自分のことがなかなか認められない人がいる。どうしたらいいのか。
マインドトレーナーの田中よしこさんは「『ありのままの自分は素晴らしい』と思おうとするのは、自己肯定感が低い人にとっては難しい。まずは自己肯定感よりも先にアプローチしてほしい“力”がある」という――。
※本稿は、田中よしこ『私は私を幸せにできる 脳が作り出す「無意識の思い込み」にさよなら』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■自己肯定感が低い人は「自己効力感」を意識しよう
自己肯定感は、継続的な努力の結果として身につくものです。
なかなか身につかない……と感じている人は、まずは今の発展途中の自分に優しくしてください。そして、“自己効力感を持つ”ことから始まるアプローチをしましょう。
自己肯定感と自己効力感は何が違うの? と思いますよね。2つの違いを説明します。
自己肯定感とは、簡単に言うと「自分はこれでいいのだ」と思える気持ち。うまくいかないことがあったとしても、「それでも自分は大丈夫だ」と、自分の存在に対して大丈夫だと思えている状態です。
自己肯定感の反対語は、自己否定感。自分が好きになれない、認められずにネガティブな感情に支配されている状態を指します。

自己効力感とは、人が行動や成果を求められる状況下において、「自分は必要な行動をとって、結果を出せる」と考えられる力を言います。
「自分は達成できる」「自分には○○の能力がある」という確信があれば「自己効力感が高い」状態にあり、反対に「自分には無理だ」「自分には能力がない」と考えていれば「自己効力感が低い」状態と言えます。
■「自己効力感」は未来に期待する力
自己肯定感は「自分そのものを受け入れる気持ち」なのに対して、自己効力感は「できると自分を信じられる力」。未来を期待する力、行動を変えるのに背中を押してくれる原動力になるのです。存在そのものではなく、これから“何ができるのか”というもう少し具体的な部分と未来にフォーカスする違いがあります。
どちらも大切な気持ちですが、違った視点から自分を見つめることができます。
自己肯定感が高いと、自分自身に対する自信が持てる。自己効力感が高いと、自分を励まして、私はこんなことがしたいから、もっと頑張りたいと思う力になる。
自分の存在にまるごとOKなんて出せない、素晴らしいと思うのが難しいと感じる人は、「私がこれから成し遂げたいことはなんだろうか?」と、自分にできることを探す自己効力感のアプローチから進めましょう。
■“ありのままの自分”を受け入れるのは難しい
自己肯定感が低い人が一番恐れていることが何か、分かりますか?
それは“他人が自分をどう思うのか”です。誰かと話す時、相手が自分をどう思うのか? 気に入られるために何と言えばいいのだろうか? なんとか穏便にこの場をやり過ごしたい……など、様々な不安でいっぱいになってしまいます。
自己肯定感が低い人にとって、他人とのかかわり方はまるで高い壁がそびえているように感じられます。
そもそも、人間関係そのものが怖くて疲れるもの、なのです。
数少ない心を許せる相手、パートナーや友人にも実は100%リラックスできません。ただでさえ数が少ない友人なのに、目の前の相手にまで嫌われてしまったら……愛想を尽かされてしまったらどうしよう……。こんな不安が心の底にあるのです。
クライアントさんの中には、“バカにされないか心配”“迷惑だと思われたくない”“間違ったことを言ってしまうのが怖い”“つまらないと思われたくない”といった想いを家族相手にも抱いている人がいます。
このような想いや不安を抱えた今の自分が嫌だと思いながら、“ありのままの自分は素晴らしい”と思おうとするのは、自己肯定感が低い人にとって難しいことです。
“嫌だと感じているものを、無理やりに最高のものだと認めなくてはいけない”と押し付けられているからです。
いくら自己肯定感を上げようと頑張っても、現状は変わらないので、疲弊してしまうという「負のループ」にハマってしまうのです。
私が声を大にしてお伝えしたいのは、「嫌だと思っている自分を無理に認めなくてもいいということ」です。
■「私は価値がない」と思っている場合のアプローチ法
例えば、「私は価値がない」と思っている自分がいるとしましょう。あなたは実際にそう思っているので、これは紛れもない自分の中の事実です。では、価値がないと思っている想いと感情を、あなたはどうしたいのですか?
価値がないと思っている自分が大好きだ! と思っている人はそもそも悩んでいません。
生き辛くて悩んでいる人たちは、こういった自分とどう付き合えばいいのか分からないだけなのです。
ですから、いきなり私には価値があると思おう! と切り替えるのではなく、
(1)確かにそう思っている

(2)そして、この思考を持ち続ける自分をどうしたいのか? と考える

(3)なんとかしたいと思っているんだなと確認する

(4)変える方向を考えてみよう
というように、1つ1つ丁寧に確認してあげるのが最初の一歩です。そして、なんとかしたい! 変える方向を探したいと思っている! というあなたに、ぜひ使っていただきたいのが「自己効力感」なのです。
■「自己効力感」は成功体験を重ねると育ちやすい
自分自身をまるごと認めるのは、とんでもなくハードルが高い……と感じている人は、自己肯定感より先に、まず「自己効力感」を身につけましょう。
「私には○○ができる」と思う気持ちは、自己肯定感を補完し、自分の応援団になってくれるからです。自己効力感は、「私には○○が達成できる」と思うと身につく感覚なので、小さな成功体験や自分がやりたいことの成功体験を重ねるだけで、自然と育ってくれます。
成功体験の積み重ねを続けると、「好きなことを楽しむ+達成する」人生の時間が増えます。誰がなんと言おうと私は楽しいと感じる、否定されても、「私は好き」がブレない感覚が増えてきます。やがて、「自分軸」や「自分を認める力」が確立されます。
そうは言っても、うまくできることはない、得意なことはない、私には何もない……。そのように感じて落ち込んでしまうことはありませんか?
どんな想いがあっても大丈夫。自己効力感とは「自分がどんなゴールを達成するのか、達成できるのかを評価する力」。
つまり、未来に対する自己評価なので、今、できるかできないかは関係がありません。
偉大な発明をしてきた偉人たち、空を飛べる! できる! と思えたライト兄弟や、新しいシステムを世界に広げられると思ったイーロン・マスクも自己効力感を存分に使った人たちなのです。
■「自分の顔が嫌い」だった人が変われた問いかけ
自分を好きでない人は、自分を見たくないと感じているので、“丁寧に自分を見つめる”習慣がありません。そもそも、自分自身を丁寧に見てあげようとしていません。
例えば、自分の顔が嫌いと思っていた愛子さん(仮名)は、自分の顔のパーツが嫌で、とにかく別人のように整形したいという気持ちで、自分の顔を見ていました。
こういった視点がクセになっていると、誰でもしんどい想いをしてしまいます。まずは、どこか1つだけ、自分が好きな顔のパーツを見つけてみようという意識を持ってください。
「顔は嫌いだけど、肌は綺麗だと人から褒められます」

「まつ毛が長いところは好きです」
など、これまで見えなかったポイントが現れることもあります。
脳は、質問を投げかけると、答えを探すように動きます。もしかすると、あなたは自分の“ダメなところはどこか?” という質問を脳に出しているのかもしれません。そんな時は、“一番好きなところはどこか?” という質問に変えてみましょう。
■自分のことを丁寧に見つめてみよう
愛子さんは、顔の全部が嫌ではないことが分かったので、他の好きなパーツを見つけられるようになりました。
それだけにとどまらず、「まつ毛メイク」を頑張るようになり、同僚から、以前にも増して「まつ毛」を褒められるようになりました。
そして、まつ毛のメイクがうまい私、おすすめコスメを教えてあげられる自分が好きだと思えるようになり、「これからは、まつ毛でもっと目を大きく見せ、魅力アップをお手伝いしたい」「まつ毛だけでも顔の印象は変えられる!」というように、意識が変わりました。
そして、自分を好きだと思えるところから、未来はこうしたい、もっと楽しく過ごせるかもと思えるようになり、“この美容のスキルで自分をもっと好きになれる”“もっと人にも自信を持たせてあげられる”と「自己効力感」を引き出すことができました。
自分の顔が好きじゃないと思いながら過ごす毎日と、私には好きなパーツがあって、みんなにもスキルを教えてあげたいと思う自分で過ごすのは……どちらが楽しい未来になるのかは分かりますよね。
あなたの好きなところはどこですか?

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田中 よしこ(たなか・よしこ)

マインドトレーナー

マインドトレーナー、コレット代表。自分自身が生き辛さを抱え、本当の自分と向き合った30年間の経験をベースに、心理学・脳科学、コーチングの知見を取り入れ、「自分を本当に知る」ことをメソッド化。オリジナルメソッドである「無意識の言語化®」を確立。個人セッションやセミナーなどを中心に、潜在意識を整え、本心と「未来の理想の思考」を引き出す方法を伝えている。現在まで、約7500人以上の人たちの、本当の自分らしさを手に入れるサポートをしている。カウンセリング、講演会や著書執筆など、多岐にわたり活動する。

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(マインドトレーナー 田中 よしこ)
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