疲労回復に効果的な飲み物は何か。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんは「栄養ドリンクは『疲労感』は薄まるかもしれないが、『疲労そのもの』はまったくなくならない。
一方で、1日にグラス1~2杯なら心筋梗塞を防ぐお酒がある」という――。
※本稿は、梶本修身『「疲れないからだ」になれる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■栄養ドリンクで「疲労そのもの」はまったく消えない
今、コンビニやドラッグストアに行くと、多くの種類の栄養ドリンクが並んでいます。テレビでも、さかんにCMが流されています。
残業のときや、体がなんとなく重たい朝に手が伸びる――そんな人が多いのでしょう。現在、栄養ドリンク市場は年間売上がトータル2000億~2500億円にものぼっているといいます。
しかし実は、こうした数ある商品のなかで、疲労回復効果が臨床試験で実証されているものは、ひとつもありません。
栄養ドリンクのラベルを見ると、「タウリン○○○○mg配合!」などと書かれています。その含有量が多ければ多いほど、疲れに効きそうだという印象を受けるでしょう。
しかし、たとえばこのタウリンに疲労回復効果があるという科学的証拠はいっさいありません。
そうはいっても、栄養ドリンクを飲んだあとに「スッキリして目がさえた」というような、疲れが軽減されたという感覚を持つ人はかなりいるでしょう。
それは、ドリンクに含まれている大量のカフェインの覚醒作用と、微量のアルコールの気分高揚作用によるものです。

たしかに「疲労感」は薄まるかもしれませんが、「疲労そのもの」はまったくなくなっていないのです。ですから、日常的にこうした栄養ドリンクを飲んでいると、疲労感を消すことでごまかされたまま、疲労は蓄積される一方になります。
■「習慣的に栄養ドリンクを飲む」は絶対NG
栄養ドリンクに含まれている高濃度のカフェインが、過度な活発性や依存症を引き起こすとして、海外では問題視されるようになってきています。
近年、アメリカでは栄養ドリンクの過剰摂取が問題となっており、2013年には、米国食品医薬品局が栄養ドリンクの安全性を調査したところ、この10年で、栄養ドリンクとの関連性を否定できない死亡事件が13件もあったとのことです。
2014年、ヨーロッパのリトアニアでは、18歳未満に対するエナジードリンクや栄養ドリンクの販売を禁止するという法律が施行されました。
栄養ドリンクはあくまで、疲れを一時的にごまかすもの。
どうしても徹夜をしなければならないときなど、一時的ながんばりどきに使うことは否定しません。ですが、必ず翌日にそのぶんの“ツケ”がくるので、栄養ドリンクを飲んでがんばった次の日は、しっかり休むようにすべきです。
栄養ドリンクは、長期にわたって飲用するものではありません。
習慣的に栄養ドリンクを飲む、1日に何本も飲む、持続的、継続的に飲むというのは絶対に避けたほうがいいでしょう。
■コーヒーを1日に3~4杯飲む人は長生き
かつては「コーヒーをあまり飲みすぎるな」といわれていました。
たしかにカフェインは摂りすぎるとよくありません。

コーヒー1杯に含まれているカフェインの量は25~50mg程度です。濃いものであれば、60mgくらい入っているようです。
1日のカフェインの摂取量の限界値は明確ではありませんが、200mgは超えないほうがいいでしょう。
カフェインレスのコーヒーであれば、上限はあまり設定しなくてもいいでしょう。
ちなみに、先ほど触れた栄養ドリンクには、1本で120mgものカフェインが含まれている商品があるほどですから、やはり過剰摂取になりやすいということがわかります。
以前は1日3杯以内ともいわれていたコーヒーですが、「1日に3~4杯のコーヒーを飲んでいる人は、ほとんど飲まない人に比べて、心筋梗塞などの心臓病死の危険性が少ない」というデータがあります。
一方で、過去には、「コーヒーを飲んでいる人には胃ガンが多い、肺ガンが多い」ともいわれていました。しかしこれには裏があり、昔は、コーヒーをよく飲んでいる人にはたばこも吸っている人が多かったので、コーヒーがそうしたガンの直接の原因になっているのかどうかの信憑性は疑わしいのです。
しかし、今は統計学の進歩とともに、データがより正確になっています。そして最新のデータで見ると、コーヒーを1日に3~4杯飲んでいる人が長生きしていることが明らかになってきているのです。
ただし、それはあくまでもコーヒーに含まれる「クロロゲン酸」といわれる抗酸化物質の効果であって、カフェインの働きではありません。「カフェインをたくさん摂るのがいいんだ」とはいかないことを覚えておきましょう。

■甘酒は「飲む点滴」
甘酒は、バランスのよいタンパク質の補給になります。
ビタミンB群、葉酸、食物繊維、ブドウ糖なども豊富に含まれているので、最近では「飲む点滴」ともいわれています。
甘酒というと、冬に温めて飲むイメージがありますが、江戸時代には、夏に体力を回復させてくれる飲み物として、活躍していました。
夏に暑さのためにたくさんの人が亡くなっていた時代、体力を維持させ夏バテを防ぐ飲み物として、甘酒は認められていたのです。そのため、幕府も庶民が甘酒を安価で飲めるよう、価格の上限を設定していたほどです。
もちろん、夏冬限らず一年中飲んでいいものです。
ホットミルクはどうでしょうか。
寝つけないときに飲んだりしますが、あまり意味がありません。ミルクに含まれるカルシウムがイライラを抑えるわけではなく、抗疲労効果があるわけでもないので、飲んでなんらかの効果が期待できるとはいえません。
ほかの飲み物なら、「リコピン」という成分が抗酸化力を発揮してくれるトマトジュースがおすすめです。
市販の野菜ジュースはビタミンもそれなりに含まれているとは思いますが、カロリーがあるため、飲みすぎには気をつけましょう。
蒸し暑い季節には、脱水症状、熱中症を起こしやすくなります。
このような時期には、ただの真水やミネラルウォーターよりも、スポーツドリンクをおすすめしています。
汗をかくと、ナトリウム、クロール(塩化物イオン)が不足しますが、スポーツドリンクにはこれらが適度に含まれています。水道水やミネラルウォーターでは、これらを摂取できません。
また、下痢をしているときにも、体内からミネラルが失われているので、スポーツドリンクがいいでしょう。ただし、大量摂取には注意が必要です。
■お酒なら「赤ワイン1杯」
お酒は、極度に強いアルコール度数でない種類のものを飲みすぎなければ、疲労対策として飲んではいけないというものではありません。
ワインには「ワインポリフェノール」といわれるブドウ糖が含まれていて、ベリー系の赤ワイン1杯は、心筋梗塞を防ぐといわれています。
赤ワインをよく飲むフランス人の心疾患による死亡率が低いことを「フレンチ・パラドックス」といいますが、実際に、ワインを飲んでいる人のほうがワインを飲まない人より心筋梗塞などが少ないというデータがあります。これはアルコールではなく、ポリフェノールのおかげです。
ただ、アルコールも長い目で見ると、もちろん体にとって害であることは間違いありません。
肝臓に与える影響などを見ても、決していいことではありません。
「アルコール1単位」という目安があります。

この「1単位」とは、純アルコールに換算して20g。
ビールでいうと中瓶1本、日本酒でいうと1合、ワインでいうとグラス1~2杯ほどを指します。
ビール中瓶1本に含まれているアルコールは、500cc×アルコール度数5%なので、そのくらいの量がアルコールの1単位です。
日本酒やワインのアルコール度数は14%くらいですから、アルコールの量を計算すると同じくらいになります。
この程度のアルコール量であれば、血液循環をよくする作用があり、リラクゼーション効果も脳に作用しますから、健康的な面もあります。
ただし、体質的にアルコール脱水素酵素やアセトアルデヒド脱水素酵素を持っていない方の飲酒は危険です。
長く健康にお酒とつき合いたいのなら、「1日にアルコール1単位以内」に抑えて飲むようにしましょう。

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梶本 修身(かじもと・おさみ)

東京疲労・睡眠クリニック院長

医師・医学博士。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」研究統括責任者。自らプログラム作成したニンテンドーDS『アタマスキャン』は30万枚を超えるベストセラーとなり、脳年齢ブームを起こす。著書に『すべての疲労は脳が原因1・2・3』(集英社)、『寝ても寝ても疲れがとれない人のための スッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)などがある。
「ホンマでっか⁉TV」ほか、「ためしてガッテン」、「世界一受けたい授業」、「林修の今でしょ!講座」など、TVやラジオにも多数出演。

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(東京疲労・睡眠クリニック院長 梶本 修身)
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