■「宿泊+新幹線パック」を徹底活用する
旅行を予約する時、目的地までの切符と宿泊するホテルを別々に取っていませんか。残念ながら、大損している可能性があります。宿泊と交通費が一緒になったパッケージ商品を選べば、数万円お得になるケースがよくあるんです。
例えば、JR東日本が展開している「びゅうトラベル」の「ダイナミックレールパック」。列車と宿を組み合わせた商品が販売されています。
試しに検索してみましょう。8月1日に東京から青森に旅行する場合、青森駅近くのホテル「リッチモンド青森」(素泊まり・2名1室)で大人1人につき3万2800円のプランが見つかりました。
新幹線の往復切符込みでこの金額なのがすごいところ。東京―新青森の東北新幹線はやぶさ(普通車指定席)を乗り継いで青森駅までの料金は片道1万7870円、往復で3万5740円です。往復料金よりも2940円安い金額で、おまけにホテルまでついてくるという、驚くべきプランです。
■1人当たり1万1140円のお得に
お得額はいくらなのか。
・JR+宿泊プランを利用した場合 1名あたり3万2800円
・切符とホテルを別々で取った場合 1名あたり4万3940円
・差額 4万3940円-3万2800円=1万1140円お得に
仮に家族4人で同プランを利用した場合、4万4560円得になるという計算です。これは大きい。こうも安くなると、別々にホテルと切符を手配するのがバカらしくなってきますね。
(※料金はすべて2025年7月21日時点。8月1日は繁忙期に設定されており、東北新幹線の指定席特急料金は通常期に比べ200円増)
■「パックプラン」安さのカラクリ
なぜこんなにお得なのか。安さのワケは「大量仕入れによる割引」と「空席・空室の有効活用」という2つの理由からです。旅行会社は各社と契約を結び、客室や座席をまとめて大量に仕入れます。これをセットで販売することにより、単体よりも大幅な割引価格で購入できるのです。
こうしたパッケージは、JR系の旅行会社だけでなく、JTBや日本旅行などの大手、じゃらん、楽天トラベルなどネット専業の旅行会社でも多く提供されています。
ただしこうしたパッケージプランは、選べるホテルや新幹線の時間帯に限りがある場合があり、自由度が下がることもあります。キャンセル料が高めに設定されていたり、列車の変更が効かないなどの制約もあるので、予約前にしっかりと確認しましょう。
■「青春18きっぷ」でローカルエリアを満喫
鉄道での周遊旅行を計画中なら、絶対に外せないのが「お得な切符」のチェックです。特定のエリアで、格安に移動できる夢のような切符が、実はたくさん存在しているんです。これらを使いこなすことで、交通費をグッと抑えられます。
中でも群を抜いて有名なのが、JRの「青春18きっぷ」でしょう。「青春18きっぷって、18歳以下じゃないとダメなんじゃ?」なんて思っている人もいるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。このきっぷは老若男女問わず、誰でも使えるのでご安心ください。
青春18きっぷは、全国のJR線の普通列車・快速列車の普通車自由席などが乗り放題で、2025年夏のシーズンは3日間用(1万円)と5日間用(1万2050円)の2種類が用意されています。以前とルールが変わり、利用開始日から連続した日程でのみ有効で、1枚のきっぷを複数人で分けて使用することはできません。
このきっぷは通常ならば新幹線ですっ飛ばすようなローカルエリアの魅力を、再発見できるのが魅力です。たとえば東京から名古屋まで行ってみるとしましょう。東海道新幹線のぞみで行くと交通費は往復2万2360円です。青春18きっぷを使えば、3日間の旅だと1万2360円お得になります。
・東京―名古屋を新幹線のぞみ(普通車指定席)で行く場合 往復2万2360円
・「青春18きっぷ」3日間用を利用した場合 往復1万円
・差額 2万2360円-1万円=1万2360円お得に
仮に家族4人で利用した場合、4万9440円お得になるという計算です。これは大きい。
■気になる駅で途中下車するメリット
ただし東京から名古屋まで東海道線の普通列車で行くと、6時間弱かかります。乗り継ぎは数回あるものの、乗りっぱなしは旅慣れている人でもしんどいものです。気になる駅は積極的に降りて、休憩がてら散策を楽しむのがコツです。筆者は、途中の三島駅でウナギを食べたり、浜松駅で餃子を食べたりと、ご当地グルメを楽しむようにしています。
ちなみに東京―名古屋までのルートは東海道線を経由するものだけではありません。
■東京―仙台がもっとお得になるフリーきっぷ
「青春18きっぷ」が常に万能かというと、実はそうとも限りません。確かに全国区で強い味方ですが、もし行くエリアが絞られているなら、その地域に特化したフリーきっぷのほうが、安く済むケースがあります。
たとえばJR東日本エリアだけ旅したいという人は、同エリアが乗り放題になる「東日本のんびり旅パス」がおすすめ。連続する3日間で9000円、青春18きっぷより1000円安い計算になります。JR東日本エリアで旅が完結するなら、こちらのほうがお得だと言えます。
新幹線で行くイメージのある東京―仙台までを、普通列車を乗り継いで行ってみましょう。東北新幹線はやぶさで行くと往復2万2820円。東日本のんびり旅パスの利用で1万3820円お得になります。仮に家族4人で利用した場合、5万5280円お得に。
・東京―仙台を新幹線はやぶさ(普通車指定席)で利用した場合 往復2万2820円
・「東日本のんびり旅パス」を利用した場合 往復9000円
・差額 2万2820円-9000円=1万3820円お得に
名古屋までと同じく、仙台へも普通列車で約6時間の大移動となります。疲れたら無理せず、適度な休憩を挟んでリフレッシュしましょう。途中の寄り道を楽しむのが旅の醍醐味です。例えば、餃子の街・宇都宮駅で熱々餃子にかぶりつくもよし、フルーツ王国・福島駅で旬の桃にかぶりつくもよし。途中下車を賢く使って、移動そのものも最高の思い出に変えちゃいましょう。
■新幹線にも乗れる最強フリーきっぷが登場
フリー切符といえば普通列車しか乗れない、なんて思い込みはもう古い。JR西日本が、夏休みの常識をぶち破るとんでもないフリー切符を放ってきました。それが「WESTERポイント全線フリーきっぷ」。新幹線・特急を含むJR西日本の全線が乗り放題になる切符で、鉄道ファンの間で話題になっています。
ただし、すべての人が買えるわけではないのが残念なところ。ゲットできるのは、同社の「WESTERポイント」を貯めている人のみ。
切符は2日用(1万pt)と3日用(1万5000pt)があります。一部ポイントを使って買える切符もあり、1万6000円に500pをプラスすれば1日間有効の切符がゲットできます。
1pt=1円換算として、1万円で新幹線含む乗り放題になるという計算です。新大阪―博多の山陽新幹線のぞみが往復で3万2040円ですから、2日間用を利用したら2万2040円相当お得になるという計算です。これはポイントを貯めている人がうらやましい!
・新大阪―博多を新幹線のぞみ(普通車指定席)で利用した場合 往復3万2040円
・「WESTERポイント全線フリーきっぷ」2日間用を利用した場合 往復1万pt
・差額 3万2040円-1万pt=実質2万2040円相当お得に
「フリー切符は普通列車だけ」という常識を覆すこのきっぷは、WESTERポイントさえあれば、JR西日本エリアを縦横無尽に駆け抜けられる最強のツールとなるでしょう。
■大阪万博+大阪市内を動き回るなら…
観光地巡りや広範囲の移動を考えているなら、ぜひ活用したいお得な切符。探し方は、ネットで「目的地+お得な切符」で検索するだけ。すぐに情報がゲットできます。
ここで上記に紹介した以外で筆者が注目している切符を紹介します。
大阪万博ついでに大阪市内をめぐるなら「大阪スマートアクセスパス」(1200円)の活用を。JR大阪環状線や地下鉄(Osaka Metro)などが乗り放題で、フットワーク軽く動くことができます。
■名物のマグロ料理を楽しめる切符も
東海エリアなら「JR東海☆夏の乗り放題きっぷ」。熱海―米原のいずれかの駅まで東海道新幹線を利用すると、JR東海エリアが3900円で2日間乗り放題になります。伊勢神宮(三重県)や、インバウンドにも人気の下呂温泉や飛騨高山エリア(岐阜県)など、この辺りも魅力的な観光スポットは多いです。
目的地までの交通費に加え、ランチやレジャー施設もお得になる切符もあります。例えば、京急電鉄の「みさきまぐろきっぷ」(3750円~)は、神奈川県三浦半島への日帰り旅行に最適なきっぷ。この1枚で電車やバスでの移動、新鮮なマグロ料理、そしてレジャー施設の利用まで、すべてがセットになっています。ふらっと日帰り旅を楽しみたいならぴったりな切符です。
鉄道旅のポイントは、まず目的地の移動手段を把握し、どの交通機関をどれくらい利用するか確認すること。次に、利用回数と料金を比較して、普通に切符を買うよりも本当にお得になるか計算してみることが重要です。多種多様な旅行パッケージやお得な切符を使いこなして、一生モノの旅をお得に楽しみましょう。
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東 香名子(あずま・かなこ)
コラムニスト
鉄道コラムニスト。メディアコンサルタント。外資系企業、編集プロダクション、女性サイト編集長を経て現在フリー。編集長時代、月間アクセス数を650倍に伸ばす。All About旅行ガイド。メディア出演多数。著書に『超ライティング大全ー「バズる記事」にはこの1冊さえあればいい』ほか。
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(コラムニスト 東 香名子)