■1日に1回、本を話題に出そう
子供を本好きにするヒントを「ヨンデミー」代表の笹沼颯太さんに聞いた。
「読書嫌いの子が本を読むようになるには、実は読んでいない時間が大事。
読書を楽しめるようになる効果的な仕掛けを、親のほうで仕込みましょう」
笹沼さんによると、読んでいる間だけではなく、本に出合う瞬間、読み終わった後に誰かと感想を話す時間など、本に関するすべての時間が、読書体験といえるそうだ。
「そもそも『本を読みなさい』と親に何度言われても読まない子は、読書=勉強につながるもの、楽しくないものと思っている場合が多く、まずは読書=楽しいもの、とイメージを置き換えることが始めの一歩になります。おすすめは、毎日1回、本の話題を子供との会話に自然に出すことです」(笹沼さん・以下同)
親が先に本を読んでおく必要はない。「今度○○が映画化するらしいね」などと、話すだけでOK。「話題に出すだけ」と、続けるハードルが低いので親たちにも好評で、実際に子供が本に興味を持つのに最も効果を感じた技だという。
「子供が本を読まないと悩む家庭でも、子供が小さな頃には読み聞かせをしていたご家庭が多いんです。『あれ覚えてる?』などと思い出を振り返る感じで話すも良し、『お母さんが小さい頃にハマった〈若草物語〉っていうシリーズがあって』などと、自分の好きだった本について話すも良し。目的は本って面白そう!と思わせることなので、子供が読めないくらい難しいものでもOK。夕飯時に話すという家庭が多いですね」
続けることで、子供は1日1回は本のことを思い浮かべるようになる。しかも、ちょっと楽しい会話の中で。地道ながら、これで子供の中にある本への嫌悪感が楽しいものへと置き換わっていき、「ちょっと読んでみようかな」となる子が多いという。
「最大のポイントは『親も楽しく』です。
本当に話題に出すだけでいい。子供からの反応が特になくてもOKです」
■親が「推し本」を熱く語る
子供が本を手に取るなど、興味を示したり読むようになってきたら試してほしい、会話の応用技があるという。
「子供はまねをして学ぶ『まねぶ』が得意です。まねぶことに大切なのが、お手本があること。そこで親にやってほしいのが、親自身が過去に読んだ本をどう楽しんだのか、読みながらどんなことを考えたのか、主観でワクワクと語ること。『このキャラが推しなんだよね。現実にいたら、絶対かっこいいと思う』『お母さん、お父さんにも以前、似たような出来事があってね』『私は違う人が犯人だと思っていたんだけど』など、なんでもOKです。映画を見たあとに立ち寄ったカフェで、感想を語るくらいの温度感が理想です」
そうすると子供は「お母さん楽しそう。本ってそんなに面白いのかな」と、その姿をまねして読書を楽しめるようになるという。そもそも本の楽しみ方は千差万別。ただ、まねするサンプルの一つになってやればいいので、ここでも「いい感想を言わないと」などと気を負わないことが大切だ。
また、もう一点、ここで気をつけたいのが親から子へ質疑応答をしようとしないこと。
子供からの答えが親の考えと違うと訂正したり、誘導したりしたくなってしまう、尋問のようになることが多いからだ。そうなると子供は楽しくなくなってしまう。あくまで親がどう感じたか「楽しむお手本を見せる」にとどめよう。
■子供が手に取るように本を並べる
家に本を置くのにもコツがある。
一つ目は子供の動線に合わせて、目に入る場所に本を置くことだ。リビングやトイレのほか、階段や玄関に置いている家庭もあるという。二つ目は、子供が気になったらすぐに手に取れる場所、高さに並べること。
三つ目は、本を定期的に入れ替えること。自宅を「出張図書館」にするイメージだ。
「ずっと同じ本が並んでいると風景の一部として子供は興味をなくします。時折ラインアップが変化することは、子供にとって『あれ? なんだろう?』と興味を持つきっかけになります。図書館を活用して、子供の興味に合わせすぎず、幅広く、ある意味適当に選ぶのがおすすめ。
というのも『読んでほしい』と一生懸命に思って選ぶと子供も親の気持ちを察してしまうもの(笑)。プレッシャーになってしまい、また本から遠ざかることにつながります。読んでもらえなくても、親もがっかりしないで済むように『適当に』がうまくいくコツです」
しだいに、「気づいたら子供が本を取り出して読んでいた」となる家庭が多いという。
「残念ながら、子供を急に読書家にするような魔法の技はありません。しかし持続すれば成果は出るもの。親も子供も続けやすい形を探してもらうのが一番だと思います」
教える人

ヨンデミー代表 笹沼颯太さん

子どもが読書にハマるオンライン習い事「ヨンデミー」運営。

※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。

(プレジデントFamily編集部 撮影=堀 隆弘)
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