「かまくら国語塾」主宰の中本順也さんがおすすめする家庭での読解力アップ法のひとつめは「朗読音声」を聞かせること。近年は、Apple MusicやSpotifyなどの音楽サブスクにも、昔話などを朗読した音声がアップされている。
繰り返し聞くうちに「悪者は成敗される」「真面目な善人は最後には幸せになる」といった“物語のパターン”がつかめるようになるからだ。
「わが家でも、朝の支度中やお風呂に入る前などちょっとした隙間に聞かせるようにしていて、子供も喜んで聞いています。おすすめは『世界の名作童話~音楽とナレーションで楽しむ物語~』(1話あたり10分前後)。有名な声優によるナレーションやセリフ、世界観に引き込む効果音など、子供が興味を持つ工夫がされています。わが家は年少から小学6年生まで3人子供がいますが、一緒に聞いて『竜宮城まで? 人間はそんなに深くもぐっていられないだろ』などと、突っ込みを入れながら盛り上がっていますね(笑)。一番は『フランダースの犬』、次に『赤ずきんちゃん』『マッチ売りの少女』がすきなようです。いろんな語彙(ごい)に触れることもできます」
想像力を高める点でも良いという。
「絵がない分、情景や登場人物の様子を思い浮かべながら聞くことになります。ドライブ中にかけるのもおすすめ。
■「小学生新聞」の音読
もうひとつの「細部を捉える力」、一つ一つの言葉の意味や文章のつながりをつかむ力をつけるには「小学生新聞」の音読がおすすめだという。
物語ではなく説明文である新聞を使うのがポイント。日常であまり使わない学習語彙を獲得できる。
「難しい文章を読めないのは、言葉を知らないから。例えば『地球温暖化が』『二酸化炭素が』『国連が』などという文を読んだとき、子供からすると全く非日常な世界なので、経験からなんとなく意味を考える、ということもできずお手上げになってしまうんです。わからないなりにも読んで声に出しておけば、少なくとも『聞いたことのある言葉』になります。続けるうちにぼんやり意味が見えてきたり、あくまで日常にある身近なものに感じたりしていくものです」
そのうちニュース番組を見ていてその言葉が使われたりしたらチャンス。興味を持った瞬間に、親が「一緒に調べてみよう」と誘ってもいい。
「『国語辞典を引こう』と言うと勉強っぽくなるようならスマホで意味を調べるのでもOKです。そんなふうに日常で接するチャンスがある話題という意味でも、音読するのは小学生新聞がベスト。適切でわかりやすい言葉が使われ解説も丁寧、ふりがなも振られています。校正が入っているので内容的にも正確で安心です」
すべて読みなさいと言われると子供もイヤになるので、毎朝「1面だけ読んで教えて」などと短い部分を指定してやるといいという。
「あとは『理科好きな子に育つ ふしぎのお話365』は親が子供に読み聞かせをする用途のものですが、小学校中学年以降の子なら、自分で音読するのに最適な一冊です。結構高度な内容で、たくさんの発見もあり面白いでしょう。365日分あるのもいいですね。あとは音読するのに長さがちょうどいい塾のテキストの説明文なども活用するといいと思います」
音読は脳の活性化にもとてもいい。中本家でも、長男が朝の計算練習の前に音読をしているという。
■「三語作文」を創作!
読む力と書く力はリンクしており、「書く」ことは「読む」力も伸ばすという。中本さんが読解力アップにバツグンの効果があるとおすすめするのが「三語作文」だ。文字通り、三つの単語を使って文章を作る。
親が準備するのは子供が知らない三つの単語のみ。子供はその意味を辞書やネットで調べたうえで、三つすべてを使って120字ほどのストーリーを創作する(単語を使う順は問わない)。最大のポイントは楽しむことで、家庭なら親子で書き合ってからの発表会がおすすめだ。一緒にやってみると案外難しいことがわかる。
「言葉の意味や使い方を知るだけでなく、どんな接続語や指示語を使うべきかなど、前後の文をつなぐ力が鍛えられます。他人にも伝わる文章を書くことが求められるからです。また、自ら物語を構成することで、文章構造への理解も深まるでしょう」
単語を選ぶコツは、日常的に使う言葉のほか、少し難易度の高い抽象的な言葉も入れること。子供が読んだ小学生新聞などから単語を拾うも良し。ChatGPTに「小学4年生で習う言葉の中で、抽象的な言葉やニュースで使われる言葉などを織り交ぜて三つ以上教えて」などと聞いて、単語を挙げてもらっても良し。文章の添削を依頼してもいいだろう。親に添削されないので勉強感が出ず、子供も楽しみやすい。
「スタートはハードルを下げて『右往左往』『ためらう』『紛失』など、文章が作りやすいジャンルの近い単語を三つ選んでやるといいでしょう。
なるべく勉強と思わせないのがポイント。三語作文で作る内容の主人公を決めて物語形式にしたり、毎回を連載形式にしたりするなど、創作の楽しみを味わう形にするのもいいそうだ。
教える人
かまくら国語塾主宰 中本順也さん
すばる進学セミナー代表。近著に『おうちでできる子どもの国語力の伸ばし方』(かんき出版)がある。
※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
(プレジデントFamily編集部)