マイナス思考や罪悪感を抱きやすい人が、その心持ちを変えるのは難しいことだ。だが、うつ病を克服した経験のある精神科医の平光源さんは「呼吸をコントロールすれば、感情もコントロールできる。
すぐには難しくても、体を変えることで、やがて思考を変えることができる」という――。
※本稿は、平光源『頑張れないんじゃなくて、頑張りすぎただけ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■かつて大ブームになった呼吸体操法
私が20歳の浪人中から続けていることの1つに、「肥田式強健術」というものがあります。肥田春充という天才が第二次世界大戦以前につくり、日本中でブームになった呼吸体操法です。
1902年には当時の郡是製絲、現在のグンゼ株式会社の体育として全社でも取り入れられました。
著書の中で肥田先生は、
「恐怖の感情が生じそうな時に、横隔膜を押し下げると、心臓が少しも圧迫されないので、恐怖の感情が全く生じない」
と書かれています。
やり方としては、上半身を全体的にリラックスさせ、下半身に力をこめます。
これは、『鬼滅の刃』の主人公・炭治郎の全集中の呼吸にも似た呼吸法で、これを行うととても落ち着いて不思議と不安がなくなります。
ここで大切なことは、姿勢と呼吸により、感情がコントロールできてしまうということです。
みなさんは、感情に振り回されてしまうことはありませんか?
■感情の安定のために体を安定させる
むしろ情緒的な日本人は、感情自体を「私」と感じている人が多いのかもしれません。でも、もし姿勢と呼吸を変えることで、その感情がおさまってしまうとしたら、感情はあなたそのものではないのかもしれないのです。
また、スポーツマンの方に比較的自信がある人が多いのは、ある程度自分の体をコントロールできる感覚があるからです。
なぜだか分かりますか。それは言い換えれば、
体をコントロールできる=自信

体をコントロールできない=不安
ということ。つまり感情を安定させるには、体を安定させればいいわけです。
不安でどうしようもなくなったら、物事をポジティブに考えることは大切です。
しかし、物事をポジティブにとらえようとして行き詰まることもありますよね。それでもいいんです、そんな時は、まずは、呼吸をしてみましょう。
■マインドフルネスの呼吸法①
マインドフルネスでよく教えられる呼吸法をお伝えします。マインドフルネスとは、心を「いま」に向ける方法として精神科の認知行動療法の1つとして取り上げられているものですが、ここでは2つの呼吸法を例に挙げます。
1つ目は4秒で吸って、4秒止めて、8秒で吐く。だいたいでいいので頭の中で数を数えて1分間に4回程度の呼吸をしてみましょう。そうすると、高ぶっていた緊張のための交感神経が静まり、リラックスのための副交感神経が優位になっていきます。これを2分ぐらい行ってもらうとだいぶ体が楽になって、心に不安がなくなるのが分かります。

■マインドフルネスの呼吸法②
もう1つは、イメージを使った呼吸法です。
まず、息を4秒ぐらいで吸って、4秒ぐらいで吐きますが、息を吸う時に、「体は」と心の中で唱え、息を吐く時に「緩まる」と心の中で唱えながら呼吸をします。
この「緩まる」の時に、体の全体の力が抜けて緩まるイメージをします。次にまた、呼吸をくりかえしますが、息を吸う時に、「私は」と心の中で唱え、息を吐く時に「微笑む」と心の中で唱えながら呼吸をします。
「微笑む」の時は実際に口角を上げて微笑んでください。この時、大好きな人やペット、食べ物のことを思い出しながらやるとより効果的です。
上記を1セットとして4回行えば、呼吸も、心の中でざわざわしている、いわゆる胸騒ぎも静まってきます。
「呼吸をする」「姿勢を正す」など体のあり方を変える。
ただそれだけで、気分がとても楽になります。気分が楽になると、思考も楽になり、それを続けることによって自分が、そして世界が変わっていきます。

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平 光源(たいら・こうげん)

精神科医

東北で精神科医院を営む精神科医。高校時代に不登校を経験し医学部受験に失敗。
3浪してうつになるも、読書をきっかけにうつから回復。その経験を踏まえ、約25年精神科医として心のケアに当たる。支援学校学校医、老健施設往診医、いのちの電話相談医、傾聴の会顧問など、その活動は多岐にわたる。精神保健指定医、精神科専門医、日本医師会認定産業医。著書『あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから』(サンマーク出版刊)が2022年の第2回メンタル本大賞優秀賞を受賞。

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(精神科医 平 光源)
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