天職と出合うためには何をすればいいか。浄土真宗本願寺派僧侶の増田将之さんは「何事も、やってみなければわからない。
でもやってみれば視野が広がり、いろんな風景が見えてくる。その先に、天職との出合いがある」という――。
※本稿は、増田将之『その悩み、ただの執着』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■やりたいことは、ブレながら見つければいい
「夢を持ちなさい」と、よくいわれます。
幼いころから「大きくなったら、何になりたい?」と聞かれることもあって、誰もが夢を意識して成長してきたと思います。
けれども、成人するまでずっと同じ夢を持ち続けた人は、ごく少数でしょう。その夢を達成した人となると、もっと少ないはずです。
大人になったいまは、みなさん、「なりたい」という思いだけでは、またたくさん努力したからといって、子供のころの夢をかなえるのは簡単ではないと、経験的にわかっているでしょう。
大人になってからも、同じことがいえます。就職に際して、「この道を進もう」「この会社でがんばろう」などと決めたからといって、その決断に固執しなくてもいい。
「ブレるのはよくない」と思うかもしれませんが、ブレて当たり前。ブレないほうがふしぎなくらいです。

なぜなら仏教的にいうと、仕事もまた「無常」。自分のやりたいことも、好き嫌いも、能力も、もっといえば世の中に必要とされる仕事も、常に変化しているからです。
実際、時が経つにつれて、「自分に合うと思った仕事だったが、やってみたら合わなかった」とか、「ほかにやりたいことができた」「自分は続けたかったが、AIに取ってかわられた」など、さまざまな「こんなはずではなかった」ことが出てくるものです。
ですから仕事に関しては、早い時期に、自分に合う仕事を見つけることに、必要以上に執着することはありません。
入りたい会社に入れなくても、すぐにやりたい仕事ができなくても、自分の能力を発揮できなくても、それはあなたがまだ、「天職と呼べるものに出合っていない」というだけのことです。
■目の前の仕事に集中する
では、どうすれば天職に出合えるでしょうか。
ただ漠然と天職に出合うことを願い、のんべんだらりと過ごしていても、そんな幸運は訪れません。
一番大事なのは、いま目の前にある仕事に集中すること。たとえ不本意であっても、縁あって入社し、配属された部署なのですから、そこで全力を尽くさなくては次のステップに進めません。
なぜなら、一つの仕事に懸命に取り組まないと、自分の目に映る“仕事風景”が変わってこないからです。
どんなふうに風景が変わるかというと、たとえば――、やってみたら「意外とおもしろい」とか、「能力的に自分に向いている」といったことに気づき、いまの仕事を深掘りしたくなるかもしれません。
やっている途中で新しいことに興味を覚えて、方向性を変えるきっかけをつかむ可能性があります。

仕事で知り合った人に刺激され、新しい挑戦欲が芽生える場合もあります。
「能力的にも、やっていておもしろいかどうかの部分でも、自分に合わない」ことがはっきりとわかり、改めて別の道に転じる決意が固まることもあります。
すべて、「やってみなければわからない」こと。でもやってみれば視野が広がり、いろんな風景が見えてくる。その先に、天職との出合いがあるのです。
■何度“心変わり”をしてもいい
望まない仕事についたからといって、文句ばかりいっていたり、やる気をなくして仕事と真剣に向き合わなかったりしていると、天職と出合うことはできません。中途半端に、天職ならぬ転職を繰り返すだけに終わるでしょう。
そういう意味のない転職・転身でないならば、天職と確信できる仕事に出合うまで、何度“心変わり”をしてもいいでしょう。遅かれ早かれ、心の決まる仕事に出合います。
心が揺れて、揺れて、揺れながらも、どこかで落ち着く、そのときが天職との出合いです。あとは周りが何といおうと、自分の決めた道を一直線に進んでいくのみです。
私自身は高校を出てすぐ、比較的早い年齢で「お坊さんになる」と決めることができました。
けれども弟は、けっこうな年数、揺れていました。大学でがんばって教員の勉強をしていたのに、卒業すると「芸人になりたい」といって芸人の養成所に入学。
アルバイトをしながら“芸人修業”を積みました。残念ながら、十年ほどで夢を断念し、結婚を機にパン屋さんに転身しました。
■仕事とのご縁も大切に
おそらく心が揺れている間、いろんな経験をするなかで目が開かれ、将来の道筋が見えてきたのでしょう。
いまは心が定まらなくても、心配は無用。人生百年時代、そんなにあわてて決める必要はありません。
縁あって巡り合った仕事を、とりあえずやってみる。その感覚が大事なのです。

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増田 将之(ますだ・まさゆき)

浄土真宗本願寺派僧侶、公益財団法人仏教伝道協会職員

1976年、千葉県生まれ。「フリースタイルな僧侶たち」顧問、浄土真宗本願寺派勝満寺、善行寺他にて法務に就く。現在は、公益財団法人仏教伝道協会職員として、お寺とのつながりを築きながら、一般の方への仏教普及に奮闘中。
「仏教井戸端トーク」主宰にて各地のお寺でイベントを開催。司会でありながら、登壇者よりも長く話すスタイルが好評。

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(浄土真宗本願寺派僧侶、公益財団法人仏教伝道協会職員 増田 将之)
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