仕事中に疲れを溜めない方法は何か。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身さんは「ぶっ通しで働いてたっぷり休むほうがデキるビジネスパーソンのように思えるが、実際には異なる。
成果を上げると証明されているのは、ちょこちょこ短時間で仕事を離れることだ」という――。
※本稿は、梶本修身『「疲れないからだ」になれる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■頻繁に水を飲み、30分に1回トイレに立つ
オフィスで働いていると、一日中パソコンと向き合い、デスクワークをしている、ということが多いのではないでしょうか。
ずっとイスに座っていて、いつもと同じ仕事をこなしたけれど、夕方頃にはすっかり疲れてしまっている――。そんなことはないでしょうか。
しかし、1日同じデスクワークをしていても、そのように疲れ果ててしまって家に帰るのもしんどいという人と、さほど疲れた様子も見せずに颯爽と家路につく人がいます。
その違いは、どこにあるのでしょうか。
長時間デスクワークをしていても疲れないためには、頻繁に水を飲み、頻繁にトイレに行くことです。
理想は、30分に1回。
最低でも1時間の間に1回はトイレに行くのがいいでしょう。
人間の体重の6割は、水分で構成されています。なかでも体液は、疲労物質や老廃物を体外に排泄したり、体温を維持したり、体に必要な栄養素を運んだり、といった役割を担っています。

体液が減少すると、血流の悪化を招き、体の内部環境を一定に保ち続けようとする自律神経にとって大きな負担となります。
また、活性酸素の酸化(錆び)により生じた老廃物を体外に排出することもできないため、疲労の蓄積を招くのです。
■一度に大量ではなく、こまめに少量の水を
水をひとくち飲むことは、その量の多少にかかわらず、血流を高め、内臓の働きをうながすことで自律神経への負担を軽減します。
少しずつでもいいので、水をこまめに補給することで副交感神経が優位になり、リラックス効果を得ることができるのです。
しかし、一度に大量の水をガブ飲みするのは、体液バランスを崩すのでおすすめできません。あくまで「こまめに少量の水をとる」ことが大切です。
つまり、「のどが渇いたから飲む」のではなく、「のどがとくに渇いていないうちから、こまめに水分補給をする」のを習慣づけることで、疲れにくくなるのです。
デスクには、つねにミネラルウォーターを、暑い時期にはスポーツドリンクを常備しておきましょう。
とくに、昨今のオフィスでは、一年中季節を問わず空調がつけられています。そのため、必要以上に空気が乾燥しています。だからこそ、水分補給をおろそかにしてはいけません。
そして、トイレに行くためにせめて1時間おきに一度「立ち上がる」ということが、とても大切です。

長時間座り続けていると、腎臓に行く血流が10%も落ちることがあります。なぜこうなるのかというと、イスに座った姿勢では、鼠径部(お腹側の足の付け根部分)を折った状態になっているためです。
これは、体にとっては意外に大きな負荷となります。
■「同じ場所で、同じ姿勢のまま」は危険
血液は、つねに流動していることで、凝固することを防いでいます。しかし、座りっぱなしでいると、下肢の細い静脈の血液の流れが悪くなります。すると、疲労物質の元となる老廃物が排出されない状態になってしまいます。
この状態が命を脅かすレベルにまで深刻に進んだのが、飛行機内で起こる「エコノミークラス症候群」です。
下肢の血流があまりにも滞ると、血液が固まって塊になった「血栓」ができます。そして、その血栓が移動して肺の血管に詰まると、肺塞栓症を起こし、息苦しさや胸の痛みを感じ、倒れてしまうわけです。
これは、飛行機に乗っているときだけになるとは限りません。
長距離ドライバーやタクシー運転手のように、長時間座った姿勢を維持しなければならない職業の人が、このエコノミークラス症候群になって命を落としたという例もあります。
「同じ場所で、同じ姿勢のままほとんど動かずにいる」ということは、人間にとってとても危険な状態なのです。

これは、オフィスでデスクにかじりつくようにして、ひたすら座りっぱなしで働いている人も同じことです。
■「立って歩く」だけで、疲労物質が流れ出す
こうした状態になることを防ぎ、体に疲労を溜めないためには、座っている姿勢を中断すること――つまり、一度立ち上がって歩くこと。
立ち上がって歩くだけで、血流の状態が正しい状態に戻るのです。
まず、血管の折れているところがまっすぐになり、そこで血流がよくなり、歩くことで腎臓に行く血流がよい状態に戻ります。
また、歩く行為は脚の筋肉を収縮させるので、「ミルキングアクション」と呼ばれる作用――脚に溜まった血液やリンパ液などの体液を、筋肉のポンプ機能で心臓へ送り返してくれる作用も期待できます。
そして、腎臓は尿をつくっている臓器ですから、腎臓に血流が流れれば、尿がつくられ、尿とともに疲労物質や老廃物が体外に出て行ってくれるのです。
トイレに行くために立ち上がり脚を動かすので、そこで血流が改善します。すると腎臓の血流が一気によくなり、尿意も自然ともよおされるのです。
■長時間の車の運転も定期的に停まる
「気がついたら、何時間も座りっぱなしだった、トイレにも行っていなかった」ということはありませんか。それでは、疲れるのも当たり前。
「立って歩く」ことが、疲れを溜め込まないために、最もいいストレッチになります。
これはデスクワークに限らず、車の運転やバス、電車のなかでも同じことです。
車の運転を長時間するときも、定期的にサービスエリアで停まったり、コンビニの駐車場に入ったりして、車を出て歩くようにするだけでいいのです。
以前、こんな実験をしたことがあります。
8時間の作業をさせて、
(A)2時間ごとに20分休憩をとる場合

(B)30分ごとに5分休憩をとる場合
とで、疲れの度合いがどう変わるのかを調べたのです。
その結果、(A)と(B)の作業時間と休憩時間の合計は変わらないにもかかわらず、(B)の「30分ごとに5分休憩をとった」ほうが、パフォーマンスが落ちず、疲労も軽いということが明らかになりました。
「ぶっ通しで働いてたっぷり休む」ほうが、なんとなくデキるビジネスパーソンのように思えます。
ですが実際には、むしろちょこちょこ短時間の休憩をとったほうが、疲れが軽くすむだけでなく、成果も上がるということが、証明されているのです。

----------

梶本 修身(かじもと・おさみ)

東京疲労・睡眠クリニック院長

医師・医学博士。大阪大学大学院医学研究科修了。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」研究統括責任者。自らプログラム作成したニンテンドーDS『アタマスキャン』は30万枚を超えるベストセラーとなり、脳年齢ブームを起こす。著書に『すべての疲労は脳が原因1・2・3』(集英社)、『寝ても寝ても疲れがとれない人のための スッキリした朝に変わる睡眠の本』(PHP研究所)などがある。「ホンマでっか⁉TV」ほか、「ためしてガッテン」、「世界一受けたい授業」、「林修の今でしょ!講座」など、TVやラジオにも多数出演。


----------

(東京疲労・睡眠クリニック院長 梶本 修身)
編集部おすすめ