※本稿は、中川浩一『英語を最短で身につけた総理通訳の勉強法』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■英語上達が加速する「自己発信ノート」
英語上達に、みなさんには「日本語」で、アウトプットのための「自己発信ノート」の作成をお勧めします。スマホやパソコンにメモするのでもいいのですが、私個人としては紙のノートに書くことをお勧めします。
そう言うとアナログと思われるかもしれませんが、経験的に、手書きでやることが一番、脳に残るからです。
いずれにしても、この「自己発信ノート」をつくることが、この勉強法の最大のポイントになりますので、ぜひトライしてみてください。
当然のことですが、一人一人、話したいこと、伝えたいことは違いますので、これはあなただけのオンリーワンのノートになります。
あなたの生い立ち、家族のこと、趣味のこと、いま担当しているプロジェクトのこと、顧客のことなど、英語で発信したい内容はさまざまでしょう。具体的な書き方は後ほどお話しします。
■「正しい日本語訳」を英語学習に活用する
じつは、この「自己発信ノート」の内容を充実させられる人ほど、英語が話せるようになります。
そういう意味では、小学生、中学生より、多くの社会経験、人生経験を持つビジネスパーソンや主婦、定年を迎え、第二の人生を迎えるシニアのほうが、話すべき経験・内容をたくさん持っているぶん、英語学習に有利とも言えます。
2023年7月31日に文部科学省が実施した調査で出た、いまの中学3年生が「話すべき内容がわからなかった」という結果がそれを如実に物語っています。
それをふまえて、あなたが書いた日本語をどう英語にしていくのかについて、お伝えしていきましょう。
日本の英語学習のテキストには、単語であれ熟語であれ、フレーズであれ文章であれ、必ずと言っていいほど「正しい日本語訳」がつけられています。私が学んだアラビア語にかぎらず少数言語の学習者にとっては、「ずるい」とも思える環境ですが、英語学習者にとっては大きなアドバンテージです。
この、ありとあらゆる英語表現とセットになっている「正しい日本語訳」を、英語学習にいかにうまく活用していくかがポイントになります。
■英語のテキストも「日本語ファースト」で
みなさん、これまでの英語のテキストを使った勉強では、まず英語を読んでから日本語訳を確認することが多かったのではないでしょうか。
これからは、「逆転の発想」でテキストを使ってみてください。テキストを、あなたが発信したいことをまとめた自己発信ノートの、日本語を英語にするための「材料箱」と考えるのです。
そのためにも、これまでのように英語のテキストは、ただ人気だったり、定番だったりするものを選ぶのではなく、あなたが話したい内容の日本語の文章が入ったテキストを能動的に探す必要があります。
あるいは、あなたが持っている既存のテキストで日本語の文章を見ながら、自分の発信に使えそうな文章があればそれをそのまま、自己発信ノートに入れていく方法でもオッケーです。
いずれにしても、英語のテキストは、日本語と英語が両方あるものを選びましょう。日本人向けのテキストであれば、ほとんどは日本語訳がついていると思います。
もし、テキストの日本語訳がすべてあなたの発信に使えそうなら、そのまま「自己発信ノート」にしてしまえばいい。
とにかく、英語の学習を、これまでの「受け身」から、発信のために「能動的」に選んでいくスタイルへと変えていくことが重要です。
もちろんテキストは、かならずしも紙の本でなくても構いません。適切な英語と日本語訳が示されていて、信頼がおけるものであれば、ネット上の英語学習サイトや翻訳アプリを活用してもいいでしょう。
■日本語はかならず「左側」に置こう
「自己発信ノート」をつくる際、かならず守っていただきたいルールがあります。
英語の教科書、参考書って、かならずと言っていいほど英語が左、日本語が右にありますよね。そして、横書きであれば、私たちは左側にあるものから読むのがふつうです。
そう、英語のテキストって、英語から先に見るのがあたりまえになっているのです。
それは、「英語でインプット」する、「学習する」という発想だからです。
しかし、これまでお伝えしてきたように、「日本語でアウトプット」することがこの勉強法の出発点です。ですので、いままで使用してきたテキストを、左右を逆の形に書き換えてほしいのです。
あなたの「自己発信ノート」には、学習の出発点となる日本語を左側に置き、そして、右側にそれに対する英語の文章を置いていきましょう。
■細かな文法にはこだわらなくていい
日本語で「自己発信ノート」を作成し、英語に置き換えをする際に、細かな文法にこだわる必要はありません。
先日、友人のパトリック・ハーラン氏(パックン)と仕事で、英語の勉強法について話す機会がありました。彼はよく講演で、「日本人は英語が『しゃべれない』のではなく、『しゃべらない』のだ」と言うそうです。
たとえば、「私のお父さんは銀行で働いています」という日本語を置き換えする際に、「My father work bank.」とまで言えれば十分で、アメリカ人は三単現の「s」がなくても、前置詞の「at」がなくても、100%理解できるとのことでした。
ようは「細かな文法は違っても、あなたが伝えたいことは伝わる」ということなのです。
■驚くほど正確な生成AIをフル活用
「日本語脳」を基軸とした英語学習の場合、日本語を英語に変換するのが簡単ではない、あるいは、へたな変換をすると、あまり外国人が使わない、ぎこちない英語になってしまうのではないかとの懸念もあるでしょう。
しかし、英語テキストの日本語訳を逆利用することで、適切な英語訳が載っていることになりますので、心配は無用です。
持っている英語のテキストに自分が話したい内容と同じ英文が見つからない場合は、信頼おける翻訳アプリ、生成AIに頼ってもいいでしょう。いまや生成AI(ChatGPTなど)は驚くほど正確なので、フル活用していきましょう。
また、このように「日本語ファースト」で「日本語脳」をフル回転させて、日本語の全訳を頭に入れてから英語を読むと、英語だけで読むよりも、受容力、吸収力が格段にアップすることを実感できると思います。
あらためてポイントを整理すると、
(1)英語のテキストは、自己発信に役立つものを能動的に選ぶこと
(2)日本語を「左」に置き、日本語でのアウトプットを出発点とする
(3)英語の細かな文法にこだわりすぎない
――の3点です。
■自己紹介文を日本語で書いてみよう
ここまでのノウハウを踏まえて、それでは、具体的な「自己発信ノート」のつくり方に入りましょう。
まずは、自分が話したいことについて、日本語で文章を考えてみましょう。そしてその内容を、日本語でノートに書いてみてください。私なら、次のような感じです。
「私の名前は中川浩一です。1969年に京都で生まれました。外務省に24歳で入り、エジプトでのアラビア語研修を命じられました。エジプトでは、新しい語学の習得のために大変努力しました」
これを英語に変換します。英語のテキストに近い英文がなければ、生成AI、電子辞書、翻訳アプリなどを活用します(いまや、日本語を入れれば、英文も発声してくれます)。私の自己紹介は、上記のような英語になるでしょうか(図表1)。
くり返しますが、大事なのは、最初からテキストに書いてあることを暗記するのではなく、自分が話したいことを決めてから、それを英語にするためにテキストを使うことです。
「インプット」→「アウトプット」ではなく、「アウトプット」→「インプット」の順番です。
例えば「大変努力しました」は「I tried as much as I could」など、さまざまな英語が使えますので、正解は一つではありません。「頑張りました」に置き換えてもいいですね。とにかく自由な発想で置き換えてみましょう。
■日本語で話せないことは英語でも話せない
自己紹介が終われば、家族の紹介、仕事の紹介(あなたが関わっているプロジェクトなど)、趣味の紹介など、日本語であれば、おそらく無限に広がるのではないでしょうか。
逆に、これが日本語で広がらないようだと、当然、それを英語で話すことなどできるはずもありません。
あたりまえのことですが、なぜか日本人は、話す内容もないのに、インプットだけをしようとしてしまいがちです。
そうならないためにも、「何を話すのかをまず日本語で決めて、そこから英語に置き換える」ことを徹底しましょう。
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中川 浩一(なかがわ・こういち)
ビジネスコンサルタント
1969年京都府生まれ。慶應義塾大学卒業後、1994年外務省入省。1998~2001年、在イスラエル日本国大使館、対パレスチナ日本政府代表事務所(ガザ)、PLOアラファト議長の通訳を務める。その後、天皇陛下、総理大臣のアラビア語通訳官(小泉総理、安倍総理〈第1次〉)や在アメリカ合衆国日本国大使館、在エジプト日本国大使館、大臣官房報道課首席事務官などを経て2020年7月、外務省退職。
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(ビジネスコンサルタント 中川 浩一)

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