星野リゾートが展開するリゾートブランドの一つ「リゾナーレ大阪」です。
ブランドコンセプトは「PLAY HARD」。風景を活かした空間デザイン、地域や季節ならではのイベント、そして豊富なアクティビティや食体験を通じて、いつ、誰と訪れても想像を超える体験があふれ、リゾート滞在を夢中になって楽しみ尽くせる。そんな時間の提供を目指しています。
2022年12月に開業した「リゾナーレ大阪」は、ブランドのなかでもちょっとユニークな存在です。顧客満足度調査で、ある驚きの数字を記録し続けています。
それは、施設にある日本最大級のアトリエの評価です。
アトリエ体験の満足度調査では、「大変満足」と答えてくださった方の割合がグループ内でも突出した80%以上という数字が出ているのです。
その一方で、ホテル全体の総合満足度は、現時点ではグループ内でも課題を感じている位置にあります。
この「高い評価と、まだまだな現実」が同じ施設のなかに同居している。それはリゾナーレ大阪が何にこだわり、何をお客様にお届けしようとしているかを、率直に物語っています。
子どもたちの探究が深まるように配置やデザイン設計がなされたアトリエ
「アトリエに行きたい」が、旅の理由になるまで
リゾナーレ大阪が位置するのは、大阪のベイエリア・南港。かつて国際見本市などで賑わったこの地に、新たな「旅の目的」を作る。そのために私たちが選んだのは、イタリア発祥の乳幼児教育「レッジョ・エミリア・アプローチ」を取り入れた、国内最大級のアトリエを核に据えることでした。
ホテル最上階から見下ろす大阪物流の玄関口南港エリア。大阪関西万博の会場も眼下に
約470平米もの広さを誇るアトリエは、単なるプレイルームではありません。
そこは、子どもたちが自分自身の可能性を見つめ、ひとりひとりの個性豊かな表現を生み出すための「探究の場」です。アトリエは「色彩」「絵画」「光」「粘土」といった様々なテーマで構成され、その日の天候やテーマに合わせて作られる絵具や、日替わりで用意される陶芸用粘土、さらには地域の工場から譲り受けた工業製品の端材など、好奇心を刺激する無数の素材が並んでいます。
ここには「正解」や「完成図」はありません。子どもたちは、自分の手が動くままに色を混ぜ、素材を組み合わせ、ときには顕微鏡でミクロの世界を覗き込みます。その一つひとつの行動を、専門スタッフであるアトリエリスタが静かに見守り、記録していく。この徹底した「子ども主役」の環境こそが、ブランドが掲げる「夢中になって楽しみ尽くす」体験につながっています。
子どもたちの興味関心をきっかけに探究を深めるプロジェクト活動
チェックインしてみて、はじめてわかること
では、なぜアトリエの満足度がこれほど高い一方で、ホテル全体の評価にはまだ課題があるのでしょうか。その背景にあるのが、リゾナーレ大阪が「コラボレーションホテル」という、日本でも珍しい運営形態をとっていることです。
リゾナーレ大阪は、既存の大規模ホテル(現在はグランドプリンスホテル大阪ベイ)と提携し、1つの建物内に2つのブランドが共存しています。お客様が利用するエントランスやエレベーター、レストランなどの共用部は、国際ホテルの重厚で機能的な仕様です。その一方で、専用フロアに一歩足を踏み入れると、リゾナーレ特有の色彩豊かなアートの世界が広がります。
お客様にとっては、機能的なホテルのサービスと、リゾナーレの創造的な体験を同時に楽しめる一方で、どうしても「ブランドの統一感」という点では、リノベーション物件ならではの違和感を感じさせてしまうこともあります。このハード面の差が、満足度の乖離として表れています。
それでも、このコントラストがリゾナーレ大阪ならではの面白さになっていると感じています。整然としたホテルのロビーを抜けると、突然、子どもの好奇心が爆発するようなカラフルな空間が広がる。その「扉を開けた瞬間」の変化が、お客様にとって日常からぱっと切り替わるスイッチになっているようです。
建物全体をすぐに作り変えることよりも、まずはここでしか得られない体験を丁寧に育てること。リゾナーレ大阪は、そんな考え方から始まった施設です。
アトリエと同フロアにあるクラブラウンジ。ゆったりとした大人の時間が楽しめる
子どもたちの創造的な活動や表現が途切れない工夫がある客室
「整えたい」ホテルスタッフと、「壊したくない」アトリエリスタ
実は、このアトリエ体験の裏側では、毎日のように小さな「ぶつかり合い」が起きています。ホテルスタッフとしては、次のお客様をお迎えする前に空間をきれいに整えたい。でもアトリエリスタは言います。「子どもが夢中で作り上げた形を、大人の都合でリセットしてはいけない。それは彼らの思考の軌跡だから。
広報担当者が「素敵な写真を撮りたい」とカメラを向けようとすると、「カメラを意識することで、子どもの純粋な探究心にブレーキがかかってしまう」と、やさしくでも真剣に諭されることもありました。
「スムーズなホテルサービス」と「子どもの自由な没頭」
この二つは、ときに相反します。
それでも、現場のスタッフたちは「子どもの可能性を一番に考える」という道を選んできました。たとえ準備に時間がかかっても、子どもの瞳が輝く瞬間を最優先にする。その積み重ねが、アトリエでの高い満足度につながっています。
2025年夏の探究プロジェクト「風にのる」。子どもたちなりの解釈で風の表現
「アトリエ」から生まれる、家族の新しい物語
でも、アトリエでの時間を終えた親御さんの表情を見ると、やっていることは間違いじゃないと感じます。スタッフが残す「アトリエノート」には、その子が何を見て、何を感じ、どんな工夫をしたかが、アトリエリスタの温かい視線で綴られています。「家ではすぐ飽きてしまうと思っていたのに、こんなに集中する姿を初めて見ました」 「この子が描いた一本の線に、あんなに豊かな意味が込められていたなんて」
そんな親御さんの言葉や笑顔に触れるたびに、ここは宿泊施設であり、同時に家族が互いの新しい一面を発見できる場所でもあるんだな、と感じます。
身近な植物も形や色、質感など視点を変えることで新たな発見があり、そこから子どもたちの自由な表現が生まれる
これからも、一緒につくっていく場所
すべてが整った「100点」のホテルを作ることは、もちろん大切です。でも、リゾナーレ大阪がまず選んだのは、ホテル全体を均等に磨くより、ある一部分を誰もが忘れられない体験にすることでした。アトリエで生まれたこの熱を、客室やレストラン、チェックインの瞬間にまで広げていけたら。
まだ完璧じゃないからこそ、スタッフ一人ひとりの想いが、直接お客様の体験に届く。リゾナーレ大阪は、理想を追いかけるプロセスをお客様と一緒に歩んでいる、現在進行形のホテルです。
もし「子どもと一緒に、ちょっと面白い旅がしたい」と思ったとき、この場所のことを思い出してもらえたら嬉しいです。