※本稿は、三上ナナエ『一生使える「敬語&ビジネスマナー」』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■信頼される人のメールは、こんな心配りをしている
メールは、相手が見えない文章だけのコミュニケーション。できる人はそれを前提に、相手の立場に立ってメールのやりとりをしています。
では、できる人のメールには、どんな共通点があるのでしょうか。
1 返事が早い
できる人は、とにかく返信が早いです。だからと言って、適当に返信をしているわけではありません。
内容を読む時間がない場合は、「メールが届きました。出先なので、帰社しましたら内容を確認いたします」など、「届いた」ことだけでも一報をくれます。
メールを送ったのに相手から返事が来ないと、「あれ? もしかして届いてない?」と心配になったり、「失礼なメールをしてしまった?」と気になってしまいます。
待つ側にとっては、時間が長く感じられるものです。
内容に対しての回答が準備できていなくても、できれば24時間以内に「届きました」と一報を入れることを心がけます。
休暇中や出張中は、不在通知の自動返信メールの設定をしておくといいでしょう。不在理由と不在期間を明確に伝えることで、相手も安心できます。
2 パッと見やすい
できる人のメールは、内容がわかりやすいのが特徴です。
「メールは読ませるものではなく、見せるもの」と、どなたかが言っていたのが印象に残っています。つまり、パッと見て情報が拾いやすいということ。
箇条書きにしたり、太字や記号を使ったり、読み込まなくてもポイントが掴めるように工夫しましょう。
■受け取り側にも親切な「件名の書き方」
3 件名で内容がわかる
件名の付け方は非常に大事です。
受け取った側が、中身を読まなくても、対応する優先順位を把握できるからです。ですから、「ご相談です」「お知らせ」だけでは不親切です。
件名は、3ステップで整えましょう。
ステップ① 冒頭に「結論どうしてほしいのか」を書く
件名の冒頭には「結論として、どうしてほしいのか」を書きます。
さらに、【 】で強調すると視認性が高くなります。
例えば、【ご確認のお願い】【訂正のお願い】【時間変更のご連絡】【資料再送信】【キャンセルのお詫び】など。
ステップ② 次に「年月日、回数」を書く
次に、「年月日、回数」などを打ちます。
例えば、「○月○日(水)」「第5回」「2025年度」など。
ステップ③ 最後に「何の」を書く
最後には、「何の」を書きます。
例えば、「~会議」「~説明会」「~のお打ち合わせ」「A社見積もり」など。
×チラシの件
→○【校正のお願い】3月展示会案内のチラシ
×定例会義の件
→○【場所の変更のお知らせ】3/14定例会議
なお、相手からのメールに返信するときは、「Re:」をつけたまま返信します。何に対する返信なのか、わかりやすくするためです。
やりとりする中で、メールの内容が変わったら「Re:」を外し、内容に沿った件名に変えましょう。このひと手間で、メールを受け取った側があとからメールを確認する際に、件名で判断しやすくなります。
■気が立っているときは、すぐに送らず一晩冷静になる
4 冷静に「間」をおく
無機質な文字は、そこに感情や声の調子、トーンなどを表現できないばかりに、時として相手の心に相当なダメージを与えてしまいます。
例えば、腹が立って、どうしても相手に何かひと言もの申したいとき、ひとまずメールを送るのは止めましょう。あとから必ず後悔します。
我慢できないときには、一旦宛先は抜いて、メールを書いてみて、送らずに一晩寝かせてみてください。そして、翌日に読み返すと「これは、そのまま送ったらまずいな……」と思うはずです。気が立っているときは、すぐに返信しないこと。
寝かせることで気持ちが冷静になり、フラットなメールが書けるようになります。
POINT
デキる人のメールは、
細部までしっかりこだわっている
■角が立たない「お断りメール」の上手な書き方
マナー研修では「お断りのメール」について、多くの質問をいただきます。
ビジネスでは、相手の要望に対して、断らなければいけない場面が必ずあるものです。どうすれば失礼な印象にならないか、迷うことも多いでしょう。
でも、連絡を取らないことには、先へ進めません。
その後の関係を保つためにも、伝えるべきことは伝えつつ、言葉は丁寧に選びたいものです。
まず、大事なのは「結論がわかるように伝えること」です。
気を遣い過ぎる言葉は、相手を勘違いさせたり、「これはどっちの意味なんだろう?」と再確認させることにつながり、余計な時間と手間をかけさせます。
失礼にならない配慮は大切ですが、「検討中です」「この条件では難しいかもしれません」といった曖昧な書き方は避けましょう。
■クッション言葉からスタートしよう
メールは、表情や声の調子など感情が伝わりにくいので、クッションになる寄り添う言葉からスタートします。
「申し訳ございませんが」「大変恐縮ではありますが」「残念ながら」「せっかくですが」など、残念に思う気持ちが伝わる表現を心がけます。
始めから「お引き受けいたしかねます」「お断りいたします」と伝えると、突き放した冷たい印象を与えますので、使わないようにします。
依頼をいただいたということは、あなたを信頼してくださっている証拠。信頼、期待に応えられないことに対して、相手を気遣う言葉を入れるといいでしょう。
「ありがたいお話なのですが」「身に余る光栄なことなのですが」「お引き受けしたい気持ちはあるのですが」「お役に立てず恐縮ですが」など、感謝の気持ちを一緒に伝えます。
■配慮のひと言が好印象につながる
お断りする際のフレーズをいくつかご紹介します。
「今回は見送らせていただくことになりました」
「今回は」という限定的な言葉で、条件やタイミングの問題で今回はたまたまお断りになったと伝わります。
また、「お断り」という言葉よりも「見送る」という言葉のほうが、柔らかい表現として伝わります。
「ご要望に添えず申し訳ございません」
へりくだる気持ち、お詫びの気持ちが伝わりやすい言葉です。
断る内容の言葉のあとに添えます。相手の扱っているサービスや製品などの提案をお断りするときにも使えます。
「お力になれず申し訳ございません」
相手が特に困っている状況が想像される場合に使います。何とか対応したかった気持ちが同時に伝わるでしょう。
角が立たない表現でもあります。
お断りのメールは今後の関係に影響を与えるため、慎重に内容を考えて送る必要があります。急いで返信するのではなく、少し時間をおいて、失礼な物言いになっていないかを確認してください。
なお、今後もお付き合いのある取引先などは、念のため信頼のおける同僚・上司にチェックしてもらうといいでしょう。
せっかくのご依頼をお断りするのは気が引けますが、礼儀を重んじた書き方をすれば、相手の気分を害することはありません。
むしろ、よい印象を残すこともできます。
さまざまなフレーズを使いこなして、メールの達人になりましょう。
POINT
お断りのメールは慎重に。
フレーズを増やして、より配慮が伝わるように
----------
三上 ナナエ(みかみ・ななえ)
元CA・人材教育講師
新卒でOA機器販売会社に入社し、販売戦略の仕事に携わる。その後、ANAに客室乗務員として入社。
----------
(元CA・人材教育講師 三上 ナナエ)