※本稿は、高橋暁子『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。
■もらって嬉しいSNSのコメントは?
Facebook、X、Instagramなど、一対一ではなく一対多のSNSでの振る舞いから、気持ちが見えることがあります。
投稿に対してまめに「いいね」やコメントがついている場合、もっと親しくなりたいとか、好意や尊敬の気持ちがあるとか、評価されたいと思っている可能性が高くなります。
コメントもありきたりなものではなく、しっかりと練られた長いコメントがついていた場合は、特別な思いが読み取れます。
A すばらしいですね!
B このような考えは、初めて知りました。視点を変えるという観点は自分にはなかったので、とても勉強になりました。先日おっしゃっていた言葉の意味が初めてきちんと理解できた気がします。ありがとうございました。
たとえば右記のようなAとBの二つのコメントがついていたとして、Aもシンプルに褒めるコメントをしているので、けっして悪くはありません。
しかし、Bのほうはきちんと理解したうえで、先日の自分の言葉もしっかり聞いていたことが伝わるため、勉強熱心とか仕事熱心などのプラスの印象を覚えるでしょう。もっといろいろ教えてあげたいという気持ちにもなるのではないでしょうか。
■コメントの強要はもちろんNG
なお、SNSは本来見られる時に見て、反応できる時に反応すればいいというものです。必ず見て返事がほしい時は、個別のメッセージやメール等で連絡するべきです。
部下が自分の投稿をあまり見ないと非難したり、「いいね」やコメントを強要するような振る舞いは、ソーシャルハラスメントに当たるので、くれぐれも気をつけてください。ソーシャルハラスメントとは、職場の上下関係などを背景に行われるパワーハラスメント、嫌がらせ行為を指します。
異性の部下の場合は、内容によってはセクハラととられることもあります。コメント内容には特に気をつけ、プライバシーに踏み込みすぎないことです。また、業務以外の個別のメッセージのやり取りなどは慎んだほうがいいかもしれません。
■仕事がスムーズに進むメールの結び文
メッセージの長さや文面からわかることもあります。あまり難しいことではなく、多くの人が感じることです。
ビジネスのメッセージのやり取りで以下のような返信を受け取った場合、あなたはどのように感じるでしょうか。
A 承知しました。よろしくお願いします。
B 承知しました。出来上がるまで、少々お待ちください。朝晩と寒い日が続きますので、ご自愛ください。
C 承知しました! 最新の情報を入れた資料をご用意しますので、少々お待ちくださいませ。朝晩と寒い日が続きます。インフルエンザなどにかからぬよう、ご自愛ください。
Aは必要最低限の内容は押さえられていますが、事務的すぎて、少々そっけなく感じます。
Bはそれに比べて丁寧で、Aよりも好印象を受けるのではないでしょうか。ただ時候の挨拶などが入っただけでも、印象はかなり変わるのです。
Cはやり取りが少々くだけているため、親しみを感じます。担当者と直接顔を合わせたことがあり、何年もやり取りしている場合などは、お互いへの気遣いの言葉などがあるとより一層親しみを感じることができます。仕事がスムーズに進む効果なども期待できるかもしれません。
Aがいけないわけではありませんが、Bのほうが相手に良い印象を与えるでしょう。相手と交流がある場合は、Cくらいくだけて親しみを覚える内容にしてもいいでしょう。
時候の挨拶、結びの文などには、意味があります。ただ事務的なやり取りにとどまらず、相手に対しての気遣いを伝えたり、仕事をスムーズに進める効果を持つのです。
■部下から喜ばれるメッセージの特徴
目上の人からの声かけは、基本的には構えるもので、必ずしも嬉しいものではありません。中には、「上司から話しかけられてしまった」というだけでストレスを感じ、萎縮してしまう若者もいるほどです。
メッセージの場合も、上司から部下に送る場合は、部下のやる気を引き出し、仕事の進状況などを把握し、問題があれば適切な対処をするという目的を忘れないことが大切です。
前提としてお互いには立場の違いがあること、部下を萎縮させる可能性が高いこと、部下からノーは言えないことなどを理解して送るべきです。
しかし、それでもやはり嬉しいメッセージにできます。
たとえば、仕事をねぎらっていたり、感謝の言葉が添えられていたり、仕事ぶりを評価・称賛していたりすれば、もらって嬉しいメッセージになります。同じ内容を送る場合でも、意識してそのような言葉を加えるようにすると、喜ばれるメッセージにできます。
■「期待しています」で締めるのはどうか
仕事に失敗したり苦労したりしている部下には、励ましのメッセージや、サポートを申し出る言葉などがあると喜ばれます。
「お疲れさまです。新しい業務に慣れてきましたか。
前の部署と業務がまったく違うので、戸惑うことも多いかもしれません。
僕も異動したばかりの頃は困ることばかりだったので、よくわかります。遠慮せず、メールでもいいので質問してくださいね。
なお、僕は以下のサイトで勉強しました。情報が多いので、参考になるかもしれません。~URL~」
「プレゼン、お疲れさまでした。
今回、担当を○○さんにお任せして本当に良かったと思っています。○○さんが持つ専門知識がふんだんに取り入れられていたおかげで、説得力のあるプレゼンにできたと思っています。
遅くまでがんばっていたので、疲れがたまっているかもしれません。今日はしっかり美味しいものでも食べて、ゆっくり休んでください。
来週からさらに忙しくなりますが、期待しています。」
■クライアントへの気遣いも忘れない
クライアントに対して送る場合も、文面は重要です。
用件だけ送ればビジネス的には事足りるものの、良い関係を築きたい相手、長く付き合う相手とは、それだけのやり取りではもったいないでしょう。ただ丁寧なだけの堅苦しいメッセージでは、慇懃無礼(いんぎんぶれい)に見えたり、マイナスの印象を与えたりすることもあります。
たとえば相手の身体を気遣ったり、時候の挨拶などを入れるだけでも、印象は大きく変わるものです。前述の例のように、風邪やインフルエンザ、花粉症など、季節に合わせて気遣う言葉を入れるだけで、印象は大きく変わります。繁忙期や年度末などには、いたわりの言葉などがあるといいでしょう。
仕事ぶりに満足しているのであれば、その事実に言及することでモチベーションは大きく変わります。クライアントの状況がわかっているのであれば、気遣う言葉があるとなおいいでしょう。
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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。
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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)