる範囲で目標を再設定したり、改善期間を話し合うのもおすすめです。
業務が遂行できるよう、タイプに合わせて改善策を模索していきたいものです。
■言ってはいけないフィードバックフレーズ
相手が自分より立場が下で経験が浅い場合、高圧的にならないよう注意が必要です。
ネガティブな感情は、自分が思うよりも相手に伝わるものです。
言葉や態度だけではなく、自分の気持ちも振り返ってみてください。
【NG例】
・相手をコントロールしようとしている
「わたしのほうが経験値があるのだから、こっちの言う通りにしていればいい」
・相手を見下すような向き合い方をしている
「何をやってもダメな人だな…」
・相手を抑え込もうとする
「こっちの言うことをおとなしく聞いていればいい。反論するな」
・相手のことを心から認められない
「Wさんにしてはよくやったと思うよ」
「珍しくよくできたね」
「やればできるじゃない。いつも本気を出せばいいのに」
「Eさんと比べるとまだまだだけど、がんばったと思うよ」
■相手と対等に向き合う
ポジティブフィードバックも、言い方によっては嫌味に聞こえることもあります。
心のなかで相手と対等に向き合うには、相互尊重が欠かせません。
まず、自分の考え・意見・価値観を大切にすることはもちろん、相手に対しても、同じように尊重します。
「わたしのほうが正しいのに、何を言っているんだ」
と、心のなかで相手を見下したり、相手を自分の思い通りにコントロールしたいという気持ちがあると、言葉にしなくても語調や態度で伝わることもあります。
相手と対等に向き合いながら言葉をかけていれば、徐々にコミュニケーションが円滑になり、チームも明るくなっていくはずです。
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戸田 久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション代表
日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後、服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界企業にて社長秘書を経て2008年にアドット・コミュニケーションを設立。研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任する。著書に『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』など。
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(アドット・コミュニケーション代表 戸田 久実)
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