ヤマハミュージックジャパン(以下、ヤマハ)は、英国の音楽テクノロジー企業、Luminary ROLI Ltd.(以下、ROLI)製品の輸入・販売元として、2026年5月21日より日本国内における取り扱いを開始する。これにあわせて、Yamaha Sound Crossing Shibuyaにて、記者発表会を実施した。


記者発表会のMCは、YouTuber・音楽評論家の、みのミュージック氏が務め、まず、代表取締役社長の松岡祐治氏が登壇。松岡氏は、ヤマハは音楽の力で人々の個性輝く未来をつくることを経営ビジョンに掲げているが、ROLIは「Free the Music(音楽を解放せよ)」をミッションに掲げ、テクノロジーを通じて人の創造性を広げることを目指している、こうした思想に共感し、また日本市場においてその価値をより多くの人々に届けていく役割をヤマハが担えると考え、今回の取り扱い開始に至ったと説明した。

続いて、ROLIの創業者でありCEOのローランド・ラム氏と、日本での戦略統括部長・鴨川怜奈氏が登壇。ラム氏は、ヤマハとの関係は、電子ピアノの「Clavinova」が欲しくてピザ店でアルバイトをした経験を明かし、その時買ったものが、今では、自分の子供たちが弾いていると、長く使えるヤマハ製品の品質を讃えた。また、15年前、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートに在籍していた時もことを振り返り、その際に、楽器の未来に関するプロジェクトをヤマハのデザインチームが支援をしてくれ、それがROLIの最初の製品であるMIDIキーボード「Seaboard」の誕生に繋がったと述懐した。

ラム氏は続けて、今回取り扱いが発表された製品群を仕様してパフォーマンスを披露。バックトラックを仕込んだDAWは、意外にもAbleton Liveで、ヤマハが扱っているSteinberg CubaseやNuendoではなかった。パートナシップを結ぶCEOが他社製品を使っていてもOKなところに、ヤマハの懐の深さを感じさせる。

その後、音楽プロデューサーのShin Sakiura氏が登場し、「Piano M」「Seaboard M」「Airwave」を使って、その場でトラックを構築していくというデモを披露。Sakiura氏は一般的なシンセサイザーやMIDIキーボードに搭載されているピッチベンド/モジュレーション用のホイールやジョイスティックなどの物理コントローラーを利用してデータを入力するのが正直なところ苦手と漏らしたのだが、Seaboardでは、鍵盤の上をなぞったり滑らしたり押し込んだりすることで、ピッチベンドやモジュレーションがかけられることについて「演奏中に直感的に行える」と高く評価した。

最後はヤマハのLM事業戦略部輸入マーケティング課の益子峻太朗氏から今回登場する「Seaboard 2」「Seaboard M」「Piano」「Piano M」「Airwave」の商品説明と取り扱い開始日、価格について発表が。

「Seaboard 2」「Seaboard M」は、鍵盤状のコントローラー。
ピアノで用いられている鍵盤のような形状を採用してはいるものの、Seaboardは一枚のシリコンで出来ており、打鍵する以外のさまざまな入力方法を利用可能だ。例えば管楽器で、吹き方によってピッチが変わるといった表現ができる。「2」という名称の通り、本製品は二代目のモデルとなる。前モデルよりもかなり薄い筐体になっており、可搬性を高めている。もちろん、アサインできるMIDIコントロール数の増加など、各種機能強化が図られている。希望小売価格は、49鍵の「Seaboard 2」が249,700円、24鍵の「Seaboard M」は66,000円。

「Piano」「Piano M」は、鍵盤自体が発光するMIDIキーボード。ポリフォニック・アフタータッチ、MPEに対応する(Seaboardも同様)。ここまで、「ROLI」の略称で紹介してきたが、ROLIは、2021年にLumiという教育事業者を買収し、その後に再スタートを切っていて、現在の社名「Luminary ROLI」となった。つまり、教育事業はMIDIデバイスとともに柱となっている事業なのである。「Piano」と「Piano M」は、前出のLumiが同様の製品を手掛けていたのを引き継いだものとなる。希望小売価格は、49鍵の「Piano」が108,900円、24鍵の「Seaboard M」は49,500円。


「Airwave」は、本体に搭載されている赤外線カメラで手や指の動きを捉え、キャプチャーしたジェスチャーをMIDI情報へと変換するデバイス。MicrosoftがXbox向けに販売していたセンサー「Kinect」とCycling '74の「Max」を使えば、似たようなセンサリングシステムは構築できると思われるが、本製品は、より微細な動きをキャプチャーできる。音楽家だけでなく、ダンサーのような身体表現に関わっている人の利用シーンも思い浮かぶ。ROLIは昨年、赤外線カメラと赤外線照射LEDから構成されるセンサー「Leap Motion」を販売していたUltraleapを買収しており、本製品はLeap Motionで培ったハンドトラッキング技術が組み込まれていると思われる。希望小売価格は69,300円と、前出のKinect+Maxより廉価(このシステムで同じことをしようとすると、さらにMIDIインターフェースが必要)となるので、コストパフォーマンスにも優れていると言えよう。

以上の製品は2026年5月21日より、ヤマハ銀座店、ヤマハミュージック 横浜みなとみらい、ヤマハミュージック 名古屋店、ヤマハミュージック 大阪なんば店、およびヤマハ特約店で取り扱いが始まる。今後、順次拡大予定とのことだが、発表会が行われたYamaha Sound Crossing Shibuyaでは、当面、展示のみとなるのでご注意いただきたい。

再び、鴨川氏が登壇すると、楽器演奏の習得アプリ「ROLI Learn」のデモを披露した。このアプリはAppleのApp Storeおよび、GoogleのGoogle Playで提供されるが、学習方法は「太鼓の達人」に代表される、いわゆる「音ゲー」に似ている。練習すると、テンポ感などの改善点をフィードバックするといった、AIを活用した学習体験の実現を目指していく方向性も説明があった。

一通りプレゼンが終わり、松岡氏、益子氏に、電子楽器事業部 電子楽器営業部部長の小島正澄氏が登壇してのQ&Aへ。
Q&Aでは、音楽制作の総合サイト「DTMステーション」の藤本健氏から、日本でRoliの製品を手掛けるのは3社目になるかと思いますが、という質問が投げられたが、実は国内での販売代理店が決まる前にApple Storeで扱っていた時期があった。
また、2026 NAMM Showでは、河合楽器製作所とも戦略的パートナーシップを締結していることも明らかにしている。

Q&A、フォトセッションが終わると、パーティタイムに突入。ステージには、PLumsonic!などの活動で知られるYasushi.K氏の姿が。今回紹介された製品群から、ヤマハのオールインワンギア「SEQTRAK」を音源として制作された楽曲を披露し、大いに会場を盛り上げた。
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