株価が上下し、相場が荒れがちな2025年の投資環境をどう乗り切ればいいのか。桶井道さんは「特に、新NISAで投資を始めた人は心穏やかに投資しにくいだろうが、世界情勢も経済指標も気にせずに、『とにかく買い続けること』が大切。
何も考えず、思考を止めるくらいでちょうどいい」という――。
■世界情勢は複雑かつ不安要素はあるが…
2025年になり、1月の「ディープシーク・ショック」、4月の「トランプ関税ショック」、ウクライナ・ロシア情勢、中東情勢など、世界的に株価に影響を及ぼすことが多く発生しました。台湾をめぐる中国の動きも気になります。そして、トランプ劇場はこれからまだ3年半も続くことで市場はこの先も何が起こるかわかりません。
今年の上半期を振り返れば、やはり4月の「トランプ関税ショック」は影響が大きく、資産額としても心理的にもショックを受けられた方が多かったことでしょう。投資歴26年でいろいろな経済状況や突発的な変化を経験し、ちょっとやそっとじゃ動じなくなった私も、あの下落には少し動揺しました。
暴落時は評価額をあえてチェックしない私ですが、短期間で(推定)3000万円くらいお金が溶けていたことが後で指数などを確認したところ判明しました。
短期間でこの額は初めてのことです。2番目に大きなダウン額はコロナ・ショックのときですが、当時の資産額は1億円程度でしたので、当然1億8000万円の今のほうが、ダウン額が大きくなるわけでインパクトは強いです。
しかし、期間を要さずにしっかりと元の資産額まで戻り、6月末現在では過去最高額となる1億9000万円超まで伸ばせました。つまり、何もなかったことになっています。
やはり、暴落時に狼狽して誤った判断をしない(狼狽売りはしない)、淡々と投資を継続する(買い続ける)、可能なら追加投資をする……そうした投資の鉄則が間違っていなかったという「答え合わせ」ができました。
この下落場面で慌てて現金化すると、一番損をするパターンにはまってしまいます。
■成長してきた歴史
ただ、読者の中には資産額を元に戻すことができたのはただの偶然であり、ラッキーだったのではないかと思われる方もおられるでしょう。ごもっともです。でも、過去を振り返りますと、歴史が偶然ではないことを証明しています。
米国を代表する株価指数であるNYダウ、S&P500、ナスダック総合指数を、30年間の長期チャートで確認してみてください。
過去30年の間に、アジア通貨危機、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、チャイナ・ショック、コロナ・ショックなど、世界経済を揺るがす「ショック」が起こりました。その直後、多くのものを失った人が続出したのは事実です。しかし、同時に重視したいのは、これら株価指数は時間をかけてマイナスを取り戻して、最高値を更新してきたことです。
日本でもアベノミクス以降、日経平均株価やTOPIXは成長しています。その他、世界単位で見ても、経済や株価は短期的にはアップダウンを経験しながらも、長期的にはおおむね成長を続けてきました。それを歴史が語っているのです。
■これからも「そうなるだろう」と言える根拠
歴史はあくまで過去のことで、これからどうなるかは誰にもわからない、と感じる方もいるでしょうが、私は将来も成長していくと確信しています。
その根拠をわかりやすく説明しましょう。
世界人口の増加→モノやサービスの需要増→需要に対応して企業の供給量が増加→企業の売上高・利益の増加→企業の稼ぎに連動する株価は上昇する。そういう見立てです。
もしくは、次のように説明することもできます。
人間は常に便利で新しいモノを求める→それを可能とするためのイノベーションが起こる→新しい需要の誕生→供給する企業が儲かる→企業の売上高・利益・規模が大きくなり、株価も上がる。
前述したように、短期的には世界情勢や経済指標に反応して株価は上下動を繰り返すことがあります。ときには「ショック」もあり得ます。しかし、上記の2つの流れを鑑みると、長期的には株価は上昇することでしょう。もちろん、投資時は需要が増える業界、成長するセクター・企業を選ぶことが前提ではあります。
■心強いエビデンス
続いて、心強いエビデンスを3つご紹介しましょう。
1つ目は、金融庁のつみたてNISAの解説資料です。国内外の株式に長期・積み立て・分散投資をした場合、20年間継続すると「勝率がほぼ100%になる」というデータが提示されています(2001年1月~2020年12月のデータ)。

2つ目は、こちらも金融庁でNISA解説資料です。国内外の株式・債券に長期・積み立て・分散投資をした場合、20年間継続すると勝率がほぼ100%になるというデータが提示されています(1989年以降のデータ)。
3つ目は、MSCI社のオール・カントリー・ワールド・インデックスのファクトシート(2025年5月30日付)です。分かりやすく言いますと、人気の投資信託「オルカン」が連動を目指す株価指数の成績を示す資料です。先進国23カ国と新興国24カ国の約2600銘柄によって構成されており、世界中の企業に分散投資するものです。10年のリターンは、なんと年率9.8%もあります。
これらは、長期・分散・積立により勝率が上がることが分かるエビデンスと言えるでしょう。つまり、世界情勢や経済指標に関係なく、「正しい投資先」を選んで、それをずっと「買い続ける」ということです。
■ドル・コスト平均法
積立を続ける、つまり買い続けることの強さを深掘りしましょう。
積立とは、株価(価格)の動きに左右されずに、淡々と、決まった金額(定額)を、決まったスパン(定期=私は毎月を推奨)で積み立てる投資戦略です。価格が安いときにたくさん購入し、価格が高いときに少なめに購入することになります。均(なら)すことでリスクを減らす効果があります。
これを「ドル・コスト平均法」と言います。
次のグラフをご覧ください(図表2)。これは仮想の投資信託シミュレーションで、縦軸の数字は投信の1口あたりの価格で、時期によってそれが変動していることを表しています。分かりやすさを優先して、始まりは1口100円という価格にしました。
このチャートで、2025年7月1日から2026年6月1日まで、毎月1日に3万円ずつ、12カ月で36万円を積立投資したと仮定します。1年後の2026年6月1日時点であなたは得している(含み益がある)でしょうか? 損している(含み損がある)でしょうか?
おそらく直感では「損している(含み損がある)」と思われるでしょう。投資を始めたときより、価格が半分まで下落しているのですから当然です。
しかし、まさかまさか、このケースでは、あなたはしっかりと得をしている(含み益がある)のです。詳しく解説してみましょう。
世界情勢に関係なく、経済指標など気にせず、投資信託の価格がいくらであれ、あなたは毎月1日に3万円ずつ積立投資をしてきました。毎月同額なので、そのタイミングで、価格が安いときには多く買い付けることになり、価格が高いときには少なく買い付けることになります。具体的には次の表のとおりとなります。

2025年7月1日は1口あたり100円と価格が高かったので、買い付け口数は300口。逆に、2026年3月1日は同25円と安かったので、1200口買いました。毎月3万円を買い付けるので、価格に応じて購入口数が決まることになります。
こうして12カ月で計36万円使って買い付けたのは、全部で8250口。2026年6月1日の価格は50円です。50円×8250口=41万2500円となりますので、投資額の36万円を5万2500円上回っています。あなたはしっかりと得をしていることが分かりました。
■「正しい投資信託」は数種類に過ぎない
もちろん、いくらドル・コスト平均法で投資したとはいえ、間違った投資先を選んでは得しません。正しい投資先を選ぶ必要があります。需要が伸びる業界、成長する企業を選ぶ必要があります。その目利きはどうすればいいのか? 個別株ならさすがにハードルが上がります。そこで、やはり投資信託ということになります。

私は「正しい投資信託」は数種類に過ぎないと思っています。まず、投資先として米国株は外せません。既述のとおり、「ショック」が起ころうと、高値を更新し続けてきた米国株は強いからです。
それを踏まえて、具体的な選択肢を挙げましょう。以下の3つのタイプに投資する投資信託が鉄板です。
・ アメリカのみに集中投資(例:S&P500に連動する投資信託)

・ 全世界に分散投資(例:先進国+新興国に投資する「オルカン(投資信託)」)

・ 先進国に分散投資(例:MSCIコクサイに連動する投資信託)
現在、日本で購入できる投資信託は約6000本ありますが、長期的な資産形成に適した「正しい投資信託」は上記のとおりごくわずかです。これらの中から選択し、「長期」、「分散」(この3つのいずれかを選べば分散できます)、「積立」で淡々と買っていくことが王道であり、再現性の高い投資と言えるでしょう。世界情勢も経済指標も無視し、極端に言いますと「思考停止」くらいでけっこうです。

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桶井 道(おけい・どん)

投資家(投資歴20数年)・物書き(著書6冊)

2020年に47歳で資産1億円+年間配当(手取り・以下同)120万円とともに25年間勤務した会社を退職して自由になる。それから4年で資産1.8億円+年間配当250万円まで成長させる。投資先は世界各国の高配当株、増配株、ETF、リート、投資信託など幅広く100銘柄以上持つ。現在は、両親の介護・見守りをしつつ、単行本や連載などを通じて投資に関する情報を発信している。著書に、『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(宝島社)、『お得な使い方を全然わかっていない投資初心者ですが、NISAって結局どうすればいいのか教えてください!』(すばる舎)、『資産1.8億円+年間配当金(手取り)240万円を実現! おけいどん式「高配当株・増配株」ぐうたら投資大全』(PHP研究所)、『普通の人のための投資 いちばん手軽で怖くない「ゆとり投資」入門』(東洋経済新報社)、『時をかける貯金ゼロおじさん 35年前に戻った僕が投資でゆっくり「億り人」になる話』(KADOKAWA)などがある。(プロフィールイラスト=西田ヒロコ)

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(投資家(投資歴20数年)・物書き(著書6冊) 桶井 道)
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