後悔しないマンション選びをするために気を付けるべきポイントは何か。不動産コンサルタントの後藤一仁さんは「2LDK、3LDKなどの区分だけでは住みやすいかわからない。
必ず間取り図を確認し、8つのポイントをチェックしたい」という――。
※本稿は後藤一仁『中古マンション これからの買い方・売り方 絶対に損したくない人のための最強バイブル』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■1階の物件の間取りは「ドライエリア」という表示に注意
物件概要のところに大きな問題がなさそうであれば、間取りを確認します。とくに居住性にかかわる部分です。
使いやすそうな間取りか?

使いやすそうな間取りかどうかをまずチェックします。後述する「センターインタイプ」「ワイドスパンタイプ」の2つの間取りや「角住戸」は、希少性があり人気です。
通常「バルコニー」であることの多い部分が「ドライエリア」と表示されていないか?

たとえば、表記上「1階」となっていても「ドライエリア」との記載があった場合は、該当住戸は実際は地階である可能性が高いです。

「ドライエリア」とは、建築物の地下室部分の、外壁の周囲を掘り下げて設けた空間ことで、「空堀(からぼり)」とも呼ばれています。建築基準法では、地下を居室として利用する場合には原則として「ドライエリア」を設けることが定められています。
■どの部屋も6帖に満たない物件は、選んではいけない
6帖以上の居室は確保されているか?(6帖未満の居室しかない場合は原則NG)

不人気間取りではないか?(「センターリビングタイプ(窓なしリビングのある間取り)」や「メゾネットタイプ」)

変形した間取りではないか?

柱形が居室にくい込んでいて、使いにくそうではないか?

逆に柱が居室の外にあるアウトフレームは、居室のスペースが広くとれるために、使いやすく人気があります。

方位マークを確認(Nは北)。メインバルコニーの向きはどの方位を向いているか?

窓がない居室(間接採光居室)はないか?

陽当たり、風通しはよさそうか?
■居住性を重視した、おすすめの間取り2タイプ
①センターインタイプ
玄関から居室に向けた動線が左右に振り分けられる(エリアが分けられる)「センターインタイプ」は、少し価格が高くなる傾向はあるものの、稀少性があり人気です。

「PP分離」といって、住戸内で寝室などの個人的な空間(Private)と、家族などと共有できるリビングやダイニングなどの場(Public)が分かれているのが魅力です。来客時も在宅の家族を気にせずリビングに通しやすいといえます。
また、リビングでの話し声やテレビの音などが、リビングと反対側のバルコニーに面した洋室には聞こえにくく、プライバシーを確保しやすいのも特徴です。
他にも、玄関を開けても居室が見えない、両面にバルコニーを配置できることが多い、間取り変更しやすい(部屋と部屋が隣り合っていることが多いので、子どもが独立後、大きな寝室にすることも可能)、生活動線が短い、資産価値が保たれやすいなどのメリットがあります。
■ワイドスパンタイプはデッドスペースが少なく、採光性がよい
②ワイドスパンタイプ
ワイドスパン型のメリットは、廊下面積を減らせるため、デッドスペースが少なく、有効スペースが多くとれることです。
すべての居室がリビングから出入りするようなプランにもできるので、リビングを中心に、家族が顔を合わせる機会の多い生活を築きやすい空間をつくれます。玄関側の居室を独立させることもできます。ほかにも
・ワイドスパンのメインバルコニー面にリビング、その両側に居室を配置できるため、採光面に優れた明るい空間にできる

・リビングに面している居室のドアを引き戸にして普段は開放して収納しておくことで、2LDKとしても使える

・バルコニーを広くできるため、テーブルやチェアを置いて、アウトドアリビングのように活用できることもある
といった点もあり、非常に使い勝手のよい間取りであり、資産価値を保ちやすい面があるのです。
■「田の字型」の間取りは、なぜ住みにくいのか?
マンションで最も多く見られる住戸タイプは「田の字型」といわれる、まるで「田」の字のように見えるレイアウトです。
田の字型はワンフロアに同じようなプランの住戸を並べて多くつくることができて、水回りを中心に集めるなど施工効率を上げているため、建設コストを抑えやすく価格が比較的抑えられています。
現在の日本のマンションで最も多く目にするプランです。
田の字型プランは専有部分内の廊下部分が長くなり、居室有効スペースが狭くなる傾向があります。

一方で、共用廊下に面する2つの居室が廊下で仕切られているため、住戸内での居室間の音が聞こえづらくプライバシーが保ちやすいというメリットもあります。
このタイプには「縦長リビング・ダイニング(LD)」と、長辺が接している「横長リビング・ダイニング(LD)」の2種類があります。
縦長LDタイプはLD横のバルコニーに面した居室の独立性が高いことが特徴である一方、ダイニングの奥まで光が入りにくい弱点があります。
横長LDは、ワイドスパンにバルコニーに面することで、明るく風通しがよい開放感のあるリビングダイニングをつくれる一方で、LDに隣接して引き戸などで仕切られた部屋がもうけられることが多く、窓のない、独立性の低い居室ができる可能性がある点が弱点です。
田の字型タイプの弱点

「田」の字の上部分の2つの居室は共用廊下側に面することが多く、居室の窓のすぐ前を他人が通るため、プライバシーの観点からなかなか窓を開けられず、昼間でもカーテンやルーバー、ブラインドなどで目隠しをしなければいけないこともあり、閉塞感が気になることが多いのが弱点です。
弱点を補うための工夫がされているとよい

玄関前がいきなり共用廊下に面することを解消するために、共用廊下から少し引っ込み部分をつくり、玄関の前にスペースを確保する「アルコーブ」をつくったり、玄関前に門扉をつけて「ポーチ」をつくったり、共用廊下と共有廊下に接する居室との間に「吹き抜け」をつくったり、欠点を補うプランも出てきています。
■リノベーションしにくい間取りは人気がない
リビングがセンターにあることで、角住戸ではない場合は、リビングに陽が当たらず、薄暗い印象になりがちです。
築年数が経過したマンションによく見られ、リノベーションしにくい傾向があります。
■ネットで物件を探すときは「サービスルーム」を計算に入れる
間取りは本命以外も調べるようにしましょう。
たとえば2LDKを探しているときは、スーモの場合、「2K/DK/LDK」のところのみを検索するのではなくて、念のため「1K/DK/LDK」も検索してみることをおすすめします。
「2K/DK/LDK」だけだと、2LDKしか検索に引っかかりませんが、「1K/DK/LDK」も入れると、実質は2LDKとして使える可能性のある「1LDK+S(または1SLDK)」がヒットする場合があるからです。このときは「専有面積が広い順」などに並び替えるとよいでしょう。

建築基準法上は居室として認められず、S(サービスルームまたは納戸)として「1LDK+S」と表記されていても、実際は、窓も収納もあり、工夫次第で居室としても使えるサービスルームは結構あります。
同じように3LDKを探している場合は、「3K/DK/LDK」だけではなく、「2K/DK/LDK」も検索に加えてみるとよいでしょう。
■サービスルームでも「実質的に個室にできる」場合がある
サービスルームは「資産価値」という観点から見るとどうか、気になる人も多いかもしれません。
もし2LDKとしても使えそうな「1LDK+S」を購入して、将来売却する場合、同じように「2K/DK/LDK」でのみのサイト検索では、その存在に気づかれにくくなるというマイナス面はあります。
また、居室ではなくS(サービスルームまたは納戸)になっている理由が、採光不足による場合もあり、窓があっても小さく陽当たりが悪い場合や、換気がしづらいケース、エアコンが設置しにくい(または設置できない)こともありますので、それらの点はよく確認する必要があります。
■居室として使うためには、エアコンが設置できるか否か
サービスルームを居室として使用するためには、エアコンが設置できるか否かが重要です。また、コンセントの数や位置、テレビ端子の有無も確認しましょう。
サービスルームはこのように居室にするときのスペック不足に注意する必要はありますが、居室として使用する以外にも、窓が小さく陽当たりがあまりよくない場合は、逆に日焼けさせたくないものを置くスペースに使ったり、静かに集中して何らかの作業をする書斎や仕事をするスペース、趣味の部屋、来客時の臨時の寝室などにも利用できます(ただし、湿気などには注意が必要です)。
もちろん、できればサービスルームではなく居室のほうがよいのですが、希望のエリアになかなか物件がない場合、サービスルーム付物件は販売価格が安めに設定されることもあることから、完全にNGとするのではなく、エリアや物件毎、個別にそのサービスルームがあるマンション住戸を検討し、マイナス面とプラス面を勘案して判断するとよいでしょう。

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後藤 一仁(ごとう・かずひと)

不動産コンサルタント

1989年から36年以上、常に顧客と接する第一線での不動産実務全般に携わる。大手不動産会社のハウジングアドバイザー、東証一部上場企業連結不動産会社の取締役を経て、「誰もがわかりやすく安心して不動産取引ができる世の中」をつくるために株式会社フェスタコーポレーションを立ち上げ、代表取締役に就任。首都圏を中心に不動産の購入、売却、賃貸、賃貸経営サポートなどを行う。
著書に『東京で家を買うなら』(自由国民社)、『マンションを買うなら60m2にしなさい』(ダイヤモンド社)がある。

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(不動産コンサルタント 後藤 一仁)
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