東武スカイツリーライン(伊勢崎線)の「西新井駅」のホーム内にある立ち食いラーメン店「西新井らーめん」が2026年3月31日に最後の営業日を迎え、ホームには別れを惜しむ利用客の長い列ができました。帰宅ラッシュと夕食時間が重なる夜には、常時30名以上もの行列が店前にでき、待ち時間は1時間を超えていました。
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このお店が西新井駅のホームに開店したのは1969年のことで、今年の閉店までの営業期間は56年間にもなります。定番メニューは醤油ベースのスープに縮れ麺といった昔ながらの東京風ラーメン。半世紀以上もの長い歴史があり、その存在は西新井駅の日常風景の一部だったともいえるでしょう。
2026年の1月末に同店の閉店が報じられてから、このお店を訪れる人々は一気に増えたそうです。「それまでは1日あたり300食程度でしたが、閉店を告知した以降は倍の600食くらい出るようになりました。店員も通常は2名体制のシフトでしたが、いまは3名体制です」(店舗関係者)。
店舗は列車が往き来するホームにあるため、過度な行列は来店者や駅利用者の安全上の懸念があります。店舗のある西新井駅の3番・4番線のホームは、3番線側がホームドア対応になっていないため、無秩序な行列ができてしまうと、電車の運行に支障を来す可能性もあります。そのため、店前のホーム床にはカラーテープで行列を統制する線が引かれ、折り返し列で30名くらいが並べるように整備。さらにピーク時には行列誘導のために警備員まで配置されていました。
常時30名が列をつくり、待ち時間は1時間最終日の午前8時、お店の開店時間からすでに10名程度の行列ができており、お昼時に合わせてその行列はどんどん増えて行きました。
2名の警備員が人員誘導を行ない、店舗スタッフも調理とは別に3名が店外でお客の案内をし、店舗をスムーズに回していきます。さらに東武鉄道のスタッフも安全監視を兼ねて、現場での列の誘導・告知をおこなっていました。
西新井駅の1日あたりの利用者数は6万人程度で、帰宅ラッシュ時にはラーメン店のあるホームも利用者が多くなります。ここに常時30名以上の行列ができるのは、空間的には混雑した状況となります。ラーメンを食べるお客さんの待ち時間も1時間を越えていました。しかし、当日のホームでは大きな混乱は発生しませんでした。
その理由のひとつは、最終日にやってきたお客さんの多くが西新井駅を日頃から使っている地元民であったことだと思われます。
列に並ぶ60代の男性は「学生時代からずっと西新井に住んでいて、子供の頃からこのお店は知っているよ。通勤、通学で電車を使う度にずっと見ていたけど、こんなに人がいっぱいになったのは初めてでビックリだよ」という。
半世紀以上も営業していた立ち食いラーメン店は地域のシンボルというだけでなく、西新井駅を利用する人々にとって“人生の日常風景”となっていたのかもしれません。
食べ終わった後に「ごちそうさん、いままでありがとうねー」とこれまでの営業に感謝をする人もおり、厨房のベテラン女性スタッフが「ああいう風に言ってくれる人もいるんだねー」と嬉しそうに笑っていました。
19時40分、お店の営業時間は20時半ですが、行列の人数と待ち時間から逆算してすこし早めに券売機が停止され、券売機前と列の最後尾には「食券販売終了」の紙をもったスタッフが立ちます。それ以降にもラーメン目当ての人がやってきましたが、食べ逃したことを残念がる様子を見せながらも、店舗や行列の様子を記念に写真撮影していきます。
21時30分。56年の営業を終えて閉店した「西新井 らーめん」(布留川 司撮影)。
「西新井らーめん」の56年の歴史において最後のお客さんになったのは50代の男性でした。話を聞こうと声を掛けると、最初はとても驚いた様子でした。「え、私にインタビューですか?いや、私でいいのかな……? 朝から並んで待っていたわけでもなく、仕事帰りにふらっと寄ったら、たまたま自分が最後になっただけですからね。でも、当たり前に誰でも食べられる普通のラーメン店ですから、こういう最後が丁度いいのかもしれませんね(笑)」。
この男性も通勤で西新井駅を日頃から利用しており、この店にも数十年も通っているそうです。「最初はお店の上の看板もいまと違っていました。当時の価格はラーメン一杯450円くらいだったかな?それから値上げして500円になり、その価格がしばらく続きました。ワンコインなのでお腹がすいたらいつでも食べられるラーメンって感じでした」。
すべてのお客さんがラーメンを食べ終え、店舗のシャッターが締められたのは21時半。ラーメンの提供は終わりましたが、現場には別れを惜しむお客さんや鉄道ファンが残っており、店舗スタッフが簡単に挨拶するイベントがありました。「56年間ありがとうございました。このお店は終わりですが、駅の側にある『駅前店』の方は営業を続けますので、そちらもよろしくお願いします」。
最後に店舗上の看板の灯が消されましたが、「あ、消える瞬間もう一度撮影します?5秒後にまた点けて消しまーす(笑)」とスタッフがサービス。なんともお気楽な感覚で56年の歴史に幕を下ろしましたが、西新井駅の日常風景となった立ち食いラーメン店にはある意味で相応しいフィナーレだったともいえるでしょう。

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