2025年7月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。健康部門の第1位は――。

▼第1位 水の代わりに飲むと食欲を抑制しダイエット効果あり…自律神経まで整う"コンビニで買える飲み物"

▼第2位 コーヒーでも紅茶でもない…精神科医が「脳を元気で若々しく保てる」と勧めるスーパーで買える飲み物

▼第3位 だから見るだけで「メンタル不調」が軽快する…医師が勧めるドーパミンを自力で出す「絵」と「写真」

自律神経を強くするには、食事は何に気を付ければいいか。京都大学名誉教授の森谷敏夫さんは「早食いやながら食いをやめ、よく噛んで、ゆっくりと食べること。そして自律神経を強くする食べ物、飲み物を積極的に取り入れることだ」という――。
※本稿は、森谷敏夫『京大式 脂肪燃焼メソッド』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■1日3回の食事で、ひと口30~40回噛む
「食」という字は、「人」を「良」くすると書き、食事の「事」は「行事」からきていると考えることもできます。
人を良くする行事にふさわしく、食べていることを意識しながら、ひと口ずつ味わって、よく噛み、ていねいに食べることが、自律神経の満腹中枢をしっかりと働かせ、食べすぎを防ぎます。さらに交感神経の鍛錬にもつながるのです。
噛むことは、食事において交感神経をもっとも鍛える行為といえます。噛むことの刺激が口だけでなく、口と大きく影響し合う耳から伝わることもあり、交感神経が強く刺激されるのです。
交感神経が活性化されれば、満腹感が早く訪れますし、また、多く噛めばそれだけ食べるのに時間がかかりますので、「早食い」を防ぐことにもなります。
ひと口で30~40回を目安に、噛むようにしましょう。1回1回噛むたびに、交感神経が刺激され、さらに食べている間中、このことがくりかえされます。

はじめのうちは、ひと口10回くらいから始めて、徐々に回数を増やしていくとよいかもしれません。最初は面倒に感じるかもしれませんが、そのうち慣れてきて、意識しなくても30~40回噛むようになっていることでしょう。
1日3回の食事で、ひと口30~40回噛むようにすれば、間違いなく交感神経は鍛えられていきます。
また、食事で満腹感が得られるのは、血糖値が上がることによります。
食べものが消化吸収されて血糖値が上がり、その信号が満腹中枢に届くまでには、15~20分間かかるのです。15分もしないで食べてしまう早食いの人では、血糖値が十分に上がって満腹中枢に信号が届くよりも前に、食べすぎてしまいがち。
早食いの習慣がある人は、食事のたびに過食となり、太りやすくなるので注意が必要です。
■スマホを見ながらでは、満腹感が得られない
動画を夢中で見ていたら、気がついたときにはそばにあったポテトチップスの袋が空になっていた。
そんな経験はありませんか。動画を見ながら、スマホをやりながら……というように、ほかのことをやりながら食べる「ながら食い」。ながら食いは太りますし、自律神経に働きかけることができない食べ方です。
スマホやテレビなど、意識が食べること以外にいっていれば、脳の満腹中枢の機能はストップします。

そのため、いつまでたっても満腹感が得られず、気がついたら、ポテトチップスを1袋すべて食べつくしていたということになるのです。これでは、太らないほうが不思議です。
食事をするときにはテレビを消して、スマホはテーブルから遠ざけましょう。
そして、口に食べものを運ぶときには、意識を「食べること」にもっていき、ひと口、ひと口味わいながら、ゆっくりと時間をかけて食べるのです。
意識して食べれば、脳は食に対する機能を働かせることもできますし、時間をかけて食べることで、血糖値が上がり、満腹感が徐々に訪れることでしょう。
■自律神経を強くできる5つの食べもの
早食いやながら食いをやめ、よく噛んで、ゆっくりと食べることを身につけるとともに、食事の中で自律神経を鍛える方法があります。
それは、自律神経を強くする食べものと飲みものを、積極的にとることです。自律神経を強くできる5つの食べものをご紹介します。
1.カレー
カレーを食べると、汗が出ます。カプサイシンという辛み成分が交感神経をガンガン刺激して活性化させ、体温を上げて熱を発散させるためです。私など自律神経が強すぎるので、カレーを食べたら冬でも汗が吹き出します。
それもそのはず、カレーを食べると、40~50キロカロリーもの余分なエネルギーが熱として発散されるのです。
この数字ひとつとっても、カレーがいかに交感神経を活性化させるかわかるでしょう。
自律神経が低下している人には、「1日おきにカレーを食べなさい」といいたいほど。1日おきが無理でも、週に最低でも2回は食べたいものです。
カレーにはいくつもの種類のスパイスが使われています。それらのスパイスが舌の知覚をピリッと刺激して、知覚神経を興奮させるのです。そして、その興奮が脳に伝わり、交感神経が活性化されます。つまり、カプサイシンだけでなく、カレーに含まれる各種スパイスも交感神経の活性化に一役買うことになるのです。
スパイスたっぷりの高級店のカレーを食べる必要はありません。市販のカレールーでつくったおうちのカレーでOKですが、カレーはカロリーが高くなりがちなので、肉ではなく、野菜やシーフードをメインの具にするとよいでしょう。
また、材料を炒める場合にはフッ素樹脂加工のフライパンを使って、油を使わないか、使ってもごく少量にするなどカロリーを抑える工夫をしてください。
■レモンには戦闘モードである交感神経を高める効果
2.キムチ
真っ赤になるほどの大量の唐辛子の粉末が使われているキムチは、カプサイシンの宝庫です。カレーと同様、交感神経を刺激して、活性化させる高い効果があります。
さらに、キムチは舌にピリッと刺激がきます。この「ピリッとした刺激」もまた、カレーのスパイス同様、舌の知覚を刺激し、交感神経が活性化されるのです。
キムチは食物繊維が豊富で、乳酸菌を多く含む発酵食品。便秘を防いで、肌をキレイに保つ「美容食」ともいえます。
交感神経の働きが弱い人は、毎食、少量でもキムチを食べるとよいでしょう。
3.レモン
グレープフルーツ・ダイエットが話題になったことがあります。
そのグレープフルーツ以上におすすめしたいのがレモンです。レモンには交感神経を刺激し、その働きを高める効果があります。私たちの研究チームがヒトを使って実験したところ、ほかのフルーツよりも圧倒的に高いレベルで交感神経に効くことが判明しました。
レモンをかじったときに「すっぱい!」と感じますね。そのとき、カレーやキムチと同様に、知覚が強く刺激され、その情報が知覚神経を介して、大脳の交感神経の中枢に刺激を与え、活性化させるのです。
その昔、私が体操選手をしていた頃、試合会場へ入ると、よくレモンの香りがしたものです。
選手たちが持っていたレモンの砂糖漬けの香りでした。
運動をするには糖がたくさん必要なので、「砂糖漬け」だったのです。そして、レモンには戦闘モードである交感神経を高める効果があることを、選手たちは経験から知っていたのでしょう。
レモンの果汁だけではもったいないので、搾らず、スライスなどにして果肉まで食べるようにしましょう。
■コーヒーを多く飲む人ほど、糖尿病になりにくい
4.コーヒー
カフェインは自律神経の機能を高めます。それも、漢方と同じで「中庸」にもっていくのです。つまり、交感神経であれ、副交感神経であれ、亢進しすぎているときには鎮める方向に、逆に、働きが低下しているときには、それを引き上げる方向に働きます。こうして自律神経全体の機能を整えて、アップさせるのがコーヒーの特徴。このことは、私たちの実験で証明されていますし、論文にもなっています。
痩せるために自律神経を鍛えたいなら、1日3回の食事のあとに、必ずコーヒーを飲みましょう。砂糖を入れると、インスリンが先に分泌されて、体脂肪が燃焼しづらくなり、ミルクはカロリーが高いので、痩せたい人は控えてくださいね。
また、コーヒーに関しては、興味深い研究結果があるのでこちらで紹介しておきましょう。
糖尿病でない男女約12万人を長期間追跡し、コーヒーや紅茶、カフェインを含む食品の摂取状況を詳しく調べました。
その結果、調査期間中に男性1333人、女性4085人が糖尿病を発症しました。ところが、年齢や肥満などの要因を考慮しても「コーヒーを多く飲む人ほど、糖尿病になりにくい」という傾向がはっきりわかったのです。
コーヒーをまったく飲まない人をリスク1とすると、1日1~3杯で0.98、4~5杯で0.7、6杯以上では0.46と、発症率が大きく下がりました。
コーヒーに含まれる成分が、糖や脂肪の代謝を助けるAMPキナーゼという酵素を活性化し、糖尿病予防に役立つ可能性があると考えられています。脂肪の代謝も助けるのですから、コーヒーはダイエット向きの飲み物といえますね。
なお、カフェインの過剰摂取が問題とされることがありますが、1日に4~5杯程度までなら、心配はいりません。
■炭酸水のシュワッという刺激が食欲も抑制
5.炭酸水
手軽に取り入れられて、自律神経の活性化に役立つのが炭酸水です。
ソーダ、コーラなどの炭酸飲料ではなく、水にガスが入った「炭酸水」を飲みましょう。独特のシュワッとした刺激が交感神経を刺激し、活性化します。
また、水を多めに飲むと、胃が水でふくれるぶん、早くお腹がいっぱいになります。さらに、胃液が水で薄まって消化吸収が抑えられるので、そのぶん摂取カロリーが減り、太りにくくなるのです。
炭酸水にはほかにもいいところがあります。炭酸水のシュワッという刺激は、胃から出ている食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌を抑えるという、うれしい効果も発揮するのです。そのため、食欲がさらに抑制されます。炭酸水を常備しておいて、水のかわりに飲むとよいでしょう。
(初公開日:2025年7月28日)

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森谷 敏夫(もりたに・としお)

京都大学名誉教授

株式会社おせっかい倶楽部代表取締役。南カリフォルニア大学大学院博士課程修了。テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授、米国モンタナ大学生命科学部客員教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを経て、京都大学名誉教授、中京大学客員教授に。専門は応用生理学とスポーツ医学で生活習慣病における運動の重要性を説く。『結局、炭水化物を食べればしっかりやせる!』(日本文芸社)、『おサボリ筋トレ』(毎日新聞出版)など著書多数。

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(京都大学名誉教授 森谷 敏夫)
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