聞き手の印象に残るプレゼンをする人はどんなことを考えているのか。プレゼンのプロである渋谷雄大さんと吉藤智広さんによる共著『刺さるプレゼン全書』(大和書房)より、一部を紹介する――。
■良いプレゼンに必要な3つの要素
ここからは実際にプレゼンを行うために必要な3つの要素を解説します。それは、「シナリオ」「デザイン」「トーク」です。
まず最初に考えるべきは、シナリオ。誰に向けて、どんな内容を、どういう順番で伝えるのか。ここを曖昧にしたまま話し始めると、聞き手はついてこられません。プレゼンの主役は常に“聞き手”。相手の関心や理解度を想像しながら、相手に届くシナリオを組み立てていきます。
次に必要なのがデザイン。これは、シナリオで組み立てた内容を視覚的に伝える工夫です。スライドのレイアウトや図解、写真の選び方ひとつで、伝わり方は大きく変わります。情報を整理するだけでなく、感情にも響く“見せ方”を整えることがポイントです。
そして最後がトーク。
シナリオ→デザイン→トーク。この順で準備を重ねてこそ、相手の心を動かすプレゼンが完成します。さっそく、次のページからひとつずつ詳しく見ていきましょう。
(画像① プレゼンに必要な3要素 『刺さるプレゼン全書』より)
■現状から理想への流れ
さっそく、基本シナリオから見ていきましょう。実際にプレゼンでどんな話をするか、ということですが、そこで役立つのが、「現状から理想へ」のシナリオです。
プレゼンとは、聞き手にとっての“道しるべ”を描くものです。今の状態=As Is(A)から、理想の状態=To Be(B)へと向かう道筋を示すことで、聞き手は自分の変化をイメージしやすくなります。
たとえば、次のようなことです。
A:「毎回のプレゼンで緊張してしまい、うまく話せない」
B:「自信を持って伝えられ、相手の心を動かすプレゼンができる」
このように、「AからBへどう進めばよいか?」という“道筋(ストーリー)”を具体的に提示するのが、シナリオのコツです。
課題の原因を明らかにし、乗り越えるためのヒントや選択肢を示し、「この順番で進めば、あなたもBの状態に近づける」と納得してもらえるように構成していきます。
このように、現状への共感→可能性の提示→行動の後押しという流れで、聞き手の気持ちが自然と動くような設計をしていくことが大切です。
もう一度まとめると、
・A(現状の課題)
・B(ありたい姿)
・A→Bへのステップ(提案・解決策)
この3点を整理することで、プレゼンの全体像が自然と形になっていきます。
■キーメッセージを決める
プレゼンの聞き手は、あなたの話すべてを覚えてくれるわけではありません。だからこそ大切なのが、「一番伝えたいこと」を決めておくこと。それを、プレゼンの軸となる「キーメッセージ」と呼びます。
キーメッセージが明確であれば、細かい内容は忘れられても、「このプレゼンで一番言いたかったのはこれだ」と印象に残してもらうことができます。キーメッセージは、プレゼンの背骨であり、一番伝えたい“一言”です。
オープニングで触れ、中盤で支え、クロージングでもう一度しっかり伝える。そうすることで、プレゼン全体に一貫性が生まれ、聞き手の心に残りやすくなります。
くり返しますが、人はすべてを覚えてはくれません。
作り方は、次の3ステップです。
①相手の課題を整理する――悩み・不満・欲求の中で、もっとも共感されそうなものをひとつ選ぶ。
②自分の主張を一言で言い切る――「だから◯◯が大事」「◯◯を変えればすべてが変わる」など、結論をシンプルに。
③耳に残る言葉に磨く――リズム・対比・言い切り表現を使うと印象に残りやすい。
画像② 課題解決の道筋を示す 『刺さるプレゼン全書』より
■スライドは9枚あれば十分
そうは言っても、なかなか出てこない、という人は、次のフレーズに当てはめて考えるとよいでしょう。「たった◯◯で、△△は変えられる」、「◯◯こそが、△△のカギだ」、「あなたにもできる、◯◯の第一歩」など。
具体的には、「たった1枚で、プレゼンは変わる」、「“伝える”より、“伝わる”を考えよう」、「準備こそ、成功の9割」など。
キーメッセージが定まれば、プレゼンの全体像が引き締まります。伝えたいすべてを、この一言で象徴しましょう。
キーメッセージが決まったら、スライドを作ります。
おすすめは「スライドを9枚に絞る」というルールです。もし9枚だけにするなら、何を残そうか? この視点で選び抜くことで、プレゼンの核心が自然と浮かび上がってきます。
(画像③ 9枚のスライドのイメージ 『刺さるプレゼン全書』より)
■プレゼンも第一印象が9割
そして、特に重要なのが最初の1枚と最後の1枚。
まず、最初の1枚=タイトルスライド。ここで聞き手は「この話は面白そうか?」「自分に有益そうか?」を直感的に判断します。対人においては第一印象が9割ともいわれるように、プレゼンにおいても最初の1枚で聞く姿勢が決まってしまうのです。
だからこそ、タイトルには相手目線の言葉や、ビジュアル的に惹きつける工夫をして、「これは自分のための話だ」と思ってもらえるように意識しましょう。
そしてもうひとつ、最後の1枚=クロージングスライドも極めて重要です。「ご清聴ありがとうございました」で終えるのではなく、キーメッセージと、期待するアクションを力強く伝えてください。
最初で期待を生み、最後で行動を促す。
もちろん、プレゼンの時間に余裕があれば、9枚以上になることもあるでしょう。そういった場合でも、先述の9枚を軸に、補足スライドを加えていけばスムーズです。
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渋谷 雄大(しぶや・ゆうだい)
MOVED社長、サイボウズ エバンジェリスト
東京メディカルスポーツ専門学校鍼灸科卒業、シドニーで鍼灸師・スポーツトレーナーとして活動。帰国後、独立などを経て、ICTコミュニケーションズ株式会社にてIT業界へとキャリアチェンジ。ITサービスの導入研修や資格試験の設計などを経験。2015年よりサイボウズ株式会社kintoneエバンジェリストとして、年間140回を超えるセミナー・講演活動を担当し、kintoneの認知拡大・ユーザー数増加に貢献。2018年9月株式会社MOVEDを創業し、プレゼンテーション研修やイベント・展示会支援などを展開している。
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吉藤 智広(よしふじ・ともひろ)
プレゼンテーションデザイナー
Prezi Expert 会計事務所勤務、ローカリゼーションスペシャリストを経てプレゼンテーションデザイナーとして独立。2014年、日本人で初めてPrezi Expertの公式認定を取得。2015年~2017年はシンガポール、2018年~日本を拠点に活動。国際サミット、カンファレンスをはじめイベントや展示会など、国内外のプレゼンテーションデザインを数多く手掛ける。
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(MOVED社長、サイボウズ エバンジェリスト 渋谷 雄大、プレゼンテーションデザイナー 吉藤 智広)
■良いプレゼンに必要な3つの要素
ここからは実際にプレゼンを行うために必要な3つの要素を解説します。それは、「シナリオ」「デザイン」「トーク」です。
まず最初に考えるべきは、シナリオ。誰に向けて、どんな内容を、どういう順番で伝えるのか。ここを曖昧にしたまま話し始めると、聞き手はついてこられません。プレゼンの主役は常に“聞き手”。相手の関心や理解度を想像しながら、相手に届くシナリオを組み立てていきます。
次に必要なのがデザイン。これは、シナリオで組み立てた内容を視覚的に伝える工夫です。スライドのレイアウトや図解、写真の選び方ひとつで、伝わり方は大きく変わります。情報を整理するだけでなく、感情にも響く“見せ方”を整えることがポイントです。
そして最後がトーク。
声のトーン、話すテンポ、表情やジェスチャー。話し方には、あなたの熱意や想いがにじみ出ます。どれだけ内容やデザインがよくても、話し手の表現力が伴わなければ、聞き手の心には届きません。
シナリオ→デザイン→トーク。この順で準備を重ねてこそ、相手の心を動かすプレゼンが完成します。さっそく、次のページからひとつずつ詳しく見ていきましょう。
(画像① プレゼンに必要な3要素 『刺さるプレゼン全書』より)
■現状から理想への流れ
さっそく、基本シナリオから見ていきましょう。実際にプレゼンでどんな話をするか、ということですが、そこで役立つのが、「現状から理想へ」のシナリオです。
プレゼンとは、聞き手にとっての“道しるべ”を描くものです。今の状態=As Is(A)から、理想の状態=To Be(B)へと向かう道筋を示すことで、聞き手は自分の変化をイメージしやすくなります。
たとえば、次のようなことです。
A:「毎回のプレゼンで緊張してしまい、うまく話せない」
B:「自信を持って伝えられ、相手の心を動かすプレゼンができる」
このように、「AからBへどう進めばよいか?」という“道筋(ストーリー)”を具体的に提示するのが、シナリオのコツです。
この“道筋”とはつまり、聞き手が変化していくためのステップや方法を、順を追って示すということです。
課題の原因を明らかにし、乗り越えるためのヒントや選択肢を示し、「この順番で進めば、あなたもBの状態に近づける」と納得してもらえるように構成していきます。
このように、現状への共感→可能性の提示→行動の後押しという流れで、聞き手の気持ちが自然と動くような設計をしていくことが大切です。
もう一度まとめると、
・A(現状の課題)
・B(ありたい姿)
・A→Bへのステップ(提案・解決策)
この3点を整理することで、プレゼンの全体像が自然と形になっていきます。
■キーメッセージを決める
プレゼンの聞き手は、あなたの話すべてを覚えてくれるわけではありません。だからこそ大切なのが、「一番伝えたいこと」を決めておくこと。それを、プレゼンの軸となる「キーメッセージ」と呼びます。
キーメッセージが明確であれば、細かい内容は忘れられても、「このプレゼンで一番言いたかったのはこれだ」と印象に残してもらうことができます。キーメッセージは、プレゼンの背骨であり、一番伝えたい“一言”です。
オープニングで触れ、中盤で支え、クロージングでもう一度しっかり伝える。そうすることで、プレゼン全体に一貫性が生まれ、聞き手の心に残りやすくなります。
くり返しますが、人はすべてを覚えてはくれません。
だからこそ、この一言だけは心に残してほしい、という想いを込めて、メッセージを磨いていきます。基本ルールは「10秒以内で言えて、相手の目線に立っており、きちんと行動を促すものになっていること」。
作り方は、次の3ステップです。
①相手の課題を整理する――悩み・不満・欲求の中で、もっとも共感されそうなものをひとつ選ぶ。
②自分の主張を一言で言い切る――「だから◯◯が大事」「◯◯を変えればすべてが変わる」など、結論をシンプルに。
③耳に残る言葉に磨く――リズム・対比・言い切り表現を使うと印象に残りやすい。
画像② 課題解決の道筋を示す 『刺さるプレゼン全書』より
■スライドは9枚あれば十分
そうは言っても、なかなか出てこない、という人は、次のフレーズに当てはめて考えるとよいでしょう。「たった◯◯で、△△は変えられる」、「◯◯こそが、△△のカギだ」、「あなたにもできる、◯◯の第一歩」など。
具体的には、「たった1枚で、プレゼンは変わる」、「“伝える”より、“伝わる”を考えよう」、「準備こそ、成功の9割」など。
キーメッセージが定まれば、プレゼンの全体像が引き締まります。伝えたいすべてを、この一言で象徴しましょう。
キーメッセージが決まったら、スライドを作ります。
このとき、話したいことをどんどん詰め込んではいけません。それでは伝えたいことがぼやけてしまいます。
おすすめは「スライドを9枚に絞る」というルールです。もし9枚だけにするなら、何を残そうか? この視点で選び抜くことで、プレゼンの核心が自然と浮かび上がってきます。
(画像③ 9枚のスライドのイメージ 『刺さるプレゼン全書』より)
■プレゼンも第一印象が9割
そして、特に重要なのが最初の1枚と最後の1枚。
まず、最初の1枚=タイトルスライド。ここで聞き手は「この話は面白そうか?」「自分に有益そうか?」を直感的に判断します。対人においては第一印象が9割ともいわれるように、プレゼンにおいても最初の1枚で聞く姿勢が決まってしまうのです。
だからこそ、タイトルには相手目線の言葉や、ビジュアル的に惹きつける工夫をして、「これは自分のための話だ」と思ってもらえるように意識しましょう。
そしてもうひとつ、最後の1枚=クロージングスライドも極めて重要です。「ご清聴ありがとうございました」で終えるのではなく、キーメッセージと、期待するアクションを力強く伝えてください。
最初で期待を生み、最後で行動を促す。
この“始まりと終わり”を意識することで、プレゼン全体の印象が大きく変わります。
もちろん、プレゼンの時間に余裕があれば、9枚以上になることもあるでしょう。そういった場合でも、先述の9枚を軸に、補足スライドを加えていけばスムーズです。
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渋谷 雄大(しぶや・ゆうだい)
MOVED社長、サイボウズ エバンジェリスト
東京メディカルスポーツ専門学校鍼灸科卒業、シドニーで鍼灸師・スポーツトレーナーとして活動。帰国後、独立などを経て、ICTコミュニケーションズ株式会社にてIT業界へとキャリアチェンジ。ITサービスの導入研修や資格試験の設計などを経験。2015年よりサイボウズ株式会社kintoneエバンジェリストとして、年間140回を超えるセミナー・講演活動を担当し、kintoneの認知拡大・ユーザー数増加に貢献。2018年9月株式会社MOVEDを創業し、プレゼンテーション研修やイベント・展示会支援などを展開している。
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吉藤 智広(よしふじ・ともひろ)
プレゼンテーションデザイナー
Prezi Expert 会計事務所勤務、ローカリゼーションスペシャリストを経てプレゼンテーションデザイナーとして独立。2014年、日本人で初めてPrezi Expertの公式認定を取得。2015年~2017年はシンガポール、2018年~日本を拠点に活動。国際サミット、カンファレンスをはじめイベントや展示会など、国内外のプレゼンテーションデザインを数多く手掛ける。
プレゼンテーションデザインの国際コンテストPrezi Awards 2018において、最高栄誉にあたる“Prezi Expert: Best Overall”を受賞。著書に『Preziデザインブック』『Preziで極めるビジュアルプレゼンテーション』(共に日経BP社)
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(MOVED社長、サイボウズ エバンジェリスト 渋谷 雄大、プレゼンテーションデザイナー 吉藤 智広)
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