※本稿は、伊藤羊一『壁打ちは最強の思考術である』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■すぐにできそうな“アポ取り”すら面倒に感じるワケ
「あの人、めちゃめちゃ仕事がデキる! すげー!」
圧倒的に成果を出し、周りからリスペクトされる。あなたの周りにも、思い浮かぶ人はいませんか?
仕事がデキる人とできない人、その違いはどこにあるのでしょうか?
おそらく、その違いは行動の質と量、スピードです。
同じ時間を過ごしていても、より多く、そして速く、成果に結びつくアクションをするという行動力の違い。
では、その「行動」はどうやって生まれるのか? 行動の前にあるもの、それはズバリ、「思考」です。それもスッキリと整った思考があることで、行動が量産されていくのだと思います。
たとえば「新規のお客さんを開拓して、商談のアポをとってくる」というミッションがくだったとします。
この行動を起こすために考えなければいけないことはたくさんあるわけです。「どんな商材を」「どんなお客さんに」「どんな価値を伝え」「どんなタイミングで」「どういうコミュニケーション経路で」……。1件のアポをとるという行動を起こすために、整理すべきポイントはいくつもあるんですね。
これらを一気に組み立てる思考力を磨いた人は、行動の質と量も高くなる。
すなわち、行動の前には思考あり。
■フニャフニャの脳で考えるのはムダ
逆に言えば、頭の中で思考がぐちゃぐちゃと絡み合ってまとまっていない人は、いつまで経っても行動できないということです。
やるべきことはなんとなく浮かんでいるものの、モヤモヤとして形を成さず、言葉にするのも難しい。言語化できないから、それ以上考えを進めることもできずに、会議で提案することはおろか、企画書にまとめることすらできないまま……。
頭の中にはモヤモヤがたまるばかりで、ストレス!
「どうして自分は仕事がサクサク進められないんだろう?」と悩んでいるとしたら、思考力不足を疑ったほうがいい。
ここで言う「思考力」とは、知識を詰め込む暗記力や計算力ではなく、モヤモヤを整理して形を成す「論理的思考」の力です。もちろん、この記事を読んでくれる皆さんは、「考えていない」わけではないでしょう。ですが、「論理的思考」の型を理解しないまま考えても、それは「思考」とは言えない場合があるのです。それに時間を費やしているとしたら、非常にもったいない。思考力は、何歳になっても、誰でも鍛えられる力なのでご安心を。
僕もかつて豆腐のようなフニャフニャ頭だった時代を乗り越えて、37歳以降、5年くらいかけて身につけた思考力によって、その後の仕事で成果を出せるようになって、めちゃめちゃ面白くなりました(このあたりの経験談については、拙著『1分で話せ』をご笑覧ください)。
思考力を鍛えたら、行動がともなってくる。
では、どうやったら思考力を身につけることができるのか?
材料は、頭の中にある「モヤモヤ」だけでOK。さあ、行動を引き起こす思考になる「0→1」のステップをマスターしてしまいましょう。
■思考力が足りなければ、他の人の頭を借りればいい
「モヤモヤ頭」と「スッキリ頭」の最大の違いは、曖昧で言語化できていない「モヤモヤ」を「思考」という形へと整えていること。
逆に言えば、頭の中で思考がぐちゃぐちゃと絡み合ってまとまっていない人は、いつまで経っても行動できないということです。
やるべきことはなんとなく浮かんでいるものの、モヤモヤとして形を成さず、言葉にするのも難しい。言語化できないから、それ以上考えを進めることもできずに、会議で提案することはおろか、企画書にまとめることすらできないまま……。頭の中にはモヤモヤがたまるばかり。
プロは自力で思考を組み立てることができるのかもしれませんが、アマチュアはそうはいきません。だから、「他人の力」を借りるしかありません。人の頭を借りながら、モヤモヤを思考に変える。
■モヤモヤは口に出した瞬間に「思考」に変身する
この過程のファーストステップになるのが、モヤモヤをとにかく言葉にしてみること。曖昧なままでも口から外に出して、誰かに話してみる。これが思考化の第一段階、ファーストステップ、いわば「思考のゼロイチ」です。
モヤモヤは口に出した瞬間から、思考の形を成し始める。つまり、“価値”を生み出していきます。誰にも共有できない無形のモヤモヤが、アイデアやビジョンとして形を成して、行動を引き起こす思考になる「0→1」。
この「→」の部分で起きているアクションは、モヤモヤをモヤモヤのまま口に出して誰かに聞いてもらい、打ち返してもらうこと。
そう、これぞまさに「壁打ち」なのです。
強調したいのは、壁打ちは限られた特別な人たちだけのものではないということ。
特別なスキルは一切必要なく、誰にとっても開かれた新しい思考術、それが「壁打ち」。
会議での発言やブレスト、上司への相談が苦手だったという人にこそ知ってほしいと思います。
■仕事の「疲れた」は、壁打ちで解消できる
これは僕自身の実感ですが、壁打ちをした後の頭はスッキリと冴えわたり、すぐにでも仕事に取りかかりたくなるモードに。
思考の引っかかりがないから途中で立ち止まることなくスイスイ進める。
「いくらでも仕事デキるぜ!」という燃焼スイッチが入って猛烈に仕事ができてしまう。でも、疲れない。
疲れない理由は、頭の中がスッキリと整理されているから。
逆に、仕事をしていて疲れるとしたら、それは頭の中がまとまっておらず、モヤモヤがたまった状態であるサインかもしれません。
■先延ばしが激減
「あれ、これどういうことだ?」「そもそもなんでこれをやるんだっけ?」
「うーん、ここから先の進め方が分からんが、何から手をつけていいのかも分からん!」
そんな漠然とした悩みがあると、せっかくやる気があっても仕事が進まず、気持ちもトーンダウン。
結果、成果がなかなか出ずに自身もダウン。負のスパイラルに陥ってしまう。
壁打ちは、仕事の滞りの原因となる「思考の立ち止まり」をスッキリと解消し、スーッと仕事が流れる状態へと変えてくれます。
ネクストアクションが決まって仕事が進む。先延ばしすることも激減するはずです。
壁打ちを上手に取り入れながら仕事のモヤモヤを解消するクセがつくと、上司に提出する報告書や企画書の中に「ここ、イマイチだな」という曖昧な個所がほとんどなくなり、上司からの突っ込みも激減するでしょう。
手戻りがなくなるから、一つのドキュメントを何度も直すようなムダがなくなり、生産性がメキメキ上がるというわけです。これが、壁打ちをすると頭がスッキリし、仕事の生産性が上がる理由です。
----------
伊藤 羊一(いとう・よういち)
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 学部長
アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、ウェイウェイ代表として次世代リーダー開発を行う。代表作『1分で話せ』は67万部超のベストセラーに。
----------
(武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 学部長 伊藤 羊一)