身近に無礼な人がいたらどう対応するべきか。プロ司会者で作家の鹿島しのぶさんは「無礼な人に遭遇したとき、怒りを爆発させて同じ土俵に上がるのが一番損な選択だ。
『相手が気を悪くしたらどうしよう』と一切悩まずに、どんなことをいわれても聞き流して、なるべく距離をおいて深く関わらないようにするといい」という――。
※本稿は、鹿島しのぶ『ワンランク上のおとなの礼儀』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「無礼」に「怒り」で応えたら負け
残念なことに、世の中には無礼な人があちこちに存在しています。
会社はもちろん、交友関係のなかにも、あるいは地域のコミュニティのなかにもいるでしょう。
そういう人は、人のことを無視したり、バカにしたような態度を取ったり、ひどいときには仲間外れにしようとしたりします。
でも、それにいちいち腹を立てていてはいけません。そんな人と出会ったとき、怒りを爆発させるようなことは絶対に避けるべき。同じ土俵に上がってしまったら、ストレスが増大するばかりですし、いい争ったりしたら、自分も同類と見られかねません。
そこでどう対処すればいいかも大きな問題となります。
無礼なふるまいの人に出会ったとき、いろいろといいたいことはあっても、まずは静観することです。怒りに怒りで応えたら火に油を注ぐようなもの。事態は悪い方向に進むばかりです。

無礼な人に対しては、どんなことをいわれても「聞き流す」こと。そんな冷静な行動を必ず見ている人がいます。客観的な立場で見ていると、どちらに非があるかは一目瞭然です。
相手に意見を求められたり、反論したりする必要があると感じたら、冷静に主張すること。あくまでも冷静に。どんなに腹を立てても感情的になるのは禁物です。
人を見下すことで優越感を得ている人や、こちらの意見など聞き入れず、自分の言い分は正しいと信じ切っている人と遭遇したら、「君子危うきに近寄らず」で、なるべく距離をおいて深く関わらないようにするといいでしょう。
「相手が気を悪くしたらどうしよう」と悩む必要はありません。平気で無礼なことをする人は、自分の言動によって相手が不快に思っていたり、悲しい気分になっていたりするということに考えが至らない一方で、まわりの人の言動には無頓着であまり意識もしていないものです。そのため、距離をおかれていることにも気づかないのです。
いずれにしても、無礼な人に遭遇したとき、怒りを爆発させて同じ土俵に上がるのが一番損な選択です。
自分の感情をコントロールし、礼儀正しく対応し、無礼な人より一段も二段も三段も高いステージに立つ。
それを目指しましょう。
■「一歩引く」という賢さを
礼儀正しさを身につけることで、仕事においても人生においても、あらゆることの質が上がっていき、好転していくきっかけをつかむことができると思います。
礼儀正しい人になれば、自分も生きやすくなるし、集まってくる人間も変わるし、やりがいのある仕事が入ってくる可能性も高まります。また、心も豊かになるし、まわりに無礼な人がいないだけでストレスもたまらなくなるでしょう。
でも、そこまで到達するのはそう簡単なことではないかもしれません。また、いまいる会社で礼儀正しく生きようとしても、なかなか思うようにならない場合だってあるでしょう。
そこで必要になるのが「一歩引くという賢さ」です。
たとえば、パワハラ全開の上司がいる場合、正面からぶつかっても、すでにでき上がっている権力構造を突き崩すのはなかなか難しいでしょう。それなら、距離をおけばいいのです。
往々にして、そういう上司はまったく自覚せぬまま、相手が傷つく言葉を平気で口にしています。それをいちいち気にしていても問題は解決しません。ならば、柳に風とばかりに聞き流してしまいましょう。

別にパワハラ全開の上司とまともにつきあわなくても、人生が終わるわけではありません。ちょっと身をかわして、同僚や部下と礼儀正しく接することで、自分の居場所を確保すればいいだけの話です。
いずれはそんな上司も別の部署へ異動するかもしれないし、定年を迎えていなくなるかもしれません。
「無礼な人と正面から戦うなんて、自分の時間と能力のムダ遣いだ」と割り切ってしまうのが一番です。まわりのみんなも絶対に理解してくれるはずですよ。
■自分が生かせる場所へ逃げることの大切さ
ただし、世の中には正真正銘のセクハラ、パワハラ、モラハラが蔓延している会社も存在します。
そこで孤軍奮闘しても時間と労力を浪費するばかりです。
あなたがもしそんな会社にいるようなら、すぐに見切りをつけて次の会社を探しましょう。そんな会社からは、逃げて当然ですし、礼儀正しささえ身につけていれば、新しい会社ですぐに力を発揮できるはずです。
そういえば、数年前に、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)というドラマが話題になりましたが、この言葉はハンガリーのことわざで、「自分の戦う場所を選べ」という意味があるそうです。
「いま自分がいる場所にしがみつく必要はない。自分を生かせる場所へ逃げることのほうが大切なときもある」という意味のようです。

こんなふうに考えたら、なんだかラクになりますね。
まずは自分が礼儀正しい人を目指すこと。
そして次に、礼儀正しい人のなかに身をおく努力をすること。
そうすれば、間違いなく、仕事の質も人間関係の質も、そして人生の質も高めることができるでしょう。

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鹿島 しのぶ(かしま・しのぶ)

プロ司会者、作家

白百合女子大学文学部英語英文学科卒業後、会社員を経てプロの司会者として活動を開始。(株)総合会話術仟言流の代表を務め、ブライダルプランナーの役割も兼ね備えたプロ司会者の育成にも力を注いでいる。また、2017年まで駿台トラベル&ホテル専門学校ブライダル学科長を務め、ブライダル関連、接遇会話、ビジネスマナーの授業を担当した。『「また会いたい」と思われる人』『「品がいい」と言われる人』『99%人に好かれる「礼儀正しい人」』(以上、三笠書房)など著書多数。

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(プロ司会者、作家 鹿島 しのぶ)
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